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最弱召喚者は這い上がる(凍結中)  作者: 多田野箱
這い上がる(物理)編
11/35

挿話 あいつ・・・

これから色々とご都合主義じゃなきゃ乗り越えられないところが出てきます

ご注意を

 

 広成がガマラスを拘束中のまさにそのとき、小司たち一行はナイトメアシャドウを切り抜けていた。先程まで20体はいたのにも関わらずもう12体にまで数を減らしていた。

 小司の聖剣によってナイトメアシャドウが浄化されたのだ。さらに小司が考えている策が成功すればほぼ突破はできているといっても過言ではない程になるだろう。


「まずは古市、武田、小林の3人でまだ倒れてる騎士団員を拾ってきてくれ」


「「「了解」」」


 若干の余裕ができた小司はパワータイプの3人に指示を飛ばす。大柄な古市と武田、そして小林のスキル「飛腕とびうで」を使い、効率的に騎士団員を回収するつもりでいる。

 「飛腕」は所持者には視認できる巨大な透明な腕を生成し、射程圏内である20メートルほどの距離を自由に動かせるという隠密スキルだ。

さらに所持者の実力次第では見えている範囲ならば何メートル離れている相手も殺れるようになるという所持者次第で化けるスキルである。ちなみに現在小林は2本同時操作が出来ている。

 指示を受けた3人が行くのを確認すると先程から生徒が攻撃するなりして誘導し、一箇所に集めた影達に向き直り手筈通りに生徒たちが下がった後、魔法部隊が攻撃をするのとほぼ同時に聖剣を構える。そして


「我が力を闇を切り裂く光の刃とせよ、光刃こうじん!!」


 呪文の詠唱とともに大きく踏み込み、横へ剣を一薙ぎする。するとレーザーのような光の波動が影を襲い2体のアンデットシャドウは塵と化した。


 前回説明したがこの光の波動は魔物には浄化を、生者には状態異常を治す効果が含まれているため巻き込まれた生徒たちはカスリ傷が治るというおまけ付きで無事だ。


 それを4度繰り返すとアンデットシャドウの掃討は完了した。だが後ろからは広成の「うぉおおおおお!」という断末魔のような叫びとともにベリリッ!と何かを破いたような音がやけに鮮明に聞こえた。


「ヤバいっ!ガマラスが復活したぞ!!」


 後ろを振り向くと3人がこちらに向かって全力疾走し、武田が声を張り上げている。倒れた騎士団員の回収には成功している。

 古市は「広成ィ・・・」と遠目からでも分かるほどにべそをかきながら二人ずつ、武田はは片手に一人ずつの兵士を抱え、小林と武田は飛腕で二人ずつ計八人を掴んだ状態で走っている3人衆は後ろのガマラスの復活を告げる。

 しかしこちらの準備も万端だ。アンデットシャドウが塞いでいた前方にはもう阻むものは何も無い。後はもう全速前進あるのみである。

 ガマラスも理由は謎だが立ち上がったまま動かないでいる。今が絶好のチャンスだ。


「全員、今は人命第一だ。これ以上犠牲者を出さないためにも全員あの階段目指して全力疾走しろ!」


 団長の掛け声と共に全員が順序良く階段へ向けて走り始める。さっきまで焦って混乱し、ものの見事に隊列を乱していたとは思えない程に統制されている。

 騎士団員を生徒に混じって治療していたタロンは「俺のさっきの努力はなんだったんすか・・・」と悲しそうにしているが何はともあれ生徒は無事で良かったと胸を撫で下ろしている。

 だが生徒・・はだ。今回生徒を守るために肉壁となり命を散らした団員は4人いた。さらに未だに混乱が抜けきってない者は広成がいないことに気づくこともなかった。

 

 全員が階段へと達して誰もいなくなった時、広成が拘束していた場から動かずにいたガマラスの体はツヤのあるこげ茶色の毛並みが乾いたインクのように黒くなり終いにはドロドロに溶けて地面に染み込んでいき、消えた。


 上へと続く階段はひどく長く感じた。壁の燭台のチロチロとした火が周りを照らしているが心細い。しかし生きた心地がしなかったあの場所よりはマシだと全員が口を塞ぎ黙々と歩いている。

 そして体感からして10階相当の階段を登ったとき、ダンジョンの入口の物には劣るが真ん中に魔法陣が入った巨大な門がそびえ立っていた。

 これも罠かもしれないと全員が警戒していたが生き残った団員が確認した結果、トラップではないことが分かり、魔法陣に魔力を注げば恐らく元の場所へと帰れるだろうことも判明した。

 その場の全員の表情に生気が戻り顔を綻ばせ喜んでいる。中には「やっとだ」「死ぬかと思った」等の安堵の感想を言う者もいた。

 まあ無理もないだろう、怪我はするだろうが命は安全だと思っていた迷宮探索が思わぬ事態で全滅の危機にまで陥ったのだから。

 団長が門の前に立ち、魔法陣へと「開門オープン」と短い呪文とともに魔力を注ぐ。するとゴゴゴゴゴと何かが揺れ動く音と共に門が開き、マーブリングのような色をした霧が発生した。

 団長が霧をくぐる、そして生徒達も次々と霧の中へと入っていく。

 そして出たのはダンジョンのちょうど入口だった。


「ここは、入口?だよね、そうだよね…ヤッター!!」

「帰ってきたーー!」

「俺生きてる…良かった!!」


 生徒たちは各々の無事を喜び、安堵の叫びを吐く。しかも場所が10歩も歩けば既に外というだけにもう完全に安全だと言える為地面にへたり込んでいる泣き出す者もいた。

 しかし団長は「全員気を付けぇーーーいッ!!!!」と声高らかに叫ぶ。条件反射で兵士たちはビシッと体を伸ばして直立する、それは共に訓練していた生徒たちもまた然りだ。


「お前たち、よく頑張った。途中で予想外の敵も現れ『結果は上々』とは口が裂けても言えないものだったが兵士もお前らもよく生き残った。だが無駄もあった。特に小司!お前は周りのことを考えて行動しろ。我々を救いたいと思ってくれたのは正直嬉しかった。だがお前は自分の立場を分かっていない、お前は後々世界を救う勇者、私達はただの一兵士だ。その差がどれだけあるのかをよく考えろ」


「ッ、はい…」


「それでは解散、休憩をしていろ。私はこれから報告書を作成する」


 団長は小司を一括すると踵を返して何事かと顔を青くする受付に今回の事例の報告書を作成させている。その顔つきはいつになく暗い。

 それも当然である。可愛がってきた兵士達4人の死、そして召喚者の一人である広成の死も報告する内容に入れなければならない。

 あの少年は日頃からの努力も欠かさず少しの間とはいえ伝説と言われたガマラスを拘束してみせた男だ。後の戦力としても自身からしても残念極まりない。

 団長の叱咤を受けてから苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている小司。相手が言っていることが正論であることを冷静な今では痛いほどによく分かっている。

 自分が皆を引っ張る、そう宣言したはずなのに結果はこのザマ。兵士は死に、生徒も一人行方不明(しかもほぼ確定で死)となった。

 あの時迷うことなく影に向かっていたなら、団長の話をすぐ飲み込んでいたら、みんな救えていたかもしれない、が過去へと戻ることは出来ない。全て自分が蒔いた種、死んだ皆は自分が殺したようなものだと小司は深く反省するしかなかった。


__________________________


 その日の夜、ベルラーラへと到着した一行は夕食を食べ、風呂に入るとベットへほぼ全員が直行していた。

 間近で見た死に恐怖し、暫く眠れない生徒もいたが今日起きた全てのことが鉛のように重い疲れとなって眠りに誘い、いつの間にかすやすやと眠っていた。

 しかし眠らずに話をする者もいた。古市、白石、長谷川の3高トリオである。3人は古市の自室に集まり広成の話をしていた。


「あいつ生きてるかな…」

「は?広成だぞ!?不良との事で伝説まがいの話を作ったアイツだし意外となんとかなるっしょ」

「でもあそこってさっきタロンさんから聞いたけど、魔道士たちが掛けてあった追跡魔法であの馬が出た所って『死神の渓谷』っていう超ヤバい場所のちょうど上って分かったらしいよ」

「で、そこから落ちたんだからそこに行ってるとかか?転移魔法があったりするんじゃねぇの?まあそれでもアイツなら…いや、いくらあいつでも流石にキツいか」

「そんなんで大丈夫なのか?」

「広成だから大丈夫だ、というかそう思うしかないだろ。それに何度も言うけど広成だからそう簡単には死なないだろう、しかも行く前にアンデットにでもなってお前ら従えてやる?だったかも言ってたし。アイツ守れない約束はしないから本当にアンデットになって来たら、ウン、怖いな…」

「「確かに」」

「もしかしたら渓谷で最強の生命体になったりしてな」

「ありそうでないけど広成だから何処かズレた最凶にはなりそう」

「激しく同意、というか何故か広成だとそのビジョンしか見えない」


 召喚以前のことを話すかのように駄弁る3人。懐かしい思い出(広成にとっては黒歴史)を思い出しながら広成の安否をそれなりには心配している。

 以前からも三人は常に厄介事に巻き込み巻き込まれを続けていた為神経が太い。ここに来てからはさらに太くなった。しかし誰よりも争いごとと血等のスプラッタなものは嫌いな広成が生きていけるかは3人が全員口にはしないものの心の中で案じている。


「大丈夫、俺らは大丈夫だからな…広成。絶対、お前を探し出すぞ」


 小声で呟く白石の言葉に二人は首を縦に振った。


勇者が変な時だけ凄くて可笑しくなった。騎士団が無能に近い感じになっちゃった。どないしよと考える今日この頃。

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