表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でハーレムスローライフを送りたかったのに、転移した世界が妖怪の世界だった 〜妖怪が怖い俺の周りに可愛くて美人な妖怪が増えていく件〜  作者: 平元桜央
人間と狐

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/9

俺は意味不明な力を出す

「コイツはその昔、お前たち人間を滅ぼした九尾の妖狐よ!」


「──」


 その言葉に、頭が一瞬、真っ白になった。


「1000年前、戦争で勝利した妖は人間を奴隷にしようとしていたのさ。なにせお前達は俺たち妖に莫大な力をくれるんだからな」


 黒鬼の目が、奈央へ向く。


「だがこの女狐が人間を一体残らず滅ぼしちまったせいで、俺たちは人間から力を得られなくなった!! その罪によって他の妖から狙われ、今となっちゃ妖力もほぼ失った哀れな女狐だ!」


 その黒鬼の言葉で、俺は一緒に飯を食った時のことを思い出した。


『そっか……その戦争で人間は妖に滅ぼされて、絶滅しちまったってことか?』


『──』


 あの時、奈央が何も答えなかったのは、そういうことだったのか。

 戦争によって滅んだというのは、厳密にいうと違う。

 自分が滅ぼしたから──


「──」


 奈央は、諦めたように項垂れていた。

 弁明も何もしないのが、何よりの証拠だった。


「コイツがお前と一緒にいたのも、隙を見て殺そうとしてたに決まってんだろ! なにせ宿敵だからな! 妖狐と人間は!」


 俺は奈央を見た。

 奈央は、こっちを見なかった。

 見られなかったのだろう。


「哀れな人間だ。人間は希少種ゆえ、本来ならお前も売り物にしたいところだが、また妙な力で暴れられたら敵わねぇ」


 黒鬼の巨体が、うずくまった俺の前に立つ。


「じゃあな」


 先ほどの地面を抉った一撃が、俺の頭上に振り下ろされた。

 俺を呼ぶ奈央の叫び声が、どこか遠くで聞こえた。










 


「……してねぇよ」


「……は?」


 黒鬼の棍棒が振り下ろされた直後だった。


 頭上から、黒鬼の間抜けな声が聞こえた。

 そりゃ驚くだろうな。

 俺自身も驚いてる。


「奈央は、俺を殺そうとなんか、してなかったっつってんだよ」


 あの一撃を、ただの人間が両腕で、体全体で受け止めたんだから。


「お前……! どうやって受け止めた!? まだ力を隠していたか!」


「……力?」






 そんなもん、ねえよ。






 俺の両腕、両足、体全体から血が噴き出る。


 両腕は折れた。

 多分両膝も。

 視界が赤くて、目からも鼻からも血が出ていた。

 立ち上がることはできない。

 激痛に耐えられているのは、喋ることができているのは、アドレナリンが出ているからか。


 俺はもう死ぬだろう。


 それでも、俺は言葉を紡ぐのを辞められなかった。


「この1ヶ月、ずっと見てきたから、嫌でもわかるんだよ」


 洗濯も、掃除も、買い物も、壊れた家の修理も。

 頼んだわけでもないのに、俺が困らないようにと、あいつは何でもやってくれた。


 妖怪が怖くて仕方なかった俺が、少しでもこの世界で生きていけるようにと。


「俺の世話を甲斐甲斐しくする姿に、怒りも憎しみも……何もなかった」


 奈央は人間を恨んでなどいない。

 俺を殺すために近づいてきたわけじゃない。

 そんなこと毎日顔を合わせてればわかる。


 そして──


 俺は、『ある夜のこと』を思い出していた。


 喉が渇いて、夜中に台所へ向かった時だった。


 奈央の部屋の前を通りかかった俺の耳に、押し殺した泣き声が聞こえてきた。

 襖の向こうから。






『ごめんなさい……ごめんなさい……殺して……滅ぼして……ごめんな、さい……』






「人間に対して泣きながら謝罪している姿を見れば……わかるんだよ」


 霞む視界に負けず、荒い息を吐きながら、黒鬼を睨みつけた。


「理解できるか? 罪滅ぼしだろうがなんだろうが、かつて自分と戦った種族に頭を下げて、必死で世話焼くソイツの凄さが」


 俺は、奈央の方を見た。


 霞んでよく見えないが、こちらを見ている。


 好都合だ。


 ただ伝えたい。


『お前の優しさで、俺は救われた』ってことを。


「奈央の凄さは、お前らなんかには一生わかんねぇよ」


「あぁそうかい。興味もねぇ」


 黒鬼がもう一度、棍棒を振り上げた。


「すまん……奈央。助けてやれなくて」


 もう、次の一撃を防ぐことはできない。

 無慈悲に、振り下ろされた棍棒を最後に見て、俺は目を瞑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ