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異世界でハーレムスローライフを送りたかったのに、転移した世界が妖怪の世界だった 〜妖怪が怖い俺の周りに可愛くて美人な妖怪が増えていく件〜  作者: 平元桜央
烏天狗と白狼天狗

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俺たちは空を飛び回る

 昼間。

 俺と綺鴉羅は2人で家の前に出ていた。


「どうだ? 綺鴉羅」


「うん、問題なさそうだ」


 俺の言葉に頷き、綺鴉羅は、翼に巻かれた包帯を取る。


 現れたのは、俺よりもでかい漆黒の翼。


 バサッと、軽く、一度だけ、翼をはためかせると、辺りに風が駆け抜け、落ち葉が一斉に宙へと舞い上がった。


「よし、行くぞ」


『バサッ!!』


 綺鴉羅は羽を大きく広げ、そして、羽ばたいた。


 彼女はグングン上空へ飛び立ち、そして圧倒的なスピードで周りを旋回する。


「うお、速えもんだな」


 時速100キロは出てるんじゃねえか?

 これが、烏天狗の飛行能力か。


 飛び方は忘れていないようで、良かった。


 気持ちよさそうに飛ぶ綺鴉羅の顔を見て、俺の顔は少しだけ、綻んでいた。

 しばらくして、綺鴉羅は地上に降りてきた。


「良かったな。飛べるようになってよ」


「お前たちのおかげだ。本当にありがとう」


 綺鴉羅はまだ、興奮冷めやらない様子だった。

 自らの身体が完全に治ったこと。

 そして、久しぶりに身体を全快に動かせたこと。


「奈央はどこにいるんだ? 奈央にも見せたい」


「あー、奈央はちょっと町の方に出てるよ。すぐ戻ってくると思うから、その時にな」


「そうか……」


 奈央は今、幽冥町へ聞き込みに行っている。

 もちろん、綺鴉羅の目撃情報や、近隣の事件についてだ。

 話を逸らすように、俺は笑いながら話した。


「しっかし良いもんだな、自由に空を飛ぶって。俺も飛んでみてぇもんだ」


「飛びたいのか? 空を」


「そりゃ、飛べない奴からしたら夢だからな」


 俺のその言葉を聞いて、綺鴉羅は目を輝かせた。


「じゃあ、夢を叶えさせてやろう」


「へ?」













「どうだ? 気持ちいいか? 楽しんでいるか?」


「いやいや楽しむどころじゃねぇから!」


 俺は上空1000メートルくらいのところを飛行していた。


 綺鴉羅に腹回りを抱えられて、命綱も無しで。


「何故だ? 空を飛んでみたいと言ったのは零の方だろう」


「一歩間違えれば死の状況で景色楽しめるわけねぇだろが! 命綱付けろ!」


「大丈夫だ。これだけくっついていれば」


 背後から抱きつきの力が強くなる。

 すると、背中に柔らかい感触が。


「うおおおお! 待て待て綺鴉羅さーん! 2つのお山が俺の背中に張り付いてるんですけど!? アルプス山脈当たっちゃってますけど!?」


「……ある、ぷ……すまない、なんのことを言って……あぁ、おっぱいのことか?」


「あんま直接的な表現で言わない方がいいよ!?」


「別に、減るもんじゃないし、気にするな」


「お前はもうちょっと性に対して危機感を持て! ただでさえおっぱいでヤバいのに死ぬかもしれない生存本能でさらにヤバいことになっちゃうから! もう一個エベレスト勃っちゃうから!!」


「……? すまない、今度こそ何の話をしてるんだ?」


「なんでもねえよ!!!」


 コイツにはいつか痛い目を見せた方が良いかもしれない。


「ほら、見てみろ」


「あ?」


 綺鴉羅のその言葉に、俺は顔を上げる。

 そこからの景色は、恐怖と、性欲に支配されていた頭を、一瞬で吹っ飛ばした。


 その先に広がっていたのは、『この世界』だった。


 遠くに見える山々、すでに小さく見える、幽冥町の全貌。

 陽の光。

 森や、荒野。


 そして、地平線は、どこまでも遠かった。


「世界は、こんなに美しい」


 綺鴉羅がそう言った。


「あぁ……そうだな」


 記憶がなくても、他の世界から来ても


 それだけは、変わらなかった。







 俺たちは幽冥町上空をひとっ飛びし、家に戻ってきた。


「ふぃー……いや、死ぬかと思った……」


「大丈夫だと言っただろう。それに万が一落としても、私のスピードなら地面に激突する前にキャッチできる」


「そりゃ頼もしい限りで……まぁ、でも、良い眺めだったぜ。ありがとうな」


「……! そうか……」


 俺がお礼を言うと、綺鴉羅は頬を染めて俯いた。


「じゃあ、また『明日』もやるか? 今度は遠くまで飛んでいってやるぞ?」


「あ、あぁ……『明日』……か」


「……?」


 結局、綺鴉羅が完治するまでの間、綺鴉羅についてや近隣であった事件などの情報は入ってこなかった。


 でも、もう情報を待つ必要はない。


 綺鴉羅が治った今、俺たちは彼女を烏天狗の村、『黒天村』へ送り届けることができる。


 綺鴉羅が『黒天村』の住人という確証はないが、もしそうなら、家族や仲間が帰りを待っていることだろう。


「……なぁ、綺鴉羅」


「どうした?」


「……」


 彼女のまっすぐで、輝いた瞳。


 綺鴉羅が『黒天村』に戻ったら、もう彼女とはお別れになってしまうかもしれない。


 少しだけ、提案をする口が止まった。


 ──だが、綺鴉羅の本当の家族が、帰りを待っているかもしれねえ。


「体も治ったし、もし良かったら、『黒天村』に行ってみねぇか? ……ん?」




 綺鴉羅の目が、俺を見ていなかった。

 俺の背後の、遠く。


 俺は振り返ると、そこには、一本の『黒い煙』が立ち昇っていた。

 方角的に、幽冥町の方向だ。


「ありゃなんだ? 火事か?」


「う゛……ぁ……!」


「綺鴉羅……?」


 その煙を見た、綺鴉羅の様子がおかしかった。



「がはっ! う、う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ー゛ー゛ー゛ー゛ー゛ー゛ー゛!!!!!!!!」


「綺鴉羅!? どうした!? 綺鴉羅!」


 綺鴉羅は頭を抑えて悲鳴を上げた。

 目を見開き、そして、糸が切れたように、気を失った。


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