奈央も思ったよりドスケベ
襖が開いた音がした。
そして、息を呑む音。
俺が恐る恐る入り口を見ると、絶句した様子の奈央が口を覆って立っていた。
「いや、どうか落ち着いてほしい」
この言葉を人生で2回使う日が来るとは。
「お、お、お二人とも──な、な、何を、されて、いるのですか?」
「い、いや、これはだな……」
「零を抱きしめている」
無敵かコイツ
「ちゃんと許可もとったぞ? 奈央も、こっちに来るといい」
「え──!」
何言ってんだコイツ
「奈央も、零と一緒に寝たいだろう? 零なら神通力で動けなくしたから大丈夫だ」
なにしてんだコイツ
通りでさっきから体が動かないし、喋れないわけだ。
「ほら、奈央、今ならやりたい放題だぞ」
「そ、わ、わたし、は、そんな事──」
「そうか? しかし、時折り零の事を発情した目つきで見ていたじゃないか」
「────!!!」
は?
なんか、今、とんでもないことを暴露しなかったか?
「わ、わたしは──そのようなはしたない事は……!」
「そうか」
綺鴉羅の抱きしめる力が強くなった。
「それじゃあ、零は私が貰うぞ」
「へ──?」
その宣言に、奈央は目を見開く。
さっきから俺に拒否権はないの?
「これから奈央は零にいやらしい視線を送るのは禁止だ。触るなんてもっとダメ。口も身体も、全部私のものだからな」
「な、な、な……」
「そこで発情しながら見ているといい」
綺鴉羅の顔が近付いてきた。
あー近い。
コイツほんとにやる気だ。
奈央を見ると口を開けながら、顔を真っ赤にしてハワハワしてる。
そして目をぎゅっと瞑った。
「だ、だ、ダメです──!」
その声で綺鴉羅は顔を離した。
「なら来ればいい。ちゃんと許可は取ってる」
「──! わ、わかりました──!」
奈央、可愛いのはいいとして、俺を助け出すって選択はないの?
目がぐるぐる回って、湯気も出ていて、多分自分でも何をしているのかわからないんだろうな。
あと綺鴉羅
さっきから「許可取った」って言ってるが、俺別に許可してないからな?
俺が許可したのは隣で寝ることであって、抱きしめたり、セクハラしたり、襲ったりは何一つ許可してねえからな?
「さぁ、なんでもしていいぞ」
んなわけねえだろ。
「抱きしめてキスでも、その先でも」
「さ、さ、さ、先───?」
「あぁ。脱がしても、脱いでも、どちらでも良い」
奈央が俺のそばによろよろと近付いて、傍に『ぺたん……』と座る。
俺の心は逆に凪いでいた。
襲われそうなこの状況でも、もう何をしても無駄なんだと諦めたら、逆に落ち着いていた。
勃起は死ぬほどしてるけど。
「フゥ……フゥ……」
奈央は息がいつもより荒くて、顔が艶っぽい。
そして、俺の体に触った。
はだけている着物から、胸をつぅ──と撫でられる。
あ、ちょっと待って
『心が凪いでいる』とか調子こいたかもしれん。
ほんとにヤバいわ。
動けないってだけで、感覚はモロに伝わるわ。
そして、奈央の指は俺の首筋に、そして。
奈央はきゅっと目を瞑って、そして……
『ぎゅ……』
俺の顔を、胸に抱きしめた。
俺の顔に当たった感触。
奈央も寝起きだったのか、サラシをしていなかった。
ほぼダイレクトに当たったのその感触。
それはそう、例えるなら
高速道路を時速120キロで爆走している最中に窓から手を出した時の風の感触に似ていた。
しばらくして、奈央は俺の顔を離した。
「……奈央、それだけか? せっかくの機会だから、もっとこう……他にもやっていいんだぞ?」
「……」
綺鴉羅の言葉にも、奈央は反応しない。
そして……
「ファ……」
バタン
奈央はキャパオーバーで倒れてしまった。
そりゃ、前も俺に乳揉まれて倒れてたもん。
「気を失ってしまったか……奈央にも日頃の恩返しをと思って計画したことだったのだが……まだ早かったな」
綺鴉羅は気絶した奈央を俺の隣に寝かせ、自分は立ち上がって伸びをした。
「さて、零、私はしばらく外に出ている。私が遠くに離れたら神通力は解けるようになっているから安心していい。隣に奈央が気絶しているが、好きにするといい。奈央も喜んでくれると……」
「綺鴉羅」
「……へ?」
綺鴉羅が振り返る。立ち上がっている俺を見て、目を白黒にさせた。
「お、お前、どうやって私の神通力から抜け出した?」
「なんでだろうな?」
俺は1日1回の特権を試しに使ってみた。
どうやら超能力などにも有効らしい。
「綺鴉羅」
もう一度名を呼ぶ。
俺がどんな顔をしているかは自分じゃわからないが、綺鴉羅は見たこともないような焦った顔で、必死に考えていた。
そして、口を開いた。
「いや、どうか落ち着いてほし……」
「正座」
「はい……」
俺は小一時間ほど、綺鴉羅に説教をかました。
ここがR-18じゃなくて本当に良かったな。
R-18だったらえらいことになってたわ。




