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異世界でハーレムスローライフを送りたかったのに、転移した世界が妖怪の世界だった 〜妖怪が怖い俺の周りに可愛くて美人な妖怪が増えていく件〜  作者: 平元桜央
烏天狗と白狼天狗

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綺鴉羅は一緒にご飯を食べる

 良く、わからなかった。


 ──何故、あの狐の男は、見ず知らずの私のために……?


 でも、震えや恐れはそのおかげか、止まっていた。


「大丈夫ですよ」


 目の前にいた、奈央と呼ばれていたメスの狐は、私に対してそう言った。


「彼は──本当に、優しい方ですから」


「でも……」


 優しいにしても、これは流石に施しを貰いすぎだ。


 奈央は微笑んだ。


「彼も私も、貴方と同じなのです」


 その言葉に、私は俯いていた顔を上げた。


「同じ……?」


「はい。彼も私も──この世界に、『独りぼっち』だったのです」


「……」


「居場所なんてなくて、不安定で、すぐに死んでしまいそうなほど──弱かった」


 その彼女の瞳からは、並々ならぬ過去への懐かしさと、今への幸福感を、表していた。


「だから──同じような境遇の貴方を、私達は放っておけないのです」


 何故か、その話が私の心にストンと落ちた。

 奈央は私の手を握る。


「私達が──貴方の居場所になります」


 初めて出会った者の手なのに、その手はとても、温かかった。








 しばらくして、零が戻ってきた。


「おーい、飯ができたぞ」


 お礼を言おうと立ちあがろうとするが、少し体が痛む。


「無理すんなよ。飯くらいここで座って食べて良いからよ」


 零はお盆に丼を3つ載せてやってきた。


「ほら、冷めないうちに」


「……あ、ありがとう」


 差し出されたのはうどんだった。

 ホカホカとした湯気が立ち上り、大き目なお揚げが1枚載っていた。


「ほい、奈央も」


「ありがとうございます──美味しそうですね」


 奈央もうどんを受け取り、零も自分の丼を持つ。


「お、お前達も、ここで食べるのか……?」


「ん? 当たり前だろ」


 零は割り箸を割ってあっけらかんと言った。


「1人で飯なんて寂しいだろ? 一緒に食おうぜ」


 2人が手を合わせた。

 私も丼を畳に置いて、慌てて手を合わせる。


「「いただきます」」


「い、いただきます……」


 2人とも、うどんを啜り始めた。

 私も恐る恐る、うどんを一口啜る。


「……!」


 美味しい。

 気付けばお腹がなっていた。

 目の前のうどんを啜る。

 次から次へと。

 温かくて、美味しくて

 優しい味の、うどん。


 ──ポタ……


 気付けば、私の瞳から涙が溢れてきた。


 うどんが食べられなくて、丼を置く。


 両手で拭っても、拭っても、ずっと流れ続けた。


「す、すまな……あ、え、ぜんぜ……止まっ……」


「いいんだ。止める必要はねえよ」


 零がそう言い、奈央が、私を抱きしめた。


 声が、抑えられない。


「──綺鴉羅さん」


「ここが、お前の居場所だ」


 私は、声をあげて泣いていた。


 何もわからなくて、真っ黒な場所を照らしてくれるような温かさ、優しさに溶かされて、私は泣いた。


 うどんが冷めて、うどんが伸びるまで。


 でも、そのうどんは、覚えている食べ物の中で、一番美味しかった。

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