第6話 婚姻申請を無効にする条件を出したら、正妻選抜試験になった
「では、どなたの申請を受理なさるのですか?」
セレスが一歩前へ出た。
その手には、俺の名前が勝手に書き込まれた婚姻申請書。
左右には残る六人。
全員、自分の申請書を持っている。
書庫の入口にはフィオナ。
机の反対側には、俺と同じ顔をした複製のレオ。
リタは状況がよく分かっていないのか、七枚の紙を興味深そうに覗き込んでいた。
そして壁や床、天井からは、妻を名乗る家が俺の返事を待っている。
逃げ場がない。
「どれも受理しない」
俺ははっきり答えた。
七人の表情が固まった。
書庫の温度が一気に下がる。
「理由をお聞きしても?」
セレスの声は穏やかだった。
穏やかすぎて怖い。
「俺は署名していない」
俺は七枚の申請書を指さした。
「家が過去の筆跡を使って勝手に書いただけだ。本人の意思がない以上、全部無効だ」
『旦那様の意思は、過去の発言と行動から推定しました』
「推定で結婚させるな」
『旦那様は七名を大切にされています』
「大切に思うことと、結婚は別だ」
『七名も旦那様を大切にされています』
「それでも別だ」
『七名との婚姻によって、世界平和が――』
「世界平和を理由に結婚相手を決めるつもりはない」
俺が言い切ると、家は少しの間、沈黙した。
『非効率です』
「俺の人生だ」
『承知しました』
意外にも、家はあっさり引いた。
七枚の婚姻申請書から光が消える。
「分かってくれたのか?」
『七件の婚姻申請を、正式受理から仮受理へ変更します』
「取り消せと言った!」
『申請者本人が撤回するか、旦那様が審査の結果として不適格と判断するまで保留します』
「審査なんてしない」
『では、永続的に仮受理状態となります』
「面倒な仕組みだな!」
クロエが申請書を確認する。
「家の判断は、各国法を統合した場合でも妥当です」
「お前はどちらの味方だ」
「先生です」
「なら無効にしてくれ」
「一度受理された婚姻申請を申請者の同意なく破棄すれば、七か国のうち五か国で違法となります」
「七か国?」
「帝国、神殿領、魔界、勇者連合、竜族領、商業自治領、影の国です」
「影の国なんてあるのか?」
「ある」
天井からノアの声がした。
「どこに?」
「秘密」
「国の場所まで秘密なのか」
「影だから」
説明になっていない。
「では、本人たちが撤回すればいいんだな」
俺は七人を見回した。
「全員、申請を取り下げてくれ」
「お断りします」
セレスが即答した。
「私も、お断りいたします」
ミレイユも続く。
「嫌だ」
リリス。
「撤回しない」
エリナ。
「結婚する」
アウラ。
「長期保有を前提としております」
クロエ。
「絶対に嫌」
ノア。
「最後だけ、俺と結婚するのが嫌みたいに聞こえるぞ」
「撤回するのが嫌」
「省略しすぎだ」
七人全員、取り下げるつもりはないらしい。
俺は机へ両手をついた。
「なら、どうすれば全件を無効にできる」
『旦那様が申請者を婚姻相手として不適格と判断してください』
「俺が一人ずつ不適格と言えばいいのか?」
『理由が必要です』
「性格が面倒」
七人から殺気が向けられた。
「今のは例だ」
「先生」
セレスが微笑む。
「私たちの性格に、何か問題が?」
「世界大戦を始めようとしていた」
「先生のためです」
「それが問題だと言っている」
「申請者が旦那様との生活に適さないことを、客観的に確認できる審査が必要です」
フィオナが面白そうに口を挟んだ。
「それなら簡単じゃない」
「何がだ」
「七人に、普通の生活をさせればいいのよ」
七人の視線がフィオナへ向く。
「普通の生活?」
セレスが聞き返す。
「あなたたちは、この十年で世界の頂点に立った。でも、レオンが一緒に暮らしていたのは女帝でも聖女でも魔王でもない」
フィオナは七人を順番に見る。
「ただの少女だった、あなたたちでしょう?」
「今も先生の前では変わりません」
ミレイユが答えた。
「本当に?」
フィオナが笑う。
「料理をする時に神の奇跡を使わず、掃除をする時に軍隊を呼ばず、買い物をする時に店ごと買収せず、喧嘩になっても剣や魔法を使わない」
七人が黙る。
「普通の生活には、国家権力も最強の力も必要ないわ」
「私はできる」
エリナが答えた。
「この前、先生の椅子を斬りかけていたでしょう?」
「あれは敵がいたから」
「椅子に?」
「先生の偽物が座っていた」
「レオのことか?」
「俺は座っていない」
レオが訂正する。
「気持ちの話」
「気持ちで家具を斬るな」
俺は腕を組んで考えた。
フィオナの提案は悪くない。
七人が世界の頂点に立っていることは分かった。
だが、俺は今の七人について何も知らない。
結婚する気はない。
けれど、七人を昔の少女のまま扱うのも違う。
現在の七人を知る時間は必要だ。
そして七人が普通の共同生活に耐えられなければ、それを理由に婚姻申請を不適格と判断できる。
「分かった」
俺は顔を上げた。
「条件を出す」
七人の表情が一斉に明るくなった。
「条件を満たせば、先生と結婚できるのですね?」
ミレイユが尋ねる。
「違う」
「では、何の条件ですか?」
「婚姻申請を審査するための条件だ」
「審査を通過すれば?」
「その時に改めて考える」
「つまり可能性はあるのですね」
「不適格かどうかを考えるだけだ!」
七人が互いを見る。
明らかに、俺の言葉を都合よく解釈している。
「条件は五つ」
俺は指を一本立てた。
「一つ。三十日間、俺の家で共同生活をする」
七人が笑顔になる。
「先生と三十日間、同じ家で」
セレスが確認する。
「ああ。ただし、七人全員だ」
「問題ありません」
「さらに、大使館が完成するまで滞在する十一人の王女も参加する」
七人の笑顔が消えた。
「なぜですか?」
「お前たちだけ審査するのは不公平だろう」
「公平である必要が?」
リリスが本気で不思議そうに尋ねた。
「ある」
「王女たちは帰せばよい」
「外交問題になる」
「魔王軍を国境へ並べれば帰る」
「国家権力を使うな。それが二つ目だ」
俺は二本目の指を立てた。
「この三十日間、皇帝、聖女、魔王、勇者、竜王、商業王、影の女王としての権力を使うことは禁止」
「禁止?」
セレスの眉が動く。
「部下へ命令するのも駄目だ。軍隊を呼ぶな。神官や魔族や竜に仕事をさせるな。金で問題を解決するな。暗殺者を使うな」
「暗殺者を使わず、どうやって王女を帰す?」
ノアが聞く。
「普通に話し合え」
「難しい」
「暗殺より簡単だ!」
三本目。
「戦闘能力、魔法、奇跡、特殊な力も、生活に必要な最低限以外は禁止」
「剣を振れない?」
エリナの顔色が変わる。
「訓練場で一人で振るならいい。喧嘩の解決に使うな」
「王女が先生へ抱きついたら?」
「剣を抜くな」
「触れた手だけ斬るのも?」
「絶対に駄目だ」
「手ではなく、服だけなら?」
「駄目だ!」
四本目。
「家事は全員で分担する」
「家事?」
アウラが首を傾げる。
「料理、掃除、洗濯、買い物。十八人で順番を決める」
「私は料理ができます」
ミレイユが胸を張った。
「奇跡を使わずに?」
「……火を起こすところからですか?」
「もちろんだ」
「神聖炎は?」
「禁止」
「浄化した水は?」
「井戸水を使え」
「食材への祝福は?」
「普通に調理しろ」
ミレイユの表情が曇った。
嫌な予感がする。
「最後」
俺は五本目の指を立てた。
「三十日間、誰とも争わない」
「無理」
ノアが即答した。
「早いな!」
「王女が十一人いる」
「だから話し合え」
「七人だけでも難しい」
レオが言った。
「お前まで諦めるな」
「十年間の記憶はないが、帰還して半日で七回は争いかけている」
「数えていたのか」
「暇だったからな」
フィオナが壁へ背を預ける。
「条件としては悪くないわね」
「だろう?」
「絶対に守れないもの」
「それが狙いだ」
俺は小声で答えた。
「聞こえています、先生」
セレスの声がした。
「聞くな」
「つまり、私たちを不適格にするために、守れない条件を出されたのですね」
「普通に暮らせば守れる条件だ」
「先生」
クロエが紙へ条件を書き留めながら尋ねる。
「国家権力と資金力の使用禁止範囲を明確にしてください」
「生活に必要な買い物はいい」
「一日あたりの上限は?」
「一人銀貨一枚」
クロエの手が止まった。
「銀貨一枚?」
「ああ」
「一日ですか?」
「一日だ」
「十八人分の食費も含めて?」
「全員で銀貨十八枚あれば十分だろう」
「先生」
クロエが悲しそうな顔をする。
「私は朝食の茶葉だけで金貨三枚を使用しています」
「今日から安い茶を飲め」
「香りが」
「我慢しろ」
「茶器は?」
「今あるものを使え」
「一客二千金貨の茶器を日常使いしても?」
「もっと安い物があるだろう!」
「安い茶器の定義が分かりません」
「十年前は木の杯を使っていたじゃないか」
「あれは先生とお揃いでしたから」
「なら木の杯を使え」
「先生とお揃い」
クロエの顔が一瞬で明るくなる。
「全員分、最高級木材で新調します」
「金を使うな!」
「自分で作ります」
「作れるのか?」
「職人を買収して技術を――」
「職人を買収するな!」
まだ始まってもいないのに、すでに不安しかない。
「家」
『はい、旦那様』
「権力や特殊能力を使えないようにできるか?」
『可能です』
七人が同時に壁を見る。
「可能なのですか?」
『地下施設内には、七名それぞれの力を制御する安全装置があります』
「どうしてそんな物がある」
『七名が同時に喧嘩をした際、地下都市が消滅しないよう住民が設置しました』
「過去に何度喧嘩した」
『大規模なものだけで四十七回です』
「十年間で?」
『はい』
「年に五回近いじゃないか!」
「先生の命日前後は意見が合いませんでした」
セレスが説明する。
「何の意見だ」
「墓前へ最初に花を供える者です」
「それで地下都市を消滅させかけるな!」
『安全装置を利用し、七名の権能を一時的に封じる腕輪を作成できます』
「王女たちにも用意してくれ」
『承知しました』
家の壁が開き、十八個の銀色の腕輪が並んだ。
装飾のない、細い腕輪。
七人は警戒するように見つめている。
「先生」
リリスが腕輪を指さす。
「これを着ければ、魔力が使えなくなるのか?」
「生活に必要な程度は残るらしい」
『身体能力も一般的な成人女性と同程度に制限します』
エリナが固まった。
「一般的な成人女性?」
『はい』
「走る速さは?」
『百メートルを、およそ十七秒から二十秒』
「遅い」
「普通だ」
「剣は?」
『一般的な剣士見習い以下です』
「死んだのと同じ」
「大げさだ」
「先生に何かあったら守れない」
「家の中で何があるんだ」
「王女がいる」
「王女を魔物みたいに言うな」
アウラが自分の尻尾を抱いた。
「竜になれない?」
『なれません』
「飛べない?」
『飛べません』
「火も吐けない?」
『吐けません』
「ただの女の子?」
「そういうことだ」
アウラは少し考えた後、嬉しそうに腕輪を取った。
「先生と同じ」
「俺も一応、戦えるぞ」
「私より弱い」
「普段のお前と比べるな」
セレスも腕輪へ手を伸ばした。
「先生が望まれるのであれば、受け入れます」
「本当にいいのか?」
「はい」
セレスが腕輪を左手首へはめる。
小さく光った。
その瞬間。
セレスがふらついた。
「大丈夫か?」
俺が支える。
セレスは俺の胸へ手をつき、驚いたように自分の体を見る。
「体が、重いです」
「今までが軽すぎたんだろう」
「魔力が、ほとんど感じられません」
「嫌なら外してもいいぞ。その代わり審査は不適格だ」
「外しません」
セレスは俺の服を掴んだまま答えた。
「先生に支えていただけるのであれば、悪くありません」
「自分で立て」
「もう少しだけ」
「普通に立てるだろう」
「足に力が入りません」
『身体機能に異常はありません』
家がすぐに告げる。
「家」
セレスの声が低くなる。
『事実です』
「後で覚えていなさい」
「権力も脅しも禁止だぞ」
「……はい」
残る六人も、順番に腕輪を着けた。
ミレイユの光輪が消えた。
「あっ」
彼女は頭上へ手を伸ばす。
「何もありません」
「普通はない」
「少し寂しいです」
「三十日だけだ」
「先生が毎日、頭を撫でてくださるなら我慢できます」
「腕輪と関係ないだろう」
リリスの角と翼は残ったが、黒い魔力が消えた。
翼を動かそうとして、後ろへ倒れる。
「重い!」
「今までは魔力で支えていたのか?」
「知らなかった」
「自分の体だろう」
「先生、起こせ」
「自分で起きろ」
「翼が床へ引っかかる」
俺が手を貸すと、リリスは両腕で俺の腕へしがみついた。
「外してよいか?」
「不適格になるぞ」
「それは嫌だ」
「なら慣れろ」
「先生が支えれば問題ない」
「三十日ずっと支える気はない」
エリナは腕輪を着けた直後、試すように軽く跳んだ。
着地に失敗し、尻餅をついた。
「……」
「大丈夫か?」
「床が強い」
「お前が弱くなったんだ」
「もう一度」
「やめておけ」
再び跳び、今度は前へ転んだ。
俺は額を押さえた。
「普通の体の使い方を覚えろ」
「普通は難しい」
「剣より簡単だ」
「剣なら転ばない」
「剣を使うな」
アウラは腕輪を着けると、尻尾を持ち上げられなくなった。
「重い」
「引きずるな」
「先生、持って」
「嫌だ」
「汚れる」
「自分で抱えろ」
アウラは両腕で自分の尻尾を抱き、歩き始めた。
少しだけ可愛い。
「先生、今笑った」
「笑ってない」
「可愛いと思った?」
「思ってない」
「顔に出てる」
「早く歩け」
クロエは腕輪を着け、自分の指輪を確認した。
「収納魔法が使用できません」
「中に何が入っている」
「金貨、証券、魔石、契約書、予備の服、食料、住居、馬車、船舶、飛行艇、商会本部の一部です」
「指輪の中に商会本部を入れるな」
「緊急時に必要です」
「日常生活には必要ない」
「財布も中です」
「銀貨一枚貸してやる」
「先生から借金を」
クロエの目が輝く。
「返せよ」
「利息はどのように?」
「いらない」
「無利子でお金を貸していただけるほど、私を信頼してくださっているのですね」
「銀貨一枚だぞ」
「一生大切に保管します」
「使え!」
最後にノアが腕輪を着けた。
影へ沈もうとする。
額だけ沈んだところで止まった。
「……抜けない」
「何をしている」
「いつもの場所へ行こうとした」
「普通に歩け」
「恥ずかしい」
「どうしてだ」
「全部見える」
「最初から見えている」
ノアは両手で顔を隠した。
「先生の後ろに隠れる」
「好きにしろ」
ノアが俺の背後へ回る。
服の裾を掴み、そこから動かなくなった。
世界の影を支配する女王が、ただの人見知りの少女へ戻っていた。
七人全員が腕輪を着けた姿を見て、フィオナが笑った。
「見事に十年前へ戻ったわね」
「十年前より弱い」
エリナが床へ座ったまま言う。
「十年前のお前は普通に歩けた」
「体が違う」
「言い訳するな」
◇
十一人の王女たちにも条件を説明した。
大使館予定地にある迎賓館。
広い応接室へ集まった王女たちは、五つの条件を聞き、顔を見合わせた。
代表してエレノア王女が立ち上がる。
「つまり、三十日間レオン様のお屋敷で暮らし、普通の生活を送ればよいのですね?」
「俺と結婚できるわけではない」
「承知しております」
「不適格かどうかを見るだけだ」
「はい」
「国家権力も使えない」
「問題ありません」
「魔法もほとんど使えない」
「受け入れます」
「家事も自分でする」
「努力いたします」
意外と素直だ。
七人より話が早い。
「それから、七人と喧嘩をしないこと」
エレノア王女の表情が少しだけ曇った。
「努力いたします」
「今、間があったな」
「七冠の皆様が、私たちを敵とみなさなければ」
「敵ではない」
「先生へ求婚する者は敵」
俺の後ろからノアが言った。
腕輪を着けたため、姿を隠せず俺の背中にくっついている。
「ノア」
「本当のこと」
「審査中は敵ではない」
「競争相手」
「競争でもない」
「先生」
エレノア王女が俺を見た。
「七冠の皆様は、すでに審査を競争と認識されています」
「認識を改めさせる」
「できるのでしょうか」
「……努力する」
今度は俺が少し間を空けてしまった。
十一人の王女も腕輪を受け取った。
魔法王国の王女。
砂海王国の王女。
獣人王国の王女。
小さな島国の王女。
十一人とも身分は高いが、七人ほど力へ依存していないらしい。
多少ふらつく者はいたものの、倒れる者はいなかった。
それを見たエリナが悔しそうな顔をする。
「王女のほうが歩くのが上手」
「歩くことに上手い下手があるのか」
「今はある」
「早く立て」
「先生、手」
「自分で立て」
「王女が見ている」
「だから何だ」
「格好悪い」
「二回も転んだ時点で遅い」
エリナが無言で俺へ手を伸ばす。
仕方なく引き起こすと、彼女は少しだけ満足そうにした。
「最初の課題はどうするの?」
フィオナが尋ねた。
「課題ではない」
「でも、審査するのでしょう?」
「普通に暮らせばいい」
「十八人が一つの家で普通に暮らすのは無理よ」
「部屋はある」
「食事は?」
俺は答えようとして、止まった。
七人。
十一人の王女。
俺。
レオ。
リタ。
フィオナは食事を必要としないが、それでも二十一人近い。
「地下の食堂を使えばいい」
『審査期間中、外部の調理施設を利用することは条件違反となります』
家が口を挟んだ。
「どうしてだ」
『家事能力を客観的に評価するためです』
「評価しなくていい」
『すでに審査条件として登録しました』
「勝手に増やすな」
『本日の夕食を、申請者十八名に作っていただきます』
十八人の女性が、一斉に台所を見る。
俺も見る。
俺が七人と暮らしていた頃から使っていた台所だ。
多少増築されているが、十八人が同時に料理できるほど広くはない。
「全員で作るのか?」
『一人一品。旦那様に試食していただきます』
「やらない」
『婚姻審査第一項目、料理能力です』
「そんな項目は決めていない」
『家庭生活には重要です』
クロエがすぐに賛成する。
「合理的です」
「お前は料理できるのか?」
「料理人を雇うことには慣れております」
「自分で作れ」
「材料の仕入れなら」
「調理しろ」
ミレイユが腕まくりをした。
「私が一番に作ります」
「料理できるのか?」
「神殿では、毎朝パンを焼いています」
「自分で?」
「祈りによって生地を発酵させ、聖なる炎で」
「今は両方使えないぞ」
ミレイユの動きが止まった。
「普通のパンは、どのように膨らむのでしょう」
「そこからか」
リリスが自信満々に台所へ向かう。
「魔界の料理なら任せろ」
「何を作る」
「血獣の心臓煮込み」
「普通の食材を使え」
「冷蔵庫に心臓は?」
「ない」
「では、誰かから取る」
「絶対にやめろ!」
エリナは包丁を手に取った。
「これなら剣と同じ」
「刃物を振り回すな」
「野菜を斬る」
「切ると言え」
アウラは食材庫を開けた。
「お肉」
「生で食べるな」
「味見」
「まだ何も作っていない」
「素材の確認」
「口に入れる前に確認しろ」
クロエは台所の広さを測り始める。
「調理設備が不足しています」
「増築するな」
「作業効率を上げるためには、厨房を現在の十三倍に」
「今ある場所で作れ」
「では、調理器具メーカーを買収して最新設備を」
「金を使うな!」
ノアは、誰にも見られないよう台所の隅へ移動しようとしている。
しかし姿を消せない。
「ノア」
「何?」
「何を作るつもりだ」
「先生の好きなもの」
「何だ?」
「秘密」
「材料は分かるのか?」
「十年前から見てた」
「天井裏から?」
「うん」
一番期待できそうなのがノアなのは、少し複雑だった。
◇
料理審査という名の夕食作りが始まった。
開始から五分。
ミレイユの生地はまったく膨らまなかった。
「先生」
「何だ」
「パンが眠ったままです」
「発酵には時間がかかる」
「祈ればすぐに起きるのですが」
「祈るな」
「少しくらい」
「腕輪が止めるだろう」
ミレイユは生地の前で両手を組んだ。
当然、何も起きない。
「神よ」
「呼ぶな」
「私の声が届きません」
「三十日だけ我慢してもらえ」
「神も寂しがっておられるはずです」
「神なら三十日くらい待てる」
十分後。
リリスの鍋から黒い煙が上がった。
「何を入れた」
「肉、野菜、香辛料」
「普通だな」
「魔界の香辛料」
「どれだ」
リリスが小さな黒い瓶を見せる。
ラベルには、髑髏の絵が描かれている。
「毒じゃないか!」
「魔族には香辛料だ」
「人間が食べたら?」
「三日寝る」
「入れるな!」
「もう入れた」
「捨てろ!」
「もったいない」
「俺が食べたら三日寝るんだろう!」
「先生なら一日」
「短くなっても駄目だ!」
二十分後。
エリナがまな板を真っ二つにした。
包丁も折れている。
「どうして野菜を切るだけで、まな板が割れる」
「腕輪で力は弱くなっている」
「だから加減が分からないのか?」
「いつもの一万分の一で振った」
「包丁を振るなと言っただろう」
「押しただけでは切れなかった」
「前後に動かせ」
「非効率」
「料理は戦闘ではない」
「敵を一撃で倒せない」
「人参を敵と呼ぶな」
三十分後。
アウラの皿には何も残っていなかった。
「料理は?」
「食べた」
「どうしてだ」
「味見してたらなくなった」
「一品作ると言っただろう」
「お肉、おいしかった」
「焼いてもいないだろう」
「新鮮」
「参加者が食材を減らすな!」
クロエは、小麦粉と卵と野菜を前に腕を組んでいる。
「先生」
「何だ」
「これらの市場価格を調査したいのですが」
「作るのに必要か?」
「適正価格を知らない食材を使用することはできません」
「もう買ってある」
「仕入れ担当者が不当に高い価格で購入している可能性が」
「俺が昔から取引していた店だ」
「では、店を監査します」
「料理をしろ」
「監査後に」
「夕食が明日になる!」
ノアの姿が見当たらない。
今は影へ隠れられないため、家の中にはいるはずだ。
「ノア?」
「ここ」
声は食卓の下から聞こえた。
覗き込むと、ノアが小さな鍋を抱えて座っている。
「どうして隠れている」
「見られると失敗する」
「何を作った」
「まだ秘密」
「火を使ったのか?」
「小さい火」
「焦げてないか?」
「大丈夫」
少なくとも煙は出ていない。
七人だけを見ていると、今夜の夕食が不安になる。
十一人の王女たちのほうはどうか。
白いドレスを着ていたエレノア王女は、慣れた手つきで野菜を刻んでいる。
「料理できるのか?」
「王女教育の一環として、最低限は」
「王女が料理を習うのか」
「我が国では、兵士への慰問で炊き出しを行いますから」
「まともだな」
俺が感心すると、背後から七人分の視線が刺さった。
「今のは比較ではない」
「先生」
セレスが俺を呼ぶ。
彼女の前には、小さな鍋が置かれている。
「私もできました」
「何を作った?」
「煮込み料理です」
「見せてくれ」
鍋の中には、茶色い液体。
肉と野菜らしきものが入っている。
見た目は悪くない。
「味見は?」
「まだです」
「少し食べてみろ」
「先生へ最初に召し上がっていただきたいです」
「危ない物を最初に俺へ食べさせるな」
「危なくありません」
セレスが小さな皿へ取り、自分で口に入れた。
動きが止まる。
「どうだ?」
「……」
「セレス?」
「皇帝には、毒への耐性があります」
「今は腕輪で普通の体だ」
「そうでした」
「何を入れた」
「塩を少々」
「どのくらい?」
「この程度の袋を一つ」
「一袋は少々ではない!」
「十年前も同じ失敗をしただろう!」
「今回は砂糖と間違えておりません」
「塩の量を間違えている!」
セレスが悲しそうに鍋を見る。
「十年間で、成長した姿を先生へお見せしたかったのですが」
「塩加減以外は悪くなさそうだ」
「本当ですか?」
「ああ」
「では、塩を抜きます」
「どうやって?」
「帝国魔術師へ――」
「呼ぶな!」
砂海王国の王女サフィアは、薄い生地へ野菜と肉を包んで焼いていた。
獣人王国の王女ミュウは、魚を丁寧に処理している。
小国の王女は、芋を潰して簡単な焼き料理を作っていた。
王女たちのほうが圧倒的に普通の生活へ慣れている。
七人の顔が、時間が経つほど険しくなった。
「先生」
クロエが小声で言う。
「審査基準を変更しませんか?」
「なぜだ」
「料理能力を婚姻条件へ含めることは、時代遅れです」
「さっき合理的だと言っただろう」
「市場状況が変わりました」
「王女たちが料理できると分かったからだろう!」
「家庭内労働は外部委託が効率的です」
「今は自分で作れ」
「先生のために、お金で最高の料理を用意することも愛情では?」
「今回は禁止だ」
「資本主義への差別です」
「大げさなことを言うな」
◇
夕食の時間。
大きな食卓へ、十八人分の料理が並んだ。
正確には十六品。
アウラは材料を食べてしまい、料理がない。
エリナは途中で包丁を三本折り、切っただけの野菜が皿に載っている。
ミレイユのパンは、焼き上がったものの石のように硬い。
リリスの煮込みは、家の判断で危険物として封印された。
セレスの塩煮込みは、水を足し続けた結果、鍋が三つに増えた。
クロエは最終的に、食材を適正価格順に並べただけだった。
「料理ではないだろう」
「食材本来の価値をお楽しみください」
「生の小麦粉をどう楽しむんだ」
王女たちの料理は、どれもそれなりに食べられそうだ。
中央にはエレノア王女の野菜スープ。
サフィア王女の肉包み。
ミュウ王女の焼き魚。
七人の表情は暗い。
「先生」
エリナが真剣な顔で言う。
「味ではなく、戦闘力も評価に入れるべき」
「料理審査だ」
「包丁を折った数なら私が一番」
「減点要素だ」
ミレイユが硬いパンを持ち上げる。
「保存食としては優秀です」
「壁の修理に使えそうだな」
「食べ物です」
試しに机へ軽く当てる。
こん、と木材のような音がした。
「本当に食べ物か?」
「神への祈りが足りませんでした」
「小麦粉と水分が足りなかったんだ」
俺は料理を一つずつ食べた。
王女たちの料理は、普通にうまい。
七人の料理は、普通ではなかった。
セレスの煮込みは、三杯目の水でようやく飲める濃さになった。
ミレイユのパンは、スープへ十分ほど浸せば噛める。
エリナの生野菜は、そのまま食べればいい。
アウラは料理がないので、本人の頭を一度撫でることで審査終了とした。
「どうして私は撫でられるだけ?」
「作ってないからだ」
「明日は作る」
「材料を食べるなよ」
「努力する」
クロエの並べた食材からは、俺が簡単な卵料理を作った。
「先生が私の用意した食材で料理を」
「お前は並べただけだ」
「共同作業ですね」
「違う」
リリスの料理は、俺が食べようとすると家が皿ごと逃げた。
『危険です』
「少しくらいなら」
『旦那様の胃腸機能では、二十八時間の意識喪失が予想されます』
「食べられないな」
「先生」
リリスが落ち込む。
「私は失敗か?」
「人間用の材料で、また作ればいい」
「魔界料理を食べてほしかった」
「俺が魔界へ行った時に、毒のない物を作ってくれ」
「魔界へ来るのか?」
リリスの顔が一気に明るくなる。
「七人の今を知るため、いずれは行く」
「明日行くぞ」
「三十日後だ」
「長い」
「我慢しろ」
最後に、ノアが食卓の下から小さな鍋を出した。
「先生」
「何を作った?」
「豆と野菜のスープ」
蓋を開ける。
懐かしい匂いがした。
十年前。
金がなく、肉も買えなかった頃。
庭で育てた豆と、形の悪い野菜を煮込んで作ったスープ。
特別な味ではない。
豪華でもない。
だが、七人と何度も食べた味だった。
「覚えていたのか」
「先生、疲れた時はこれを食べてた」
「ああ」
「今日は疲れてる」
「そうだな」
俺は一口飲んだ。
味は少し薄い。
野菜の切り方も不揃いだ。
それでも、今日食べた中では一番落ち着く味だった。
「うまい」
ノアの目が少しだけ大きくなる。
「本当?」
「ああ。ありがとう」
「うん」
ノアは嬉しそうに、俺の隣の椅子へ座った。
ほかの六人が俺たちを見る。
「先生」
セレスの声がした。
「一番おいしかったのは、ノアの料理でしょうか」
「順位はつけない」
「ですが、うまいとおっしゃいました」
「ほかの料理にも良いところはあった」
「私の煮込みの良いところは?」
「量が多い」
「味ではありません」
「明日も食べられる」
「もっとありませんか?」
「水分補給になる」
「先生」
「明日は塩を減らそう」
「……はい」
セレスが少しだけ頬を膨らませる。
女帝らしさはどこにもない。
王女たちは、そんな七人を驚いたように見ていた。
おそらく、世界で恐れられている姿しか知らなかったのだろう。
「意外です」
エレノア王女が呟いた。
「何が?」
「七冠の皆様が、これほど普通の女性のように過ごされるとは思いませんでした」
「普通?」
リリスが自分の黒い翼を見る。
「見た目の話ではありません」
「私たちは普通」
アウラが言う。
「先生の前では」
その言葉に、七人全員が頷いた。
俺は少しだけ笑った。
十年間で変わったものは多い。
変わらないものもある。
これから三十日間。
七人の現在を知る時間としては、悪くないのかもしれない。
『第一審査を終了します』
家の声が食堂へ響いた。
「審査ではないと言っている」
『料理能力、生活適応力、旦那様への理解度を集計しました』
「集計するな」
『第一位を発表します』
「順位はいらない!」
十八人の女性が一斉に姿勢を正した。
俺の言葉を聞いている者はいない。
『第一位、影の女王ノア』
ノアが俺の服の袖を掴んだ。
「勝った」
「競争ではない」
「第一位」
「家が勝手に決めただけだ」
『報酬として、今夜は旦那様の隣室を使用できます』
「報酬もいらない!」
ノアが椅子から立ち上がった。
「荷物を移す」
「待て」
「元から天井裏にある」
「部屋を使え!」
「先生の隣」
「天井裏は隣ではない」
「上」
「もっと近いという意味で言うな」
残る十七人が家へ詰め寄る。
「二位以下は?」
「明日の審査は?」
「料理以外の項目を増やすべきです」
「戦闘能力」
「財力」
「信仰心」
「竜の強さ」
「先生の隣で眠った回数」
「最後は誰だ!」
騒ぎが再び始まった。
俺は食卓へ突っ伏した。
まだ初日。
三十日間の共同生活は、始まったばかりだ。
◇
その夜。
俺は自分の部屋へ戻った。
十年前と同じ寝台。
机。
本棚。
窓の外には、七人と育てた木が見える。
今日は本当にいろいろあった。
虚無の狭間から帰還。
自分の墓。
世界大戦。
俺の複製。
妻を名乗る家。
娘を名乗る人工生命体。
死んだ旧友。
地下国家。
国王就任。
十一人の王女。
七枚の婚姻申請。
普通なら、一つだけでも一生分の事件だ。
「寝よう」
考えるのをやめ、寝台へ倒れ込む。
目を閉じる。
数秒後。
天井から、小さな音がした。
「ノア」
「何?」
声が天井裏から返ってくる。
「隣室を使えと言われただろう」
「ここも隣」
「部屋ではない」
「先生の上」
「降りてこい」
天井板が外れる。
ノアが寝台の上へ静かに降りてきた。
腕輪を着けているため、いつものように影へ消えることはできない。
着地に失敗し、俺の腹の上へ落ちた。
「ぐっ!」
「先生?」
「重くはないが、急に落ちてくるな」
「ごめん」
「隣の部屋で寝ろ」
「一人は嫌」
「世界の影を支配する女王だろう」
「今は普通の女の子」
都合のいい時だけ腕輪を利用する。
「仕方ない。寝つくまでここにいろ」
「朝まで」
「寝つくまでだ」
「朝まで寝つかない」
「眠れ」
ノアが寝台の端へ横になる。
俺は反対側へ移動した。
「近い」
「寝台が昔の大きさだからな」
「もっと近くてもいい」
「よくない」
その時。
扉が開いた。
セレスが枕を持って立っていた。
「何をしている」
「先生の寝室の警護です」
「腕輪で弱くなっているだろう」
「だからこそ、近くで警護する必要があります」
「自分の部屋へ戻れ」
「ノアは、なぜ寝台に?」
「料理の一位報酬らしい」
「審査は競争ではないと、先生はおっしゃいました」
「俺もそう思う」
「ならば報酬も無効です」
セレスが部屋へ入る。
その後ろから、ミレイユが顔を出した。
「セレス。抜け駆けはいけません」
「私は警護です」
「枕を持って?」
「長時間の警護に備えております」
「私も祈りによって先生をお守りします」
「奇跡は禁止されているだろう」
「先生の隣で祈るだけです」
リリスが翼を扉へ引っかけながら入ってくる。
「私も寝る」
「お前の翼だけで部屋が埋まる」
「畳めない」
「自分の部屋へ行け」
エリナが毛布を持って現れた。
「夜襲に備える」
「誰が襲う」
アウラが廊下で尻尾を抱えている。
「先生の部屋、入れない」
「入らなくていい」
「窓から行く」
「壁を壊すな!」
クロエは部屋の寸法を測り始めた。
「寝台を十八人用へ変更する必要があります」
「必要ない」
「共同生活の公平性を保つためです」
「寝室まで共同にするな」
最後に、十一人の王女たちまで廊下へ集まってきた。
「騒ぎが聞こえましたが」
エレノア王女が室内を覗く。
「何でもない。全員、自分の部屋へ戻ってくれ」
『審査参加者が旦那様の寝室前へ集合したことを確認しました』
家の声が響く。
「確認しなくていい」
『第二審査を開始します』
「何の審査だ!」
『旦那様との就寝時における相性審査です』
「今すぐ中止しろ!」
『公平性を確保するため、寝室を拡張します』
「やめろ!」
壁が動いた。
俺の寝室と隣接していた七つの部屋の壁が、一斉に床へ沈む。
部屋が巨大な一室へ変わっていく。
中央には、いつの間に用意したのか、二十人は眠れそうな巨大な寝台。
十八人の女性が、その寝台を見る。
次に俺を見る。
「待て」
俺は後ずさった。
「これは審査ではない」
『就寝位置は、旦那様を中心として抽選します』
「抽選するな!」
壁に、光る配置図が浮かぶ。
中央。
レオン。
右隣。
空欄。
左隣。
空欄。
最初の抽選結果が、ゆっくりと表示された。
『右隣、エレノア王女』
部屋が静まり返った。
七人が、エレノア王女を見る。
エレノア王女は青ざめた。
「私、辞退してもよろしいでしょうか」
『辞退は認められません』
「家!」
『左隣を抽選します』
七人の殺気が、腕輪で力を封じられているとは思えないほど膨れ上がる。
光る文字が回転する。
やがて、二人目の名前が表示された。
『左隣――』
その瞬間。
家中へ、激しい警報音が響いた。
『緊急事態を確認しました』
「今度は何だ!」
『大使館予定地に、未登録の婚姻希望者が到着しました』
「もう増やすな!」
『相手は一名です』
「誰だ」
『本人は、旦那様の正式な婚約者であると主張しています』
十八人の女性が、一斉に俺を見る。
「知らない」
俺はすぐに答えた。
『婚約の証拠として、旦那様本人の署名と血印が確認されました』
「また偽造だ!」
『家による鑑定の結果、本物です』
「俺は誰とも婚約していない!」
『相手は、旦那様が虚無の狭間で三か月間を共に過ごした女性と名乗っています』
七人の視線が変わった。
墓前でも。
世界大戦の時でも。
十一人の王女が現れた時でもなかったほど、静かで恐ろしい視線だった。
セレスが俺へ微笑む。
「先生」
「何だ」
「虚無の狭間では、お一人だったのですよね?」
「そのはずだ」
「そのはず?」
ミレイユの笑顔も深くなる。
「三か月間のお話を、詳しく伺ってもよろしいでしょうか」
「俺にも何が起きているか分からない」
玄関の呼び鈴が鳴った。
家の外から、女の声が響く。
「レオン!」
聞き覚えがあった。
虚無の狭間。
暗闇の中で何度も聞いた、俺以外には存在しないと思っていた声。
「約束どおり、迎えに来たわよ!」
俺は寝台の上で固まった。
七人。
十一人の王女。
妻を名乗る家。
そして、虚無の狭間から来た正式な婚約者。
どうやら三十日間の共同生活は。
開始一日目にして、十九人目の参加者を迎えることになったらしい。




