↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を滅ぼす七人の悪女を更生させた俺、死亡したと思われていたら彼女たちが世界大戦を始めようとしていた  作者: てへろっぱ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/51

第38話 女帝がキスのために毎日頬を汚すので、諦めた日に俺からしたくなった



「全員!」


 夕方。


 俺は。


 ついに叫んだ。


「自然にしろと言っただろう!」


 八人は。


 揃って答えた。


「自然に、したくなるよう努力しています」


「それを不自然と言うんだ!」


     ◇


 翌朝。


 庭。


「セレス」


「はい」


「頬」


「何か?」


「土」


「あら」


「今日で四日連続だぞ」


「偶然です」


「昨日は右頬」


「ああ」


「一昨日は左」


「ああ」


「その前は両方」


「ああ」


「今日は」


 俺は。


 セレスの顔を見る。


 右頬へ。


 完璧な位置に。


 小さく土。


「指でつけただろう」


「……」


「セレス」


「先生」


「何だ」


「証拠は?」


「女帝がそこで争うな!」


 後ろ。


 名前のない花。


 新しい芽が。


 また一つ。


 増えている。


「先生」


 セレスが。


 少しだけ。


 顔を近づける。


「取っていただけますか?」


「自分で取れ」


「……」


「何だ、その顔」


「恋人なのに」


「恋人でも自分で取れる土は取れ!」


「では」


 ハンカチ。


 自分で。


 拭く。


「先生」


「何だ」


「残念です」


「正直だな」


「はい」


「キスを期待していた?」


「非常に」


「もっと正直だな!」


 セレスは。


 少しだけ。


 頬を赤くして。


 花へ水をやる。


「ですが」


「ああ」


「先生がしたい時、と決めましたので」


「ああ」


「今日は、これ以上はしません」


「本当に?」


「はい」


 じょうろ。


 置く。


 俺を見る。


「……」


「何だ」


「少しだけ見つめるのも?」


「好きにしろ」


「ありがとうございます」


「許可するほどのことではない」


     ◇


 朝食。


 妙に。


 静かだった。


「……」


「……」


「……」


 俺が。


 パンを取る。


 セレス。


 普通。


 ミレイユ。


 普通。


 リリス。


 普通。


 エリナ。


 普通。


 アウラ。


 肉。


 クロエ。


 新聞。


 ノア。


 静か。


 アステラ。


 色紙。


「気持ち悪いな」


「先生」


 ミレイユが。


 悲しそうな顔。


「静かに朝食をいただいているだけです」


「昨日までと違いすぎる」


「自然にするよう」


 クロエ。


「先生からご指示がございましたので」


「自然を命令として実行するな」


「難しいです」


 リリスが。


 真剣に答える。


「先生」


「何だ」


「私は今」


「ああ」


「キスのことを考えないよう」


「ああ」


「茸の種類を頭の中で数えている」


「それも不自然だ!」


「十二種類目だ」


「知らない!」


 エリナ。


「私は」


「ああ」


「昨日から先生の顔を見ないように」


「ああ」


「三秒以上見たら負けって」


「誰と勝負している!」


「自分」


「やめろ!」


 アウラ。


「私は普通」


「本当に?」


「うん」


「何を考えている」


「朝ごはん」


「ああ」


「先生」


「ああ」


「キス」


「混ざってるぞ!」


「あと肉」


「そちらを中心にしろ!」


 ノアが。


 俺を見る。


「先生」


「何だ」


「自然って」


「ああ」


「難しい」


「そうだな」


「五分隠れたら?」


「好きなら普通にやれ」


「戻ったら」


「ああ」


「お帰り言って?」


「それは言う」


「分かった」


 ノア。


 席を立つ。


「朝食中に隠れるな!」


「自然にした」


「パンを食ってからにしろ!」


     ◇


 アステラは。


 一人。


 妙に落ち着いていた。


「アステラ」


「何?」


「余裕あるな」


「したから」


「言うな」


「キス」


「具体的に言わなくていい」


 残り七人の。


 視線。


 一斉に。


 アステラへ。


「……」


「……」


「……」


 アステラ。


 少し。


 嬉色。


「今」


 セレス。


「優越感を?」


「少し」


「アステラさん」


「何?」


「正直なのは美徳ですが」


「ああ」


「本日は少々腹立たしいです」


「ごめん」


「謝られると、もっと複雑です」


 それでも。


 誰も。


 アステラへ。


 何かをするわけではない。


 少し前なら。


 恋愛戦争が。


 本当に始まっていた。


「先生」


 アステラが。


 俺を見る。


「何だ」


「今日」


「ああ」


「私とはしなくていい」


「……」


 全員。


 止まる。


「どうして」


「一回した」


「ああ」


「またしたい」


「ああ」


「でも」


 七人を見る。


「私が毎日レオンの隣を取ったら」


「ああ」


「私も嫌な女になる」


「……」


「だから」


 色紙へ。


 新しい。


 薄い黄色。


「今日は」


「ああ」


「レオンとキスしなくても、嬉しい日を探す」


「いいな」


「褒めた?」


「ああ」


「頭」


「そこは残るのか」


     ◇


 午後。


 俺は。


 一人で。


 街へ出るつもりだった。


「先生」


 玄関。


 セレス。


「何だ」


「どちらへ?」


「散歩」


「予定は?」


「ない」


 セレスの顔が。


 少し。


 明るくなる。


「……」


「何だ」


「偶然ですね」


「何が」


「私も」


 小さな籠。


「散歩へ行こうと」


「一人で?」


「はい」


「本当に?」


「はい」


「尾行では?」


「違います!」


「では」


 一度。


 俺は考える。


「一緒に行く?」


 セレスが。


 完全に止まった。


「先生」


「何だ」


「今」


「ああ」


「先生から?」


「ああ」


「私を?」


「ああ」


「散歩へ?」


「ああ」


「デート?」


「そこまで決めていない」


「恋人同士の二人きりの散歩です」


「ではデートでもいい」


「……」


「セレス?」


「心の準備を」


「またか」


「三十秒」


「短くなったな」


     ◇


 行き先。


 なし。


 予定。


 なし。


 護衛。


 なし。


 女帝権限。


 なし。


 二人。


 普通に。


 歩く。


「先生」


「何だ」


「今日」


「ああ」


「キスのためではないのですか?」


「何が」


「この散歩」


「違う」


「……はい」


「残念?」


「少し」


「でも?」


「嬉しいです」


「ああ」


「先生から」


 小さく笑う。


「私と歩こうと、思ってくださったので」


     ◇


 右。


 左。


「どちら」


 俺が聞く。


 セレスは。


 以前なら。


 地図。


 人通り。


 安全。


 目的。


 全部考えた。


 今日は。


「左」


「理由は?」


「赤い屋根が見えるので」


「それだけ?」


「はい」


「行こう」


 左。


 進む。


 赤い屋根。


 店だった。


『壊れた植木鉢屋』


「何だ、これは」


 店先。


 ひび。


 欠け。


 割れて。


 修復された。


 植木鉢。


「全部壊れている」


 セレス。


「でも」


 近づく。


「金で継いであります」


 ひび。


 細い。


 金色。


「きれいですね」


「ああ」


 店主。


 老女。


「二人で花でも育ててるの?」


「はい」


 セレス。


 即答。


「名前のない花を」


「ああ」


「一緒に」


 少し。


 誇らしげ。


「育てています」


「なら」


 老女。


 一つ。


 小さな鉢。


「これ、どう?」


 青い。


 ひび。


 真ん中。


 金。


「先生」


「何だ」


「好きです」


「買う?」


「でも」


 値札。


 銅貨五枚。


「今の鉢があります」


「ああ」


「必要では」


「欲しい?」


 セレス。


 止まる。


「……」


「どうだ」


「欲しいです」


「では買えば」


「先生は?」


「俺も」


 一度。


 鉢を見る。


「好きだ」


「では」


 財布。


 セレスが出す。


「半分ずつ?」


 俺が言う。


 手。


 止まる。


「先生も?」


「ああ」


「二人の花に使うなら」


「ああ」


「二人で買う?」


「嫌?」


「……」


 セレスの顔。


 ゆっくり赤くなる。


「いいえ」


 二人。


 銅貨。


 半分ずつ。


「足りない端数は?」


「俺が一枚多く」


「では次回は私が」


「次回?」


「何かを一緒に買う時」


 当然のように。


 言った。


「……」


 俺も。


 少し。


 嬉しい。


「分かった」


     ◇


 店を出る。


 セレス。


 鉢を。


 大切そうに抱えている。


「先生」


「何だ」


「壊れた鉢を」


「ああ」


「直して」


「ああ」


「また使う」


「ああ」


「少し」


 金のひび。


「好きです」


「お前らしい?」


「どうでしょう」


「帝国も」


「ああ」


「一度壊れかけて」


「ああ」


「お前が直した」


 セレスが。


 少し。


 驚く。


「でも」


 俺は続ける。


「元に戻したわけではない」


「ああ」


「前より」


 議会。


 学校。


 診療所。


 選択。


「違う国になった」


「……」


「その鉢みたいだ」


 セレスが。


 長く。


 鉢を見る。


「先生」


「何だ」


「今」


「ああ」


「この鉢」


「ああ」


「もっと好きになりました」


「そうか」


「でも」


 俺を見る。


「先生がそう言ってくださったから?」


「それもいいだろう」


「宿題に反しませんか」


「好きになる理由は一つでなくていい」


「……はい」


     ◇


 さらに。


 歩く。


 小さな広場。


 子供。


 老人。


 噴水。


「休む?」


 俺が聞く。


「はい」


 ベンチ。


 二人。


 座る。


「静かだな」


「はい」


「セレス」


「何でしょう」


「女帝の仕事」


「ああ」


「今日は?」


「副官へ任せております」


「連絡は?」


「緊急時のみ」


「不安?」


「少し」


「戻りたい?」


「いいえ」


 即答。


「どうして」


「今は」


 鉢。


 隣の俺。


「ここにいたいです」


「ああ」


「先生は?」


「俺も」


 セレスの目が。


 少し。


 大きくなる。


「本当に?」


「ああ」


「今」


 一度。


 自分の気持ちを。


 確かめる。


「このまま少し座っていたい」


 セレス。


 何も言わない。


 ただ。


 嬉しそう。


     ◇


 五分。


 十分。


 セレスが。


 突然。


 笑った。


「何だ」


「先生」


「ああ」


「私」


「何だ」


「今日」


 頬。


 触る。


「土をつけておりません」


「朝はつけていた」


「あれは」


「ああ」


「……つけました」


「認めたな」


「ですが」


 笑う。


「今は」


「ああ」


「何もしていません」


「ああ」


「先生を」


 一度。


 少し。


 恥ずかしそうに。


「キスしたくなるようにしようとも」


「ああ」


「しておりません」


「本当?」


「はい」


「では」


「何です?」


「今」


 俺は。


 セレスを見る。


 頬。


 土。


 ない。


 髪。


 少し。


 風で乱れている。


 女帝の顔ではない。


 ただ。


 恋人と。


 予定のない散歩をして。


 壊れた鉢を。


 二人で買って。


 ベンチへ座っている女。


「俺が」


「ああ」


 心臓。


 少し。


 速くなる。


「したくなった」


 セレスが。


 完全に。


 止まった。


「……」


「……」


「セレス?」


「先生」


「何だ」


「何を?」


「分かっているだろう」


「言葉で」


「……」


 これ。


 八人から。


 何度も言われた。


 今度は。


 俺の番。


「キス」


「ああ」


「したい」


 セレスの瞳。


 揺れる。


「私と?」


「ああ」


「今?」


「ああ」


「土は?」


「ついていない」


「予定は?」


「ない」


「理由は?」


「したいから」


 セレスが。


 口元を。


 両手で隠す。


「先生」


「何だ」


「少し」


「ああ」


「待ってください」


「嫌?」


「絶対に違います」


「では」


「嬉しすぎて」


 息。


 整える。


「女帝として」


「ああ」


「ではなく」


 一度。


 目を閉じ。


 開く。


「セレスとして」


 俺を見る。


「ちゃんと、受けたいです」


「分かった」


     ◇


 三十秒。


「先生」


「もういい?」


「はい」


「確認する」


「ああ」


「キスしていい?」


 セレス。


 小さく。


 でも。


 はっきり。


「はい」


 俺が。


 少し近づく。


 セレスも。


 逃げない。


「触る?」


 頬へ。


 手を。


 上げかける。


「はい」


 頬。


 温かい。


「先生」


「何だ」


「目」


「ああ」


「閉じます」


「俺も」


 距離。


 なくなる。


 唇。


 触れる。


 ほんの。


 一瞬。


 アステラの時と。


 同じくらい。


 短い。


 でも。


 違う。


 セレス。


 その人との。


 初めて。


     ◇


 離れる。


「……」


「……」


 セレス。


 目を開かない。


「セレス?」


「少し」


「ああ」


「まだ」


「心の準備?」


「違います」


「では」


「覚えています」


「今?」


「はい」


「後でも覚えているだろう」


「今のうちに」


 やっと。


 目を開く。


 顔。


 真っ赤。


「先生」


「何だ」


「私」


「ああ」


「今日」


 鉢。


 見る。


「キスをするために」


「ああ」


「何もしていなかったのに」


「ああ」


「先生から」


「ああ」


「したいと」


「ああ」


「言っていただきました」


「そうだな」


「……」


「泣く?」


「少し」


 目。


 潤む。


「どうして」


「私は」


 十年前。


 全部。


 決めようとした。


 国も。


 俺の居場所も。


 迎え方も。


 未来も。


「先生に選んでいただくことが」


「ああ」


「こんなに」


 涙。


「嬉しいとは」


「ああ」


「知りませんでした」


「今は知った?」


「はい」


     ◇


「先生」


「何だ」


「もう一回」


「今日は一回」


「……」


「不満?」


「非常に」


「正直だな」


「ですが」


 セレス。


 少し笑う。


「次があります」


「ああ」


「それに」


 鉢を。


 持ち上げる。


「今日は」


「ああ」


「これもあります」


「鉢?」


「二人で買った」


「ああ」


「予定になかった」


「ああ」


「先生から誘っていただいた散歩で」


「ああ」


「見つけた」


「ああ」


「だから」


 胸へ。


 抱える。


「キスだけの日にしたくありません」


「……」


「今日」


 笑う。


「全部、覚えていたいです」


 俺も。


 少し。


 嬉しくなった。


「では」


「ああ」


「帰ろう」


「手は?」


「セレスから?」


「……」


 一度。


 考える。


「いいえ」


「何だ」


「今日は」


 少し。


 意地悪そうに。


「先生から来る日でしたので」


「欲張るな」


「待ちます」


 三歩。


 歩く。


 五歩。


 俺。


 少し。


 笑う。


「セレス」


「はい」


 手。


 差し出す。


「帰りも」


「ああ」


「つなぐか」


 セレスの顔が。


 また。


 赤くなる。


「先生」


「何だ」


「今日」


「ああ」


「私」


「ああ」


「たぶん」


 手を握る。


「女帝に戻れません」


「明日は戻れ」


     ◇


 帰宅。


 玄関。


「ただいま」


「お帰りなさい」


 七人。


 レオ。


 リタ。


 フィオナ。


 いつものように。


 待ち構えてはいない。


 だが。


 セレスが。


 持っている鉢。


「それ」


 アウラ。


「食べ物?」


「違います」


「鉢」


 ミレイユ。


「二人で購入しました」


 空気。


 少し動く。


「二人で?」


 クロエ。


「はい」


「支払い比率は?」


「半分ずつ」


「端数は先生」


「次回は私が」


「……」


 クロエ。


 少し悔しそう。


「共同購入」


「競争にするな」


 アステラは。


 俺と。


 セレスを見る。


 少し。


 目を細める。


「レオン」


「何だ」


「した?」


 直球。


「……」


 全員。


 止まる。


 セレスの顔。


 一気に赤い。


「先生」


「隠す必要ある?」


「ありませんが!」


 俺は。


 正直に。


「した」


 静寂。


「……」


「……」


「……」


「セレスと?」


 ノア。


「ああ」


「先生から?」


 エリナ。


「ああ」


 セレスが。


 小さく。


 でも。


 誇らしそうに追加する。


「先生が、したいと」


「セレス!」


「事実です!」


 七人。


 一斉に。


 俺を見る。


「先生から?」


 ミレイユ。


「ああ」


「セレスが誘導せず?」


 リリス。


「……」


 セレス。


 視線。


 逸らす。


「何かしたのか?」


 俺が聞く。


「朝」


 ノア。


「頬に土」


「やっぱり故意だったんだな!」


「ですが!」


 セレス。


「キスの時は何もしておりません!」


「それは本当だ」


「では」


 アステラが。


 少し。


 嫉妬した顔。


「自然?」


「ああ」


「レオンが?」


「ああ」


「したくなった?」


「ああ」


「……」


 嬉色ではない。


 少し。


 青。


「嫉妬」


「ああ」


「でも」


 セレスを見る。


「おめでとう」


「アステラさん」


「悔しいけど」


「ああ」


「私の時も、レオンからだった」


「……」


 二人。


 視線。


「……」


「……」


「そこで張り合うな」


     ◇


『確認しました』


 家。


「出たな」


『二例目の口づけ成立』


「数えるな」


『セレス様』


「ああ」


『当初は意図的な誘導行動を繰り返しましたが』


 セレス。


 顔を覆う。


「家」


『事実です』


『本日は途中から誘導を中止』


「ああ」


『旦那様からの自発的希望を待つことを選択』


「ああ」


『また』


『一度の口づけ後、追加要求を拒否されても受容』


「非常に残念でした」


『感情は問題ありません』


「便利な規則ですね」


『合格です』


 セレスが。


 少し。


 胸を張る。


『旦那様』


「はい」


『一日を通じて』


「ああ」


『口づけを目的化せず』


「ああ」


『自然な共同体験の中で』


「ああ」


『ご自身から欲求を認識・言語化』


「ああ」


『実施前に明確な同意確認を行いました』


「ああ」


『高評価です』


「恋愛の採点をするな」


     ◇


「先生」


 ミレイユが。


 俺を見る。


「何だ」


「これで」


「ああ」


「二人」


「数えるな」


「残り六人」


「数えるな!」


 エリナ。


「先生」


「何だ」


「次は?」


「決めない!」


 アウラ。


「今日?」


「もうしない!」


「明日?」


「決めない!」


 クロエ。


「確率だけでも」


「計算するな!」


 ノア。


「先生」


「何だ」


「私」


「ああ」


「一回未遂」


「未遂扱いするな」


「次」


「ああ」


「来る?」


「分からない」


「でも」


 ノア。


 小さく笑う。


「待つ」


「ああ」


 リリスは。


 腕を組む。


「先生」


「何だ」


「三鍋目」


「ああ」


「もう熱くない」


「だから何だ」


「事実を言っただけだ」


「絶対に意識しているだろう!」


 ミレイユ。


 白いガラクタ。


 持ってくる。


「先生」


「何だ」


「こちらも」


「ああ」


「今日完成いたしました」


「だから?」


「特に何も」


「……」


 頬。


 赤い。


「全員!」


 俺は。


 頭を抱える。


「自然にしろ!」


「しています!」


「していない!」


     ◇


 その夜。


 俺の部屋。


 机。


『また明日』


 の木札。


 今日は。


 もう。


 休む側。


「二人か」


 アステラ。


 セレス。


 順番。


 決めていない。


 公平でもない。


 同じでもない。


 でも。


 それでいい。


 俺は。


 今日買った。


 青い。


 金継ぎの鉢を見る。


 明日。


 名前のない花を。


 植え替える。


「次は」


 誰か。


 決めない。


 いつか。


 決めない。


 ただ。


 その人と。


 何かをして。


 笑って。


 近づいて。


 俺が。


 したいと思った時。


 ちゃんと。


 聞けばいい。


 こんこん。


「誰だ」


「ミレイユです」


「どうぞ」


 扉。


 聖女。


 入る。


 手に。


 例の。


 役に立たない白い塊。


「……」


「……」


「ミレイユ」


「はい」


「それを俺の部屋へ増やす気か」


「違います」


「では」


 ミレイユは。


 少し。


 緊張した顔。


「先生」


「何だ」


「眠る前に」


「ああ」


「五分だけ」


「ああ」


「何の役にも立たない話をしませんか」


 俺は。


 少し笑った。


「いいぞ」


「本当に?」


「ああ」


「キスは?」


 俺が。


 黙る。


 ミレイユ。


 慌てる。


「今のは忘れてください!」


「自然に話せ!」


「難しいです!」


 結局。


 その夜。


 俺とミレイユは。


 五分どころか。


 一時間。


『もし空を飛ぶ魚が、泳げなくなったら魚なのか』


 という。


 本当に。


 何の役にも立たない話をした。


 そして。


 気づけば。


 俺は。


 キスのことを。


 すっかり忘れていた。


 たぶん。


 それでいい。


 少なくとも。


 ミレイユが。


「先生」


「何だ」


「今日」


 帰り際。


 嬉しそうに笑って。


「キスしなくても、すごく楽しかったです」


 と言った時。


 俺は。


 次に彼女と過ごす時間が。


 少し。


 楽しみになっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。