第10話 全員と結婚する気はないのに、八人が正妻の権限を話し合い始めた
『旦那様が、自分以外の七名全員とも婚姻することを希望した場合、認められますか』
家の壁に表示された質問を前に。
七人の教え子とアステラは、誰一人として口を開かなかった。
女帝セレス。
最高位聖女ミレイユ。
魔王リリス。
歴代最強の勇者エリナ。
竜王アウラ。
大陸経済の三割を握る商業王クロエ。
世界最大の諜報組織を支配する影の女王ノア。
そして、虚無の狭間を管理していた境界意識体アステラ。
世界の頂点に立つ八人が、一つの仮定に対して答えられずにいる。
「待て」
俺は両手を上げた。
「何度も言うが、俺は八人全員と結婚したいとは言っていない」
『仮定の質問です』
「仮定でも必要ない」
『七名の再更生教育と、アステラ様の婚姻適性確認に必要です』
「どうして必要なんだ」
『旦那様が複数の女性を大切に思っていることは、すでに確認されています』
「大切に思うことと、結婚は別だ」
『しかし、七名とアステラ様は婚姻を希望しています』
「だからといって、俺が全員を選ぶとは限らない」
『一人を選んだ場合、残る七名が納得する可能性は二・一パーセントです』
「低いな」
『誰も選ばなかった場合、八名が諦める可能性は〇・〇〇三パーセントです』
「もっと低い!」
『したがって、全員との婚姻を検討することが、世界平和に最も近い選択となります』
「俺の意思はどこへ行った!」
『旦那様の幸福度も計算しております』
「本当か?」
『八名のうち一人だけを選んだ場合、残る七名から毎日説得を受ける生活となります』
「幸福度は?」
『著しく低下します』
「だろうな」
『誰も選ばない場合、八名全員から毎日説得を受けます』
「もっと悪いな」
『全員を選んだ場合、家庭内順位を巡って毎日争いが発生します』
「全部悪いじゃないか!」
『現在、改善策を計算中です』
「計算が終わるまで、婚姻の話は保留だ」
「先生」
セレスが静かに呼んだ。
「何だ」
「仮定の話であることは理解しております」
「ああ」
「そのうえで、一つ確認してもよろしいでしょうか」
「内容による」
「先生は、複数の妻を持つこと自体を、不誠実だとお考えですか?」
俺は少し考えた。
七人。
アステラ。
八百四十二世界から来た留学生。
全員が俺の答えを待っている。
ここで適当なことを言えば、また家が何らかの制度へ登録するかもしれない。
「一人ひとりが納得しているなら、制度として否定する気はない」
八人の表情が少しだけ明るくなった。
「だが」
俺は続けた。
「俺には、八人全員を平等に大切にできる自信がない」
「平等でなくても構いません」
セレスが即答した。
「そこを気にしろ」
「先生が私を大切にしてくださるのであれば、ほかの方より一秒短くても我慢します」
「一秒しか我慢しないのか?」
「一日あたりです」
「毎日計るつもりか」
「必要であれば」
クロエが紙を取り出す。
「時間管理は私がお引き受けします」
「引き受けるな」
「一日を八等分した場合、一人あたり三時間です」
「睡眠と仕事の時間は?」
「先生には一日四十八時間働いていただきます」
「一日を増やすな!」
「時間魔法を使えば可能です」
「三十日間は魔法禁止だ」
「婚姻後の話です」
「もう婚姻後の予定を立てているのか?」
「百年分ございます」
「長すぎる!」
アウラが指を折り始めた。
「一日三時間」
「真に受けるな」
「私は寝る時間を一緒にする」
「どうして」
「寝ている間なら、ほかの人の時間を減らさない」
「意外と考えたな」
「先生を抱いて寝るだけ」
「結局俺が眠れない」
「動かない」
「寝返りで屋根を壊していただろう」
「今は人の姿」
「尻尾がある」
「先生に巻く」
「もっと眠れない!」
エリナが腕を組む。
「私は三時間もいらない」
「そうなのか?」
「一時間修行。三十分食事。三十分話す。残り一時間は自由」
「まともに聞こえるな」
「自由時間も先生と過ごす」
「全部じゃないか」
「先生が一人になりたい時は、少し離れて見守る」
「どのくらい離れる」
「三メートル」
「近い」
「五メートル」
「見えるところにいる前提をやめろ」
リリスが翼を畳もうとして、腕輪のせいで支えきれず、隣の椅子へ引っかけた。
「私は魔界へ先生を連れていく」
「共同生活の話はどうした」
「全員が同じ家に住むから争う」
「それはそうかもしれない」
「曜日ごとに国を変える」
「七人で七日か」
「アステラは虚無だから、移動中」
「私を移動時間扱いしないで!」
アステラが抗議する。
「境界を通る時、先生は私と二人」
「移動時間だけでは短いわ」
「では、虚無に一日」
「世界から八日目を作る必要があるわね」
「作れるのか?」
「レオンが虚無王を正式継承すれば、一週間へ一日くらい追加できるわ」
「暦を私生活のために変えるな!」
八百四十二世界すべてが、一週間八日になる可能性が出てきた。
絶対に継承式の権限を詳しく確認する必要がある。
「私は先生と同じ国へ住まなくても構いません」
ミレイユが穏やかに言った。
俺は少し驚いた。
「本当に?」
「はい。神殿には私を必要とする者が大勢おります」
「そうだろうな」
「一週間のうち六日は神殿で働きます」
「残り一日は?」
「先生と過ごします」
「現実的だな」
「ただし、その一日を神聖安息日として世界共通の休日にします」
「急に規模が大きくなった!」
「先生と過ごす日に仕事を入れられないようにするためです」
「世界中を休ませるな」
「信徒も休めます」
「聞こえはいいが、自分の予定を優先しているだろう!」
ノアは、俺の背後に隠れたまま何も言わない。
「ノア」
「何?」
「お前は、全員との婚姻を認められるのか?」
「先生が本当に幸せなら」
「さっきと同じだな」
「でも、全員は多い」
「俺もそう思う」
「一人ずつ減らす」
「どうやって」
「話し合う」
「成長したな」
「三十年くらいかけて」
「長い」
「三十年後、私だけ残る」
「諦めさせる話し合いか!」
「傷つけない」
「手段を詳しく聞くのが怖い」
クロエが手を上げる。
「先生」
「何だ」
「平等にできないことを心配されているのであれば、平等ではなく公平を目指すべきです」
「違いは?」
「全員へ同じものを与える必要はありません。それぞれが求めるものを、必要な分だけ与えればよいのです」
「少しまともだな」
「セレスは先生からの信頼。ミレイユは心の安らぎ。リリスは帰る場所。エリナは共に歩む目標。アウラは触れ合い。ノアは安心できる居場所」
「お前は?」
「先生の全資産の共同管理権です」
「急に生々しい!」
「冗談です」
「本当に?」
「九割ほど」
「ほとんど本気じゃないか」
「私は、先生と未来の計画を立てたいのです」
クロエは少しだけ視線を落とした。
「十年前、先生が明日もいてくださると思っていた時は、何も準備しておりませんでした」
いつもの商業王らしい笑顔ではなかった。
「先生がいなくなってから、明日というものが、必ず来るわけではないと知りました」
「クロエ」
「ですから、先生がいらっしゃる未来を、一日ずつ確認したいのです」
「……そうか」
「まずは百年分」
「多い」
「では五十年」
「減らし方が大きい」
「十年では短すぎます」
「今は三十日分でいい」
「承知しました」
クロエは嬉しそうに、新しい予定表を作り始めた。
少なくとも話し合う期間を三十日に限定できた。
「アステラは?」
俺は最後の一人へ尋ねた。
「私?」
「ああ。俺が七人全員と結婚したいと言ったら、認めるのか?」
「嫌よ」
即答だった。
「やはりか」
「でも、レオンが本当にそれを望んでいるなら、考える」
「考えるだけ?」
「私は三か月しかレオンと過ごしていない。でも、七人は十年以上、あなたのことを知っている」
アステラは七人を見る。
「少し羨ましいわ」
「先生の魂へ入り込んでいる者に、羨ましいと言われたくありません」
セレスが答える。
「私だって、好きで半分になったわけではないもの」
「ご自分で先生へ核を渡したのでしょう?」
「レオンが消えそうだったから」
「感謝はしております」
「なら、少しくらい優先して」
「それと婚姻は別です」
「あなた、レオンと同じことを言うわね」
「先生に育てていただきましたので」
セレスが少し誇らしげに答える。
言い争いではある。
だが、昨日までとは少し違う。
武器も。
軍隊も。
魔法も出てこない。
互いの言葉を聞こうとしている。
「家」
『はい、旦那様』
「今の八人の答えを、どう評価する」
『昨日より大きな改善が確認されました』
八人の表情が明るくなる。
『ただし、全員との婚姻を認めるかという質問への明確な回答は、得られておりません』
「答えが出なくてもいい」
『なぜですか?』
「すぐに決められることではないからだ」
『効率が低下します』
「人の気持ちは、効率だけで決められない」
家はしばらく沈黙した。
『記録しました』
「分かってくれたか?」
『旦那様の感情判断を、効率計算より優先する項目を追加します』
「最初からそうしてくれ」
『ただし、優先度は暫定です』
「確定にしろ」
『今後の結果を確認します』
家まで再教育が必要かもしれない。
◇
「では、次の質問です」
留学生代表のルシアが紙を読み上げた。
七人とアステラへの面談は、食堂でそのまま行われていた。
七つの部屋へ分ける案は取りやめた。
七人が互いの回答を聞くことにも意味がある。
俺は食卓の端へ座り、八人と留学生のやり取りを見守っている。
レオは俺の隣。
リタはレオの隣。
フィオナは面白そうに壁へ寄りかかっていた。
「レオン様が、国王、虚無王、英雄、先生というすべての立場を捨て、誰も知らない田舎で暮らしたいと希望した場合、同行しますか?」
「行きます」
七人とアステラが、同時に答えた。
「早いな」
「先生が望まれるのであれば」
セレスが答える。
「帝国はどうする」
「後継者へ譲ります」
「国民を捨てることにならないか?」
「国は一人で支えるものではありません。私がいなくても動くよう、この十年で制度を整えました」
「本当に?」
「はい」
「俺が明日行きたいと言っても?」
セレスが少し黙った。
「三か月いただけますか?」
「即日ではないんだな」
「引き継ぎが必要です」
「まともだ」
「先生に褒めていただきました」
「その顔は昔と変わらないな」
セレスは満足そうに微笑んだ。
「私は、すぐには行けません」
ミレイユが答えた。
「理由は?」
「神殿に、私にしか治せない病の方がいます」
「何人?」
「現在、七十二名です」
「では、その者たちを治してから?」
「はい。その後は、後継者へ聖女位を譲ります」
「聖女位は譲れるのか?」
「神が認めれば」
「認めなかったら?」
「説得します」
「神を?」
「はい」
「できるのか?」
「十年間、何度も意見を申し上げてきました」
「神と口論しているのか」
「話し合いです」
ミレイユは微笑んだ。
神殿の最高位に立つだけはあるらしい。
「私は魔界ごと持っていく」
リリスが言った。
「田舎へ魔界を持ってくるな」
「先生が魔界へ来ればよい」
「俺は誰も知らない田舎で暮らしたいと言っている」
「魔界の辺境なら、誰も先生を知らない」
「お前が一緒なら、すぐ知られるだろう」
「私も身分を隠す」
「翼と角は?」
「普通の魔族にもある」
「部下は?」
「一日一回、報告だけ聞く」
「同行するというより、遠隔で魔王を続けるのか」
「国を捨てるのは、先生が嫌がる」
俺は少し驚いた。
「分かっているじゃないか」
「先生は、自分のために誰かが困るのを嫌う」
「ああ」
「だから魔王は続ける。でも先生と暮らす」
「忙しいぞ」
「眠る時間を減らす」
「それは駄目だ」
「先生が膝枕をすれば、短くてもよく眠れる」
「科学的根拠は?」
「私がそう思う」
「根拠になってない」
「私は行かない」
エリナが言った。
全員が彼女を見る。
「エリナは同行しないのか?」
「先生一人だけなら、行く」
「どういう意味だ」
「先生がすべてを捨てて逃げたいほど疲れているなら、原因を片づける」
「片づけるとは?」
「先生を疲れさせた者へ話を聞く」
「剣は使うなよ」
「今は使わない」
「今は?」
「三十日後は、必要なら使う」
「再教育が足りない」
「話を聞いて、本当に悪ければ斬る」
「法に任せろ」
「分かった」
エリナは素直に頷いた。
「原因をなくしてから、先生が帰りたい場所へ連れて帰る」
「俺の希望が田舎暮らしでも?」
「一か月だけ」
「その後は?」
「先生に、まだ帰りたいか聞く」
「帰りたいと言ったら?」
「一緒に行く」
力任せに止めるのではなく、俺が逃げたい原因を先に考える。
エリナなりに、少し変わろうとしているらしい。
「私は行く」
アウラ。
「竜族は?」
「みんな大人」
「本当か?」
「たぶん」
「不安だ」
「お腹が減ったら、自分で食べる」
「普段はお前が餌を与えているのか?」
「大きな獲物は分ける」
「竜王がいなくなったら、争わないか?」
「争う」
「駄目じゃないか」
「でも、先生が一緒なら戻る」
「毎日?」
「朝、田舎。昼、竜の都。夜、田舎」
「移動が多い」
「私に乗れば早い」
「田舎で静かに暮らす意味がないな」
「では、竜の都を田舎にする」
「都市を過疎化させるな」
「私は同行しません」
クロエも答えた。
「お前も?」
「先生が誰にも知られず暮らしたいのであれば、私が同行すれば必ず居場所を知られます」
「商業王だからか」
「私が移動すると、護衛、商会、取引先、市場、投資家が動きます」
「大変だな」
「ですので、先生が望む田舎を、誰にも知られないまま快適に暮らせる場所へ発展させます」
「発展させたら田舎ではなくなる」
「必要最低限に留めます」
「どの程度だ?」
「道路、上下水道、医療施設、商店、宿泊施設、飛行艇発着場――」
「都市になるぞ」
「先生専用です」
「もっと悪い!」
「では、毎週一度だけ食料をお届けします」
「それなら助かる」
「私も一緒に届きます」
「荷物のように言うな」
「先生の負担にならない頻度を探します」
「それでいい」
クロエは予定表へ書き込む。
すでに架空の田舎暮らしについて、百項目ほど計画していた。
「私は先に行く」
ノアが答えた。
「先に?」
「先生が暮らす田舎を調べる」
「何を?」
「危険な人がいないか。家は安全か。水は飲めるか。食べ物はあるか」
「普通だな」
「住民全員の過去、家族、借金、秘密も」
「そこまで調べるな」
「必要」
「必要ではない」
「先生を嫌う人がいたら?」
「全員に好かれる必要はない」
「でも、危険」
「嫌うことと危害を加えることは違う」
「……分かった」
ノアは少し考える。
「危害を加えそうな人だけ調べる」
「本人へ何もしないなら」
「話を聞く」
「それならいい」
「暗い部屋で」
「普通の場所で聞け!」
最後はアステラ。
「私は、レオンが行くところへ行くわ」
「虚無はどうする」
「所有者はレオンだもの」
「管理は?」
「各世界の代表へ任せる」
「お前がいなくても大丈夫か?」
「今は家が接続しているから、少しくらいなら」
壁が光る。
『長期不在の場合、境界の維持効率が三十七パーセント低下します』
「駄目じゃないか」
「田舎と虚無を直接繋ぐわ」
「田舎の裏庭に異世界の門を作るな」
「便利よ」
「静かに暮らせない」
「では、私が毎日通う」
「田舎から仕事へ?」
「新婚夫婦みたいね」
「結婚は決まってない」
「でも、一緒に暮らすのはいいの?」
「仮定の話だ」
「仮定でも嬉しい」
アステラは楽しそうに笑った。
八人の答えは、それぞれ違った。
すぐ一緒に行く者。
責任を終えてから行く者。
今の立場を保ちながら、一緒に暮らす方法を探す者。
俺が知らない十年間。
七人は、ただ俺を待っていただけではない。
それぞれの国。
民。
仲間。
背負うものを持っている。
俺のために、すべてを捨てると言われるより。
今の答えのほうが、少し嬉しかった。
「先生」
セレスが俺を見る。
「私たちの答えは、いかがでしたか?」
「最初よりよくなっている」
「最初?」
「昨日なら、全員すぐについてくると言っただろう」
八人が少し考える。
「たぶん」
アウラが答えた。
「国は部下に任せる」
リリス。
「神殿ごと移動させました」
ミレイユ。
「帝国と田舎を併合します」
セレス。
「お前たち、本当に再教育が必要だったんだな」
◇
「続いて、レオン様への質問です」
ルシアが俺へ向き直った。
「まだあるのか」
「百問のうち、最初の一問です」
「八人への質問は?」
「七百九十九問残っています」
「終わる気がしない」
「回答内容が重複するものは省略します」
「頼む」
ルシアが質問書を読む。
「レオン様が、七名のうち最も女性として意識している方は誰ですか」
来た。
先ほど家が表示した質問。
八人の視線が、俺へ集中する。
セレスは真っすぐ。
ミレイユは笑顔。
リリスは翼を落ち着かなく動かし。
エリナは戦いの前より緊張した顔。
アウラは尻尾を両手で抱え。
クロエは記録用の紙を持ち。
ノアは俺の椅子の後ろへ移動し。
アステラは期待するように俺を見ている。
「まず、質問がおかしい」
俺は答えた。
「どこがでしょう」
「七人のうちと言いながら、アステラまで見ている」
「先ほど八名へ修正されました」
「修正を認めていない」
「では、七名だけで」
「アステラが怒るだろう」
「入れて」
アステラがすぐに言う。
「八名でお願いします」
「そこではない」
「先生」
セレスが呼ぶ。
「正直にお答えください」
「正直に言えば、分からない」
「分からない?」
「ああ」
「誰一人、女性として見ていないのですか?」
ミレイユの笑顔が少し曇る。
「そうではない」
八人が一斉に反応した。
「では」
リリスが身を乗り出す。
「誰だ」
「話を最後まで聞け」
俺は八人を順番に見た。
「俺にとっては三か月前まで、お前たちは守るべき少女だった」
七人は黙る。
「帰ってきたら、大人の女性になっていた。姿だけではない。国や民を背負い、それぞれの十年を生きている」
「はい」
セレスが答える。
「今のお前たちを知る前に、誰を最も女性として意識しているかなんて決められない」
「これから知れば、決まりますか?」
「分からない」
「また分からないのですか?」
「人の気持ちは、先に結果を決めるものではないだろう」
セレスが少し考える。
「では、先生に知っていただくことで、私が一番になる可能性も」
「ある」
七人の表情が明るくなる。
「ほかの者が一番になる可能性もある」
七人の表情が暗くなる。
「アステラも?」
「お前も、まずは今のお前を知るところからだ」
「三か月一緒だったのに」
「俺は声しか知らなかった」
「今は体もあるわ」
「だから知る必要がある」
「分かった」
アステラは少しだけ嬉しそうに頷いた。
「それでは、現時点では全員に可能性があると?」
ルシアが確認する。
「婚姻の可能性を約束する気はない」
「女性として意識する可能性です」
「それなら、否定しない」
八人が互いを見る。
空気が変わる。
先ほどまでの不安ではない。
競争が始まった時の空気だ。
「待て」
俺は先に止めた。
「競争ではない」
「はい」
八人が同時に答えた。
絶対に理解していない。
『旦那様の回答を記録しました』
「変な解釈をするなよ」
『八名全員を女性として意識する可能性あり』
「少し違う」
『婚姻の可能性は未定』
「そうだ」
『今後の行動によって順位変動あり』
「順位はない!」
『競争開始を宣言します』
「宣言するな!」
「家」
セレスが壁を見る。
「競争ではなく、互いに努力する期間です」
「少し成長したな」
「はい。ほかの七人を妨害せず、自分を知っていただきます」
「それでいい」
「ただし、先生が不当に誘惑された場合は止めます」
「不当かどうかは俺が決める」
「先生はお人好しですので」
「信頼してくれ」
「努力します」
本当に少しずつだが、前へ進んでいる。
◇
『次の教育課題を発表します』
家の声が食堂へ響いた。
「まだ質問の途中だぞ」
『旦那様の回答を受け、七名とアステラ様が互いを妨害しない能力を確認する必要があります』
「どうやって確認する」
『八名それぞれに、別の婚姻希望者と旦那様の交流を支援していただきます』
食堂が静まり返った。
「支援?」
セレスが聞き返す。
『はい』
「誰と、誰の?」
『旦那様と、ほかの女性です』
「支援とは?」
ミレイユの声が少し震える。
『会話の場を整え、互いの理解を助け、妨害せず見守ってください』
八人の顔色が変わった。
「先生」
ノアが俺の服を掴む。
「難しい」
「さっき、努力すると言っただろう」
「言ったけど、早い」
『最初の課題対象を発表します』
「待ってください」
セレスが手を上げる。
「なぜ、私たちが先生とほかの女性との交流を支援する必要があるのですか?」
『旦那様の意思を尊重できるか確認するためです』
「先生は、ほかの女性との交流を望んでおられますか?」
全員が俺を見る。
「留学生の話を聞く必要はある」
「婚姻目的ではなく?」
「ああ」
「では、婚姻目的の交流を支援する必要はありません」
『正論です』
セレスが少し誇らしげになる。
『課題を修正します』
「家が素直だな」
『旦那様と留学生との文化交流を支援してください』
「それであれば」
セレスは少しだけ安心した。
『ただし、留学生側が旦那様へ好意を持った場合も、危害や妨害は禁止します』
安心した顔が固まった。
「そこまで必要でしょうか」
『必要です』
「先生」
セレスが俺を見る。
「好意を持たれた場合は、はっきりお断りください」
「俺の判断で答える」
「即日で?」
「相手の気持ちを聞いてからだ」
「聞く必要が?」
「まず話を聞けと教えただろう」
セレスが言葉に詰まる。
俺の教えを使われると弱いらしい。
『第一の組み合わせを発表します』
壁へ八人の名前が並ぶ。
セレス。
ミレイユ。
リリス。
エリナ。
アウラ。
クロエ。
ノア。
アステラ。
その隣に、異世界留学生の名前が次々と表示される。
『女帝セレス』
「はい」
『旦那様と、薬花世界のエルフィ様による薬草園見学を支援してください』
セレスの笑顔が固まった。
エルフィが小さく頭を下げる。
「よろしくお願いいたします」
「……こちらこそ」
『聖女ミレイユ』
「はい」
『旦那様と、機械世界のA―七七一九様による工房見学を支援してください』
「機械の方なら、婚姻機能は外されたのですよね?」
「再予約命令を受信中です」
A―七七一九が答える。
ミレイユの笑顔が引きつる。
『魔王リリス』
「嫌な予感がする」
『旦那様と、戦争世界のガルナ様による模擬戦見学を支援してください』
「模擬戦?」
リリスとエリナが同時に反応した。
「なぜ私ではない!」
エリナが立ち上がる。
『勇者エリナには別の課題があります』
「戦いなら私」
「私は四本腕だ」
ガルナが笑う。
「勇者とも戦いたい」
「今すぐ」
「腕輪で力を封じられているだろう」
「普通の力で戦う」
「課題が終わってからにしろ」
『勇者エリナ』
「何?」
『旦那様と、水世界のミレア様による地底湖遊覧を支援してください』
エリナが固まった。
「水?」
「はい」
桶の中にいるミレアが笑う。
「船で湖を巡る予定です」
「剣は?」
「使いません」
「戦いは?」
「ありません」
「変更して」
『できません』
エリナは人生で最も難しい敵と出会ったような顔をした。
『竜王アウラ』
「お肉?」
『旦那様と、妖精世界のピピ様による菓子作りを支援してください』
「お菓子」
アウラとピピの目が同時に輝いた。
「食べていい?」
「三つ!」
「材料を食べるなよ」
「努力する」
『商業王クロエ』
「はい」
『旦那様と、光世界のソレイア様による夜間生活設備の相談を支援してください』
「設備投資のお話ですね」
「先生との時間でもあります」
ソレイアが微笑む。
クロエの笑顔が一瞬固まったが、すぐに商業王の顔へ戻る。
「最適な設備をご提案いたします」
『影の女王ノア』
「嫌」
「まだ内容を聞いていないぞ」
『旦那様と、境界残存者ユキ様による街の散策を支援してください』
ノアがユキを見る。
白い衣装の少女は、静かに頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「先生が名前をつけた子」
「仮の名前だ」
「一番危険」
「どこが?」
「先生を見てる」
「全員見ているだろう」
「目が違う」
「言いがかりだ」
「……努力する」
ノアが珍しく、自分からユキへ近づいた。
「先生の隣を歩くのは、半分ずつ」
「私は、どちらでも」
「では、私が先生の隣」
「支援する側が隣を取るな」
『アステラ様』
「私の相手は?」
『旦那様と、第一境界世界のルシア様による継承式打ち合わせを支援してください』
アステラの笑顔が消えた。
「変更して」
『できません』
「私は境界のことを一番知っている。レオンと二人で打ち合わせできるわ」
「支援役にルシアがなるべきだと言いたいのか?」
「そう」
ルシアが困ったように微笑む。
「私は継承式の代表者ですので、説明役を変更できません」
「レオンの隣は私」
「アステラ」
「分かってる。妨害しない」
アステラは俺の腕へしがみついた。
「しがみつくのは妨害ではないのか?」
「一メートル以内にいないと危ない」
『打ち合わせ室の壁を挟んで隣室へ待機してください』
「家!」
『虚無化防止条件を満たします』
「レオンの顔が見えない!」
『音声は聞こえます』
「ルシアの顔は見えるのに!」
『支援役は会話へ参加しないことが条件です』
「厳しすぎる!」
七人が、アステラへ同情するような目を向けた。
敵同士に見えても、苦しみは分かるらしい。
『課題は、明日から順番に実施します』
「一日に一組か?」
『はい』
「八日かかるな」
『七日目に二組行います』
「なぜ」
『一週間で終了させるためです』
「八人いるから仕方ないだろう」
『旦那様の休養日を確保します』
「家が俺の休みを考えた?」
『先ほどの質問により、一週間に一日の休養を希望されていると確認しました』
「寝ていたいとは言ったが」
『七日目は旦那様の休養日とします』
「それなら、課題を入れるな」
『七日目は、全員で旦那様を休ませる課題です』
八人が一斉に反応した。
「全員で?」
セレス。
「先生を?」
ミレイユ。
「一日中?」
リリス。
「寝台で?」
アウラ。
「何もしないよう管理?」
クロエ。
「一緒に寝る?」
ノア。
「最後だけ違う!」
『なお、旦那様を最も快適に休ませた者には、特別報酬があります』
「報酬をつけるな」
「内容は?」
八人が同時に尋ねた。
『旦那様と二人きりで、一日過ごす権利です』
部屋が静まり返った。
「家」
俺はゆっくり壁へ向き直った。
「それは俺の一日だ。勝手に報酬にするな」
『旦那様の同意が必要ですか?』
「当然だ!」
『では、同意されますか?』
「しない」
『報酬を変更します』
「何に?」
『旦那様へ一つだけ、常識的な範囲でお願いを聞いていただく権利です』
「常識的な範囲なら」
「先生」
クロエがすぐに手を上げた。
「常識の定義を」
「結婚、国家譲渡、全財産、同居、身体的接触を強制する内容は禁止だ」
「厳しい」
「当然だ」
「膝枕は?」
リリス。
「俺の同意があれば」
「頭を撫でるのは?」
アウラ。
「その程度なら」
「一日一緒に料理」
セレス。
「予定が空いていれば」
「私の国へ一日来る」
ミレイユ。
「移動可能なら」
「一日修行」
エリナ。
「体力の範囲で」
「一緒に寝る」
ノア。
「禁止」
「常識的」
「俺の常識では違う」
「手をつないで寝る」
「寝る必要がない」
「添い寝」
「言い換えても駄目だ!」
八人は、すでに七日目の休養課題へ意識を向け始めている。
その前に。
明日から七日間。
七人とアステラは。
俺と別の女性との交流を、自分の手で支援しなければならない。
最初は、セレス。
薬花世界のエルフィと俺の、薬草園見学。
「先生」
セレスが俺の前へ立った。
「何だ」
「明日の服装は、私が選んでもよろしいでしょうか」
「どうして」
「薬草園ですので、動きやすい服が必要です」
「それなら任せる」
「それから、飲み物と食事を用意します」
「ありがとう」
「見学経路も確認します」
「頼む」
「エルフィさんが先生へ近づきすぎないよう、道幅を調整します」
「それはするな」
「薬草の中には、男女の感情を高める花もございます」
「本当に?」
エルフィが小さく手を上げる。
「ございます」
セレスの目が鋭くなる。
「すべて抜いてください」
「貴重な薬草です!」
「では、先生へ影響しないよう封印を」
「魔力は禁止だ」
「先生」
セレスが真剣な顔で俺を見る。
「薬草園は危険です。明日の課題を中止してはいかがでしょう」
「始まる前から妨害しているぞ」
「安全確認です」
『教育対象セレス。妨害傾向を確認しました』
「まだ何もしておりません!」
『感情作用を持つ花の撤去を提案しました』
「先生の安全のためです!」
「俺が近づかなければいいだけだ」
「エルフィさんが、誤って先生へ花粉を」
「しません!」
エルフィが必死に答える。
「薬花世界の者として、薬草の扱いには自信があります!」
「本当に?」
「はい!」
「先生を誘惑するつもりは?」
「ありません!」
「少しも?」
「ありません!」
セレスが俺を見る。
「先生」
「何だ」
「私より信用されていますか?」
「話を複雑にするな」
「大切なことです」
「明日は、エルフィを信じて任せる。セレスも余計な妨害をせず手伝う」
「……承知しました」
「できるか?」
「先生が望まれるのであれば」
「本当に?」
「はい」
セレスは笑った。
少し無理をしているようにも見える。
だが、剣を抜こうとはしなかった。
帝国軍を呼ぼうともしない。
それだけでも前進だ。
『明日の課題内容を更新します』
「何を追加した」
『女帝セレスは、旦那様とエルフィ様の薬草園見学を支援し、終了後にお二人の記念写真を撮影してください』
セレスの笑顔が完全に固まった。
「記念写真?」
『はい』
「二人の?」
『はい』
「私が?」
『はい』
「家」
『事実です』
「写真は必要ない!」
俺はすぐに止めた。
「薬草研究の記録として必要です」
エルフィが申し訳なさそうに答える。
「私の世界へ報告するため、レオン様と薬草園を見学した証拠を求められています」
「それなら仕方ないか」
「先生!」
「並んで撮るだけだ」
「二人で?」
「セレスが撮る」
「私が、二人の写真を?」
「課題だろう」
セレスは震える手で、自分の腕輪を見た。
皇帝の力は使えない。
撮影機を破壊することも。
写真を国家機密へ指定することも。
帝国中へ回収命令を出すこともできない。
「分かりました」
セレスは、ゆっくり頷いた。
「先生がお望みであれば、立派な写真を撮影いたします」
その声には、女帝として処刑命令を下す時より重い覚悟が込められていた。
「そこまで身構えることか?」
「私にとっては、世界大戦を止めるより困難な課題です」
「大げさだ」
「では先生は、私とほかの男性が並んだ写真を、笑顔で撮れますか?」
「仕事なら」
セレスの動きが止まった。
「先生」
「何だ?」
「今、少しも嫉妬なさいませんでしたか?」
「相手による」
「相手による?」
「知らない男なら心配はする」
「心配だけ?」
「お前が嫌がっているなら止める」
「私が嫌ではなかったら?」
俺は答えに詰まった。
セレスが、ほかの男と楽しそうに並ぶ姿。
想像すると。
少しだけ胸の奥が落ち着かない。
「……少しくらいは、気になるかもしれない」
セレスの赤い瞳が大きく見開かれた。
「本当ですか?」
「あくまで仮定だ」
「先生が、私とほかの男性を見て?」
「少しだ」
「嫉妬を?」
「その言葉に決めるな」
「家!」
『記録しました』
「記録するな!」
『旦那様は、女帝セレスと他男性との交流に嫉妬する可能性あり』
「可能性だ!」
セレスは、婚姻申請が受理された時より嬉しそうに両手を握った。
「明日の写真、心を込めて撮影いたします」
「急に余裕が出たな」
「先生も私を女性として意識してくださる可能性が確認できましたので」
「一人だけ有利になったみたいな顔をするな」
残る六人とアステラが、俺を囲んだ。
「先生」
ミレイユ。
「私が、ほかの男性と礼拝する姿は?」
「礼拝なら何も思わない」
「二人きりで?」
「内容による」
「先生」
リリス。
「私が別の魔族の雄と、魔界を統治したら?」
「共同統治者として?」
「夫として」
「それは……」
「気になるか?」
「少し待て」
「先生」
エリナ。
「別の男と毎日修行」
「相手がまともなら」
「一緒に汗を流して、食事をして、遠征で同じ部屋に泊まる」
「同じ部屋は分けろ」
「嫉妬?」
「安全の問題だ」
「先生」
アウラ。
「私が別の竜の番になったら?」
「竜族では普通なのか?」
「普通」
「……少し考えさせてくれ」
「先生」
クロエ。
「私が他国の王と政略婚を」
「必要なのか?」
「仮定です」
「嫌ならする必要はない」
「私が望んだら?」
「お前が幸せなら」
「先生は寂しくありませんか?」
「それは」
「先生」
ノア。
「ほかの男と暮らす」
「その男は、天井裏で寝るお前を理解しているのか?」
「理解してる」
「誰だ」
「仮定」
「なら……」
「先生」
アステラ。
「私は、ほかの虚無王と魂を繋ぐわ」
「虚無王は俺だけだろう」
「新しく作る」
「作るな」
「嫉妬する?」
「全員、一度離れろ!」
質問の嵐になった。
八百四十二世界の留学生たちは、目を輝かせながら俺たちを見ている。
教育面談だったはずだ。
いつの間にか、俺まで審査される側になっている。
『新たな教育上の問題を確認しました』
「もう何だ」
『七名とアステラ様だけでなく、旦那様にも嫉妬傾向が存在する可能性があります』
「普通の範囲だ!」
『再更生教育対象へ、旦那様を追加します』
「俺まで!?」
『教育対象、合計九名』
「俺は何をする」
『七名とアステラ様が、ほかの男性と交流する場を妨害せず見守ってください』
食堂が静まり返った。
七人の表情が、少しずつ変わる。
先ほどまで俺だけが、別の女性と交流する課題を受けていた。
今度は逆。
俺が七人と、ほかの男との交流を見守る。
「待て」
俺は家へ言った。
「その課題は本当に必要か?」
『旦那様が七名の自由を尊重できるか確認します』
「七人が望んでいない相手と会う必要はない」
『七名本人が交流相手を選択します』
「誰を選ぶ」
俺は七人を見る。
セレスが穏やかに微笑んだ。
「先生以外の男性と、個人的に交流する予定はございません」
「私もです」
ミレイユ。
「いらぬ」
リリス。
「修行相手なら女性でもいい」
エリナ。
「雄は先生だけ」
アウラ。
「仕事上の会談であれば、毎日行っております」
クロエ。
「男、怖い」
ノア。
「お前は世界中の暗殺者を支配しているだろう」
「先生以外は怖い」
アステラが手を上げる。
「私はレオン以外の男を知らないわ」
「では、課題にならないな」
『交流相手は、八百四十二世界から選出します』
「選出するな!」
『旦那様へ女性との交流を求める以上、公平性が必要です』
「妙なところで公平だな!」
七人とアステラは、互いを見る。
俺を見る。
再び互いを見る。
「先生」
セレスが、ゆっくり微笑んだ。
「私たちが他の男性と交流することを、許していただけますか?」
「お前たち自身が望むなら」
「本当に?」
「無理に止める権利はない」
「嫉妬なさっても?」
「少しくらいは」
「分かりました」
セレスは嬉しそうだった。
「では、先生が最も嫉妬なさる相手を選びます」
「課題の目的が変わっている!」
こうして。
七人とアステラは。
俺と別の女性との交流を支援するだけでなく。
俺が嫉妬するかを確認するため。
八百四十二世界の男性代表者と交流することになった。
そして、その日の夜。
家の壁へ、最初の男性交流候補者が表示された。
『女帝セレスの交流相手』
大きな文字の下に映し出されたのは。
金色の髪。
整った顔。
白銀の軍服。
若く、美しく、いかにも王子らしい男だった。
『第二境界世界、聖騎士王アルベルト』
セレスが男の姿を見る。
興味がなさそうに、一度だけ瞬きをした。
俺も男を見る。
「……随分、顔がいいな」
「先生」
セレスの表情が明るくなる。
「今、気になさいましたか?」
「相手を確認しただけだ」
「嫉妬でしょうか」
「違う」
『旦那様の心拍数上昇を確認しました』
「家!」
セレスが嬉しそうに俺の腕へ抱きつく。
「先生。明日の薬草園見学を、心を込めてお手伝いいたします」
「どうして急に」
「その代わり」
セレスは、壁に映る聖騎士王を見た。
「私とアルベルト王の交流も、最後まで笑顔で見守ってくださいね?」
世界大戦を止めた俺は。
翌日。
教え子に見守られながら、異世界の少女と薬草園を歩き。
その翌日には。
異世界の王と並ぶ教え子を、笑顔で見守らなければならなくなった。
七人の嫉妬を直すために始めた再更生教育は。
いつの間にか。
俺自身の心まで、試そうとしていた。
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