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第37話 初雪前の大口注文
評議の翌日から、共同購入の注文が一気に増えた。
港の商人たちは、辺境伯家の承認が出たとたん態度を変える。分かりやすいが、それでも動くなら使えばいい。私は麦、塩、乾燥肉、毛布の数量を村ごとに割り振り、街道食堂の補給も一緒に組み込んだ。
「こんな量、間に合いますか」
エマが新しい注文束を抱えて目を回しかける。
「間に合わせます」
私は即答した。今ここで断れば、また各村が足元を見られるからだ。
オーギュストが保存食班をまとめ、マルタが食堂の通常運営を維持し、クララは村々の受け渡し係を引き受けた。働く大人が増えた分だけ、仕事の背骨も太くなる。
そこへ悪い知らせが飛び込む。橋修理用の木材を積んだ荷車が、クレッセ領境で止められたという。
「税の未払いを理由にしています」
イザークが報告する。
「なら、逆に好都合です」
私は口元を引き締めた。
「止めた場所、役人名、徴収理由、全部記録しましょう。聴聞の前に向こうがもう一枚証拠をくれたようなものです」
夕暮れ、取り返した荷車が砦へ戻る。御者の手には新しい仮徴収書、荷台には手つかずの木材。相手は焦っている。焦ると、数字は雑になる。
私は木材へ手を置いた。
「初雪までに間に合わせます。街道も、倉庫も」
その約束は、もう願いではなく計画になっていた。




