表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
36/40

第36話 辺境伯家の白い招待状

数日後、真っ白な封筒が砦へ届いた。


 差出人はノルトヴァルト辺境伯家。婚約の正式承認と、街道問題に関する評議への招待状だった。侯爵家にいたころなら震えたかもしれないが、今は違う。怖いのは礼法より、曖昧な数字のほうだ。


 辺境伯邸で迎えてくれたのは、五十代半ばの辺境伯夫人アルマだった。白髪交じりの髪をきちんと結い上げた、目の涼しい人である。


「ヴィクトルの婚約者というより、給養監督官として会いたかったの」


 開口一番それだったので、私は少し好きになった。


 評議の席には辺境伯本人、港の代表、監査院のサビーネ、そして街道沿いの村長たちが並んでいた。私はクレッセ男爵領の通行税と港の横流し記録を、順に机へ置いていく。


「問題は金額だけではありません。徴収した費用が橋や倉庫へ回っていないことです」


 サビーネが続けた。

「監査院としても、正式な聴聞を開くに足る証拠と判断します」


 辺境伯が指を組む。

「婚姻前に、随分大きな仕事を持ち込んだな」


 私はまっすぐ答えた。

「婚姻前でも後でも、兵は食べます」


 一瞬の静寂のあと、辺境伯夫人アルマがくすりと笑った。

「気に入ったわ」


 その場で聴聞の日が定まり、クレッセ男爵家への出頭命令が出た。さらに、婚約も正式に認められる。


 帰り際、アルマ夫人が小さく言った。

「花嫁衣装の心配はなさらなくていいわ。あなたは立ち方を知っているもの」


 私は礼をした。飾りではなく、立ち方を見てくれる人がいる。その事実が思った以上に心強かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ