表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
32/40

第32話 冬支度の家計簿

春のうちに冬の数字を作る。それが辺境では当たり前だ。


 私は街道沿いの村々を回り、麦、豆、薪、毛布、薬草の必要量を聞いて歩いた。去年の消費量だけでは足りない。今年は臨時食堂が増え、行き場を失った使用人たちの雇用も始まっている。


「早すぎませんか」


 若い会計兵が訊く。私は首を振った。


「冬は来てから計算しても遅いの」


 村ごとの表を並べていくと、はっきり見えた。クレッセ男爵領の通行税が続く限り、どこも備蓄を厚くできない。逆に言えば、そこを止めれば冬は越せる。


 昼、クララの家で薄いスープを飲みながら、私は共同購入の提案をした。


「各村が別々に少量を買うから足元を見られます。砦がまとめて契約し、必要量を割り戻しましょう」


 クララが目を丸くする。

「そんなこと、今まで誰も」


「やっていないなら、やるだけです」


 夕方までに、三つの村が共同購入へ乗った。エマが新しい台帳を書き、ヨハンナが港での保管スペースを確保し、イザークが輸送順を組み直す。


 数字が積み上がるたび、私は確信する。これは食堂ひとつの仕事ではない。辺境の家計そのものを黒字へ戻す仕事だ。


 砦へ戻るころ、ヴィクトルが私の馬の手綱を取った。


「顔が満足そうだ」

「冬に勝てる形が見えてきました」


 彼は頷く。

「では、街道にも勝つか」


 ええ。今度は道のほうを、ちゃんと会計する番である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ