表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
12/40

第12話 侯爵家の穴だらけの帳簿

祭りの翌朝、砦へひっそりと入ってきた荷馬車があった。


 御者台から降りたのはエマだった。久しぶりに会う彼女は頬をこけさせていたが、目だけはしっかりしている。


「無事でよかった」


「そちらこそ」


 彼女が抱えてきた木箱には、侯爵家の古い帳簿と契約書の控えが詰め込まれていた。


「旦那様、最近は焦っていて、書庫の管理まで雑なんです。奥様が前に探していた北向けの仕入れ分、やっぱりありました」


 私はすぐに机へ向かい、砦の伝票と並べた。


 数字は嘘をつかない。隠そうとしても、使った金は痕跡を残す。


 侯爵家の帳簿上では、北向けの塩と麦に支出がある。だが実際には、その一部が王都の宝飾店、香油商、そしてセリーヌの借りた新しいサロンの賃料へ流れていた。名目だけ変えて、同じ金を何度も回している。


「軍需金まで食い込んでいる……」


 思わず声が漏れた。


 レナードは、自分の屋敷の赤字を埋めるために辺境の腹を削っていたのだ。


 怒りより先に、呆れが来た。そこまでして守りたかったのが、愛人の見栄と自分の体面なのか。


「証拠になりますか」


 不安そうに訊くエマへ、私ははっきり頷く。


「十分すぎるくらいに」


 そこへヴィクトルとイザークが入ってきた。帳簿を見たヴィクトルの表情が冷え切る。


「兵の食糧を横取りして、王都で遊んでいたわけか」


「しかも、侯爵家の不足分まで埋めていたようです」


 イザークが低く唸った。


「これ、王都監査院に回せるな」


 私は頁を揃えながら言う。


「回しましょう。今度こそ、途中で抜かれないように」


 エマが持ってきたのは帳簿だけではない。侯爵家を出る前に失ったものを、証拠の形で取り戻してくれたのだ。


 もう、見て見ぬふりはしない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ