松ヶ崎久万吉
「何やら気持ちが高まるのぉ…」
と、高信様はワクワクモードになってきていた。
「でしょう。儂もショーゴの話を聞くたびに、こう、ワーっと暴れとうなります」
石花様もハイテンションだ。
その後も、◯俺のやりたいこと をとうとうと語り、二人のワクワク感を高めて、翌日は松ヶ崎へ…
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松ヶ崎港
平安、鎌倉時代の佐渡の表玄関である。
「羽茂の若様がわざわざ来やるちゃあ、何事かいな」
船大工と言うより、いかにも海賊の頭目然とした男が言った。
「お主が久万吉か」
高信様も面識がないらしく、そう聞くと、
「いや、ワシはもう引退した。今はコイツが松ヶ崎久万吉じゃ」
と、横にいた小さいが壮健そうな若者を押し出した。
「久万吉だっちゃ。よろしゅうに」
どうやら「久万吉」の名は襲名して引き継がれるものらしい。
俺は、いつものように久万吉と元久万吉(今は王仁吉と名乗っているらしい)に名刺を渡して、
「船をジャンジャカ作って、乗り手も育てて欲しいのですが…」
と、久万吉、王仁吉どちらに言うともなく俺が言うと、
「ジャンジャカか」と王仁吉が、
「ジャンジャカとはどのくらいだっちゃ?」久万吉が聞き返してきた。
「越後の柏崎に水軍がおりますでしょう」と、俺。
「おるのお…」と、王仁吉。
「北の方に行けば安東水軍が…」と、俺。
「おるのお」と王仁吉。
「南に行けば尼子の水軍が…」と、俺。
「ふん、それはよう知らん」と王仁吉。
「親父、対馬に行くまでに、隠岐のへんかの… 今一番強ええ海賊らがおるよ。多分奴らじゃ」と久万吉が言った。
「その海賊ら… ぃや、水軍らと争う気はないのですが、対等に仲良くしたいので、それなりの船と乗組員を揃えて欲しいのです」と俺。
「はぁ、そらまた、えろう時間とカネがかかろうもんちゃ」と王仁吉。
「カネはかけてもらってもいいのですが、時間はできるだけ早くお願いしたいですね」と俺。
そして俺はここでもスマホを取り出して、船の画像を見せる。
その中の小型のガレー船(ガリオット船)の画像を指さして、
「こんな三角の帆の船が造りたいですね。帆で風をつかんで、櫂でも漕げるように… こんな船で、まずは蝦夷から博多まで… いずれは蝦夷のさらに北の樺太から南は琉球、台湾(高砂国)まで行き来したいのです」
と言った。
「おぉ、こりゃぁかっちょええだちゃ」と久万吉。
「琉球は聞いたことあるだが、カラフトちゃあどこちゃね?」と王仁吉。
俺は今度は地図アプリを開いて、樺太から台湾までが見えるくらいまで親指と中指を何度か縮めた。
「おぉ!」
「おぉ!」
「何じゃ何じゃ?」
久万吉と王仁吉が「おぉ、おぉ、おぉ、おぉ」と驚いているので、ゴローザとムコどのもスマホを覗きにきた。
「ここが佐渡です」と俺。
「何じゃ、小せえのぉ」とムコどの。
俺は親指と中指をちょっと広げて佐渡を形がわかるくらいの大きさに拡大した。
「これです」と俺。
「おっ、この形じゃ」
「確かにこの形じゃ」
さすがは海の男だ。
久万吉と王仁吉が地図アプリの佐渡島の形と自分の頭の中の佐渡島の形を一致させた。
「ここらが松ヶ崎か?」と久万吉。
「そうです。で、こっちが越後です」と俺。
「だち、これが能登か!? これゃすげぇの」と王仁吉。
「おいおい、ショーゴ、この地図書き写せ。その佐渡がデカいのと、前の佐渡が小さいのも」と高信様。
「そりゃあワシも欲しいぞ」と王仁吉。
「さっきの三角の帆の絵もくれ」と久万吉。
「紙はありますか?」と俺が聞くと、
「いや、今はねえなぁ」と王仁吉。
「高信様、城に戻れば紙はありますか?」と俺。
「あぁ、あると思う」と高信様。
「では、戻って書きましょう。今は、まずこれで見てください」
と言って俺はもう一回地図を縮めて、
「ここが佐渡で、ここが蝦夷です」と北海道を指さす。
「蝦夷、デカいのぉ」と久万吉。
「で、さらにこの北の縦長いのが樺太です。で、南に行って、ここが関門海峡、なのでここが博多ですね。で、これが朝鮮です。こっち側が全部、明で、ここらが琉球、ここが台湾です」
俺の地図の説明を、久万吉、王仁吉、高信様、石花様も「ふんふん、ほうほう…」と聞き入っていた。
地図アプリって、電波なくても使えるよね?




