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若狭の今後の指針を言い渡す

 引き続き後瀬山城評定の間


「新公方様の上洛には、能登の畠山様、越後の上杉様、こちらにおられる越前の朝倉様、そして執事にご指名されました六角様も同道いたしまして、上洛後には河内の畠山様、丹波の波多野様、播磨の小寺様も参内され、朝倉様と畠山様、波多野様、小寺様が新たな四職として、侍所所司を担っていただくことになっております」と俺。


「うーむ、さようか…」と武田信豊。


「新公方様はここのところ内乱の絶えない若狭のことを慮(おもんばか)り、今回の「若狭平定」の御内書を発せられました」と俺。


 固唾をのむ会場の一同。


「若狭におきましては、守護職の武田信豊様には家督を嫡男の義統様にお譲りいただきご隠居ください…」と、俺が話していると、


「家督に口を出されるのか!?」と武田信豊が話を遮ってきた。


「まだ、話の途中ですが、聞かれますか? それとも幕府の言うことには耳を貸さないとお考えですか?」と俺。


 しばし沈黙の後、


「いや、伺おう」と、武田信豊。


「では、続けます。

 義統様が家督を継がれてから直接ご上洛の上で公方様にご報告いただくか、家督相続の報告の使者をお立てください。

 新公方様が義統様をあらためて若狭守護職に任命されます。

 この場にお集まりの皆様方は新たな守護のもと、新公方様、幕府、延(ひ)いては朝廷のためにお尽くしください。

 なお、その間は朝倉様が若狭守護職を兼任されます…」と、また話の途中で、


「守護職を奪うつもりか!?」と武田信豊。


 俺が黙って武田信豊の方を見続けていると、後ろから、


「使者殿、申し訳ござらん。話を続けてくだされ」と武田義統が言った。


「では、続けます。

 信豊様がご隠居された後にどうなさるかは、特に何も申しません。

 仏門に入られるも、義統様の後見として執政をとられるも、そこはお任せいたします。

 ただし、家督相続争いでお家騒動を起こされるようでしたら、そこは即座に干渉いたします。

 現在、小浜の港に港湾施設を建設中です。

 今後、小浜の町は自治都市といたします。

 ご安心ください。

 その運上金は今までどおり、若狭守護家に納められます。

 今の小浜は、以前の繁栄からみてひどい有様です。

 今後の立て直し次第で、以前の賑わいを取り戻せるでしょう。

 ご列席の皆様、くれぐれも若狭の立て直しの足を引っ張るようなことはお避けください。

 以上です」


 と、ここまで言い、何やかやと質問が飛んでくるかと信豊様様子を見ていると、誰も何も言わなかった。

 なので、「では、」と席を立とうとすると、その時にやっと武田信豊が聞いてきた。


「あ、いや、待たれよ。もし、家督を譲らず、新公方様に挨拶に行かなければどうなるのじゃ?」と武田信豊。


「それは、今、仮に若狭守護を兼任されておられます朝倉様が、そのまま若狭守護になられます」と俺。


「ぬう…」と武田信豊。


「信豊様、俺達は陣に戻りますが、よろしければ義統様を陣にお預かりいたしましょうか?」と俺がきくと、


「それには及ばぬ」と、信豊はしばらく考えてから答えた。


 俺、朝倉延景、上杉実虎は席を立ち、後瀬山城から丸山の陣に戻った。

 一緒に登城した沼田光兼と内藤勝高は城に残った。


「平定軍などと偉そうに言うておるが、1000か2000の兵じゃろう。たたき返したらどうじゃ」と逸見昌経。


「細川晴元様が亡くなったとあっては、まだ京は不安定じゃろう。新公方様の御内書など効力はあるまい」と熊谷勝直。


「しかし、三好が下についたと言うておったぞ」と武田義統。


「どこまで本当のことかわからんぞ」と武藤光家。


「このまま、はいそうですかと言われるがままに受け入れることはあるまい。すぐに全軍を挙げて平定軍なんぞ討ち滅ぼしてくれようぞ」と逸見昌経。


「いや、それでは幕敵、朝敵になってしまうぞ。あの官軍の旗を見とらんのか?」と内藤勝高。


「新公方様の上洛軍は、京では大歓迎されたと聞いておる」と沼田光兼。


「今回、朝倉を追い返しても、朝敵認定されて三好や波多野までこられては面倒じゃ」と武田信豊。


「朝倉が欲を出して若狭を手に入れようと、新公方様に御内書を書かせただけじゃろう。朝倉を倒せば、他は攻めて来ないに決まっておるわ」と熊谷勝直。


「しかし、家督を譲って挨拶に行けば、新たに守護職を獲られるのなら、何も争わずともよいかも知れん。その後も後見に立ってよいと言っておるし」と武田信豊。


「何を弱気な! そんなことでは皆ついていきませんぞ」と逸見昌経。

俺達が陣に帰った後、


「勝手に港に施設を作るとは」


とか、


「見張りをつけられるのは許せん」


とか、


平定軍と戦う方向に話が進んでいった。

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