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援軍到着

 南から唐丹に向かう街道は、山の縁、海沿いにある。

 左が山か森で、右は海までの瓦礫だったり、海と山の間で少しでも畑にできそうなところは畑になっている。

 街道が両葛西軍で埋まっているので、砦に向かう投降兵は山側の木の間を抜けて行くか、海側のゴツゴツの岩場を行くかだ。

 いずれにせよ怪我人には足場が悪すぎる。

 かなりの人数が街道からこぼれたが、怪我人はなかなか砦までは到着せず、怪我をしてない投降者が砦の方にたどり着いて来た。


 一番砦側には晴清方の葛西家の家臣らがいるので、そいつらが投降者を斬ろうとした。


「おい、そこのやつら! 投降者に手出しするな。晴清の首が飛ぶぞ!」


 と、アダッチが櫓の上から言うと、家臣らは刀を納めた。

 家臣らが手を出さないと見ると、さらに半分くらいの領民兵が砦に向かいはじめた。

 こうなると、普通に街道を歩いて砦の中に入って来れるようになった。


 死者と投降者続出で小康状態になった街道を、晴胤方の指揮官が交渉用の陣幕の前まで来た。

 大槌広政と狐崎玄蕃とアダッチは櫓から降りて晴胤方の指揮官に交渉の意思はあるのかと声をかけた。


「貴様ら、富澤殿を監禁しておろう! すぐに解放せよ!」と晴胤方の指揮官らしき侍。


「よし、交渉の意思なしとみなす」とアダッチ。


 そう言うと、大槌広政、狐崎玄蕃とアダッチは再び櫓に登った。


「待て、貴様ら!」


 と晴胤方の指揮官(らしき以下省略)は、交渉用の陣幕を避けて投降者が駆け込んでいる砦の入口に、騎乗のまま刀を抜いて向かった。

 後に晴胤方の武将達も続こうとしたが、先頭の指揮官がクロスボウで肩を射たれて落馬した。

 馬だけが砦の中に入ってきたので、この馬はありがたくいただく。


「投降者は武器を捨てて砦の中に入れ! 武器を持って近づく者は射つぞ!」とアダッチ。


 先行した指揮官が射たれて、晴胤方の葛西軍は一旦とまった。

 指揮官は生きてはいるようだが、落馬の衝撃で意識を失っているようだ。


「投降者に手を出したら晴清の首が飛ぶ」と言う叫びが頭に残っていた晴胤方の武将の一人が、機転をきかせたつもりで投降者に斬り掛かった。

 あらためて声がかかることはなく、砦から数本のクロスボウのボルトが、その投降者に斬り掛かった武将を貫いた。


「双方の葛西軍同士で斬り合うのは止めはせん! しかし、投降者とこちらの砦に対して攻撃の意思が見えたら、躊躇なく攻撃する」


 と櫓からアダッチ。


「石巻方とはすでに交渉済みじゃ! 登米方にもう一度だけ問う。交渉の意思があるなら、きちんと礼節をわきまえて交渉の場に挑まれよ。三名の代表者が武装を解除して陣幕に入られるなら交渉の席につく。まずは白旗を掲げられよ」


 とアダッチがさらに続けて言った。

 半刻ほどして白旗が揚がった。

 晴胤方の三人は大原胤重(おおはらたねしげ)、三田重明(みたしげあき)、黒沢繁道(くろさわしげみち)が陣幕内に来た。

 三人に晴清方と同条件を告げる。

 引き渡しの条件は晴清に100貫文、そしてこちらは富澤義綱に10貫文だ。


「今から戻って銭を用意しても、向こうの方が早いじゃろう」と三田殿。


「それは、大人しく銭を用意してきて、大人しく銭を渡して、大人しく引き渡しを受ければそうでしょう」とアダッチ。


「と言うと?」と黒沢殿。


「今の条件をきいて、ご自身がどう思ったかと言うことです。まず第一に貴方がたは我々を侮っています。さらに下に見ています。その態度では交渉は成立しません。きちんと礼節を持って、対等な立場で取引をした方に人質の身柄は引き渡します。

 少しでも大柄な態度をとったり、不誠実な真似をするようなら交渉決裂です」とアダッチ。


「ふん、そちらこそ随分と態度が大きいのではないか?」と大原殿。


「ほらね、下に見てるでしょ。はっきり言っておきますよ。両葛西軍が合同で攻めて来ても、この砦は抜けませんよ。そもそもの認識をあらためてもらわないと。晴清殿の身柄は諦められるのならば、富澤殿の10貫文だけでもご用意なされよ。富澤殿は他家に交渉人としてきて、城内で抜刀しようとした重罪人です。こちらからは以上です」とアダッチ。


 登米(晴胤方)の葛西軍は一旦引き上げて行った。

 翌日になっても石巻(晴清方)の三人は帰って来なかったので、石巻の葛西軍も引き上げた。

 両軍が引き上げた後に、怪我人とそのまま唐丹に残るつもり以外の投降者も各々帰って行った。

両葛西家からの次のアクションの前に佐渡からの援軍が到着した。

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