葛西軍と葛西軍がゴッツンこ
「その、目安と言うのはどのようなことじゃ?」と柏山明吉が聞いてきた。
「唐丹は頂きますが、これ以上領地を割譲せよとは申しません。
そうですな…
平時なら1000貫文、少なくとも500貫文と言うところでしょうが、ここのところの飢饉に、さらに乱の最中とあらばそうも言えますまい。
ご当主様に100貫文、熊谷様に10貫文ご用意ください。
えらい安く見積もったなどと怒らないでくださいよ。
そちら様の懐具合をおもんばかっての提案ですので…」とアダッチ。
「むぅ…」と千葉長門守。
「よし、わかった。追って届けさせるゆえ、すぐに二人を解放されよ」と水沢景宗。
「いえいえ、もちろん先に銭をお持ちください」とアダッチ。
「葛西家を信用できんと申すのか?!」と水沢景宗。
「少々偉そうですね…」とアダッチ。
「あ、いや、すまん、そのようなつもりではない」と水沢殿。
「今、お持ちでないなら大急ぎでご準備なさいませ。すぐに登米も来ますよ」とアダッチ。
と、何やら陣幕の外が騒がしくなり、
「申し上げます」とスコップ隊員が一人幕内に入ってきた。
「どうした?」と狐崎玄蕃。
「葛西軍後方で諍いが始まっております。おそらく登米の葛西軍が来た模様です」とスコップ隊員。
「何っ!?」と柏山、水沢、千葉のお三方。
「来てしまいましたな」とアダッチ。
「待て、すぐに銭を用意して持ってくるゆえ、殿を奴らには引き渡すな」と柏山殿。
「偉そうですね」とアダッチ。
「あ、いや、引き渡さないでくだされ。お願い申す」と柏山殿。
「110貫文、お持ちいただけるまで約束はできません。登米の方々にも同じ条件を話します。早くお持ちいただいた方に晴清様はお引渡しいたします」とアダッチ。
「ええい!」と3人は陣幕から出ていき、
「皆のもの、晴胤の軍を大槌らに近づけさせるな」と言ってから、街道に並ぶ軍列の横を馬で駆け抜けて、金策のために城に戻って行った。
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晴清軍の後方には、やはり晴胤軍が来ていた。
兵数はこちらも5、600といったところだ。
まさにお家騒動中の両軍が街道で鉢合わせしたのだから、当然戦が始まる…
かと思ったら、両軍とも事態が理解できていないため、なんだナンだと小競り合い程度で見合っている。
そこに
「皆のもの、晴胤の軍を大槌らに近づけさせるな」
との声がかかり、軍列の横を柏山、水沢、千葉の三氏の馬が駆け抜けると、晴清軍の最後方が
「おお!」
とばかりに斬り掛かっていった。
それを合図に両軍が街道と、その周りの森の中で斬り合う。
矢も飛び交って、あっと言う間に両軍ともにかなりの死傷者が出た。
アダッチと大槌広政、狐崎玄蕃は砦に作っていた櫓に登り、街道の先の方の両軍の衝突場所を見ていた。
「ありゃあ、いきなり狭いところで終盤の白兵戦が始まってしまったみたいじゃの」と大槌広政。
「このままでは両軍ともジワジワと全滅するんじゃないか?」と狐崎玄蕃。
斬り合い、突き合いしているのは最前線だけだが、次々と兵が倒れて後ろの者に踏みつけられている。
お互いが倒れて踏まれる順番待ちの行列のようだ。
するとアダッチが大声を張り上げて言った。
「おーい! 怪我人はここまで来い!どちらの兵でも武器を持ってなければ手当てしてやるぞ」
何人かが振り返った。
「怪我人はここまで来い!どちらの兵でも武器を持ってなければ手当てしてやるぞ」
アダッチが繰り返し大声を張り上げた。
さっきより多くの者が櫓の方を見ている。
何人かが自力で櫓の方に向かったり、怪我人に肩を貸して連れて行こうとしたりした。
「怪我してなくても、武器を捨てて投降してくれば砦の中で匿ってやるぞ!」
この叫びには最前線にいた者が敏感に反応した。
「武器を捨てて投降して来い!飯も用意してやる」
死にたくない領民兵が列からこぼれて、街道の横の畑の畝や、森の中を転がり走って櫓の方に向かい出した。
絶対にこっちの方が「天文の乱(唐丹編)」だね^^;




