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唐丹占拠

 富澤義綱は投獄して、50人の手勢は帰した。

 大人しくちゃんと話ができる交渉人が来るか、それとも軍を率いて来るか…

 葛西晴清と一緒に捕らえていた五人のお付きも解放した。

 こちらも晴清方に帰って、何らかのアクションを起こすだろう。


 気仙沼の方から海岸沿いに北上して来ると、ちょうど唐丹で街道がさらに海岸沿いに釜石に向かうルートと、内陸に遠野に向かうルートに分かれる。

 唐丹を獲ってここに砦を築けば、南からの陸路の行軍は防げる。

 現在(いま)は緊急事態で、貴重な鉄鉱石採掘時間を割いて砦づくりをしている。

 どうせ作るなら、今みたいな仮の砦ではなく、唐丹にちゃんとした砦を築きたい。


 そんなわけで大槌、釜石で徴兵して、鉱山労働者兼スコップ部隊と合わせて1000人弱(850人くらい)の軍で唐丹に向かった。

 唐丹には千葉氏の唐丹城(館)がある。

 が、千葉長門守をはじめ、ほとんどの者は気仙高田の東館におり、唐丹は進軍と同時に占拠出来た。

 すぐお隣の唐丹の村人はみんな、釜石で何かしら働いている。

 漁師はフカヒレ工場に魚介を売りに来るし、年頃の娘は花を売りに来る。

 そもそも釜石に引っ越してフカヒレ工場で働いている者もいるし、スコップ部隊の中にもこの村出身の者もいる。

 千葉領から大槌領に変わっても、村人としては何ら変わらない。

 むしろ歓迎ムードだ。


 1000人弱の軍は、1000人弱の人足になって、突貫で唐丹の南の街道沿いに砦を築く。

 唐丹城(館)の場所では、唐丹の村は守れない。

 だいたいこの頃の日本の城は、町や村や領民を守ると言うことを考えていない。

 籠城したら町や村は荒らされて、略奪されて凌辱される。

 町や村を守るなら、町や村の手前に砦を築かなければ意味がない。


 どちらの葛西が来るかわからないが、砦の手前に陣幕を張って、交渉の場を作っておこう。

 と、最初に来たのは千葉氏だった。

 まぁ、隣だしね。

 兵数は100ほど連れて来ていた。


「お主らここで何をしているか!」と、先陣を切って馬を走らせてきた侍が怒鳴った。


「話し合いはこちらで。3対3でいたしましょう」と、アダッチ。


 なんやかんや、すったもんだして、こちらのスコップ部隊をゾロゾロと整列させると、千葉氏は話し合いの席にはつかずに帰って行った。


 次に来たのは、晴清方の葛西軍だった。

 兵数は5、600(ごろっぴゃく)人。

 千葉氏も一緒に来ていた。


 今度もすったもんだしたが、3対3での話し合いが始まった。


「まず、最初に言っておきます。絶対に偉そうな態度をとらないように。こちらはかなり堪忍袋の緒が切れかかってますから、少しでも偉そうな態度をとったら、捕らえている者の首が飛ぶと思って言葉を発するように」とアダッチがいきなりぶちかました。


「なっ、ぐっ… む…」千葉長門守が何か言いかけてぐっとこらえた。


 向こうの3人は、柏山明吉(かしやまあきよし)、水沢景宗(みずさわかげむね)、それと千葉長門守だ。


「まずは、ここ唐丹は我々が接収しました。

 これは別件で捕らえた登米の富澤義綱殿との交渉事なので、そちらとは関係ございません。

 返すつもりもございません。

 その上で、我が領内で狼藉をはたらいたそちらのご当主と、我が城内で抜刀して暴れようとした熊谷直宗殿を拘束しておりますが、いかがなされますか?

 返還をお望みならばそれなりの誠意をお示しください。

 こちらはその狼藉者を処罰できる立場なのだと言うことをご理解ください。

 ちなみに登米の富澤殿がご提示なされたのが、ここ唐丹です。それに対してこちらが検討するとしたところ、無理やり晴清殿らを連れて行かれようとしたため、富澤殿は拘束されました。

 そちらからのご提示がないようでしたら、一応の目安は提示しますが、どうされますか?

 なお、登米の方からも引き渡しの話が来ると思われますので、よくお考えくださいね」


 採掘作業を止められてイライラしているアダッチが、ここぞとばかりにまくしたてた。

捕虜の身代金の相場ってどれくらいかな?

当主クラスだと1000貫くらいいくのかな?

その前に自害するから、そこまで高くならないか?

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