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第〇〇六一話 クラサビ◆侵入者とお手つき現場

 五人ほどに配分が終わったとき、あらかじめラゴンと打ち合わせ済みの、落選者返還プロジェクトをお願いした。


 後五人吸血したら、その十人でスーツケースを王都の外にいるエリートのところまで、運ぶ仕事を行なわせる。一応、鹿車で一時間はかかる、人気のほとんどない場所なので、何が起こるかわからないと、主様から多めの人数を指定されていた。

 スーツケースを運ぶとなると、カマールだけで飛んだ未明のようにはいかない。自分より巨大な(かばん)を、カマールが持って行くのは奇異にうつるだろう。人の姿で行った城壁で、何人かが城壁の衛士の気をひきつけ、その隙にカマールとして外へ出た仲間にケースを渡す。衛士の警備が緩いようなら城壁まで登って落としてもよいし、見ていないところで放り投げるくらいであろうか。

 後は衛士をごたごたなく振り切り、カマールとして脱出、全員で歩いて届けてきてほしいというものだ。ある意味できたての親衛隊による、チームワークの確認、慣らし運転といった感じの仕事となるだろう。後のメンバーとの合流は、再度自分に連絡を取ってもらえるよう指示しておいた。


 九人目がなかなか出てこないためしぶしぶ透視すると、ラゴンが押し倒されている。相手は仲間内では、ことさら頑丈で、腕力にとくに自信のある、8450 ── ヤスコだ。血を吸われたラゴンが、力負けしたのかまんざらでもないのかは分からない。

 だがその様子に気づいて透視した数名が、自分と一緒にドアをけ破るように押し入り、ヤスコを主様から引っ剥がした。以降は二人一組で吸血を行なうルールになり、一応同室した一人は後ろを向いているようルールづけておく。



 ヤヨイが補充できたので、同時に終わったハツナも一緒に加え、十一人にお願いすることにした。

 窓から出したスーツケースを、先ほどの失態の罰ではないものの、カマールになった力持ちヤスコが釣り下ろす。もちろん下でクロスたち数人がそれを受け取り、さっそくカマールの取り巻きをつれて出発した。城壁まで人の姿で行くのは、三人程度でいいと伝えて送り出す。

 その後残っているのは、ミツまで十一人だ。ほどなくナオコ、ナオミと順調に吸血が終了し、部屋から出てきた。この後も魔力が回復した()を、これ以上ここに止めておく必要は無い。順次主様との打ち合わせ通り、カマールに戻してロノウエ探索の任につかせていく。ある程度の魔力さえあれば、日光の(もと)でも大丈夫だからだ。ナオコとナオミもすでに心得ており、カマールに変化して窓から飛び去った。



 ナオコがベッドルームから出てきたのと交代で、最後の一人になったミツ。心細そうに自分のほうを何度も振り返りながら、ベッドルームに向かった。やせ細った体の貧相さとみすぼらしい服装は、さながら売られて行く農奴の娘にも見える。

 待っている間に髪は梳かし、顔も拭いてあげた。けれど彼女の魔力が足りないので、服だけは魔力回復に依らなければならない。やせ細った体も、魔力が戻れば少しはなんとかなるだろう。王国では醜女(ブス)の代名詞とも言われる、黒目黒髪(プレナニグロ)はどうしようもないが。

(実際あたいも、赤毛だけは変えられないからね。クロスも目のイロハ赤いままだし。0032 ── ミツも髪や目はどうしようもないのかしら。でもダブルオーを落として、あたいや仲間たちのほうを選んだ主様だから、見かけは気にしないかもね)

 だいたい、たまたま拾ったオートマトンであり主様の趣味ではないとはいえ、ラゴンだってストレートの黒髪に黒目だ。

 まあ、魔王城(ディアボリオン)ではミツも、あれほどの美形だったのだから、少しくらい控えめな部分があってもいいだろう。クラサビはそのように考えて、ミツの将来におぼろげな希望を感じた。

 満足そうに舌で唇を嘗めながらナオミが出てくると、カマールに姿を変え飛び立っていく。後は自分たちとは対人間比魔力保持容積(キャパシティ)が桁外れの、ミツの吸血を残すだけとなった。

 自分は十分な魔力をもらっているし、王城に戻ればラーゴさまから直接吸血できる身だ。どうも終わるのだけを、背中越しに確認するためだけに入室するのは躊躇(ちゅうちょ)され、自分はこちらで一人、待つことにした。


 一人でイチャイチャ椅子に腰かけ、しばらく時間を過ごすクラサビ。それからかなりの時間が過ぎ、いくら対人間比魔力保持容積(キャパシティ)が巨大とはいえ、一人分には少し長すぎないかと心配になり始めた。またも魔族的な覗き見根性が首をもたげたとき、なにかの音が近づいてくる。複数人、それも体重の重そうな男たちが階段を上り、廊下を迫ってくるのが判った。

「ここだな、よし開けろ」

(え?)

 ドアが外から、鍵で開けられようとしていた。事態が呑み込めないが、これは問題発生に値する。仲間なら種族間感応通信(ウィップライン)で知らせるところだが、ラゴンと自分の間にあるのは、一方通行の血のつながりだけだ。

(ナオコがいればよかったのに)

 ほかに方法はないと思ったクラサビは、瞬間に奥のドアに駆け寄り、ベッドルームに足を踏み入れた。


「エーッ!」

 そこはそこで、たいへんなことが起こっている。全裸になった、いや太ももから下は毛布が掛けてあるものの、一糸まとわぬミツ。 ── それも先ほどまでのミツではない。ウイプリーらしい魅力的なラインに包まれた、挑発的な裸身がうつ伏せに横たわる。しかもその腰の下あたりまで、上半身裸のラゴンが唇を這わせていた。

 挿絵(By みてみん)

「いや、ごめん、これは ──」

 ラゴンが自分を見とがめ、焦って言い訳しようとしている。しかし主様が(しも)べに手を出すなんて当然といえた。クラサビは必死で、自制心をかき立てる。

(主様がだれに手を出しても、あたいごときが怒っちゃいけない!)

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