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ゆるキモトカゲは分相応な夢を見る~ファンタジーな異世界は思い込みと勘違いでできたミステリー~ 1  作者: 哀岬 ふうか(Hoooka Aisaki)
第四章 思い違い篇 弐日目の夜間作業 後編
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第〇〇四一話 絶対服従のウイプリー9037

 カマールは、どうも落下したショックなのか疲れているのか、あまり元気がない。そこでオートマトンに、窓から小屋の中へ入れてもらって話すことにした。


「こんばんは、きみはウイプリーさんかな。ボクとの連絡役なんだよね」

「あぁ、あたいはウイプリーの9037だよ。ごめんね、偉い方みたいに、丁寧な話し方とかできなくってさ。あたいは総大将(ジェーネラル)・クアドラプルからの命令を受けてここにいたんだ。なにもないと思うけど、日替わりで中庭の様子を知らせろって言われてる、ただの見張りさ」

「ああ、そうだったんだね」 聖泉(ホリフォンズ)がある限り、此方(こちら)からの連絡は困難と思ったのだろう。その当番に対し、『連絡役』としての指示まではでていなかったようだ。「ボクは、だれかわかる?」

「わが主様、だよ。それくらいは知ってるわ。あたいが最初に見つけたんだから」

「え、そうだったの?」

「嘘じゃないわ。主様がこの城に運び込まれたのをあたいが見つけなきゃ、ここに主様がいるなんて、だれも知らなかったと思うよ」 そう言ってからカマールは、モゾモゾ動いて続ける。「主様、あたいの縛り、ほどいてもらえますか? あたい、逃げたりしないから」


(─ あぁ。小さい結界(オービチェ)で、動けないよう縛ったままだったね)

「ごめんごめん‥‥」 と言いながら、結界(オービチェ)を解除すると、カマールは文字通り、羽を伸ばしたが、そのまま足も延ばしてへたり込んだ。「え、どうしたの?」

「ごめんよ~、夜明けで交代なんだけど、昨日から何も食べてなくってさ。大丈夫だよ。交代したら、血を吸いに行って元気になるからさ。だからごめんね。主様の前でこんな格好で。 ── ひれ伏してると、思ってくれる?」

(─ いや、どう欲目に見てもグロッキー状態だ)


「う、うん ── 。かまわないけど、少し教えてほしいことがあるんだ。いいかな?」

「ああ、何でも答えるよ。主様に絶対服従が、あたいたちの使命だからさ」

 なんとも、やる気も元気もない返事だった。だが、絶対服従とは驚きである。ウイプリーは虫とはいえ、かなり厳しい組織のようだ。

「いや、そこまで求めてないけどさ。ウイプリーで一番偉いのは、大智者って言われる伯爵様なんだよね?」

「違うよ。ロノウエさまはあたいたちの支配者さ。たしかにすごい智恵と知識の持ち主で、そら恐ろしいくらいのお方なんだって」

「あ、カマールじゃないんだ」

「カマール? ロノウエさまが? ハハハ‥‥」 笑い声もお腹がすきすぎて力も出ないようだ。「あたいたちだって、別に好き好んでカマールでいるわけじゃないよ。そりゃ百番隊のメンバーは、カマールとしてあたいたちを産んだって話だけど。あたいなんて生まれながらのウイプリーだよ」

「え? ウイプリーって、カマールの一種とかじゃないの?」


「アー?」 いささか態度が悪い、おなかが空いたからだろうか。表情はわからないが、顔が(ゆが)んでいる声にすらきこえる。「カマールは虫でしょう、主様!」

「じゃ、じゃあウイプリーは虫じゃないの?」

「ウイプリーわぁ! 血を吸うのっ。今は、主様のお力になる前に犬死にしちゃいけないからって、クアドラプルが全員に指示してるので、人には行かないけど。本来、人間の血を吸えるんだったら。そしたらこっちの都合にもよるけど、たかが人間なんて、たいへんなことになるんだから! 偉いのよ! すごいのよ!」

「そうだね。場合によったら、眠れなくなるとか、たいへんだもの」


 なにかヒートアップしているので、とっさに出たおべんちゃらだ。痒さで眠れなくなったと言ったのは、相続者(インヘリター)由来の知識だが、『切られたる、夢は誠か‥‥』なんとやらという俳句があった。いやあれは(のみ)のあとだったか。

「そうよ! よく知ってるじゃない、夜中に血を求めて彷徨(さまよ)うのよ!」

 殺虫剤やかゆみ止めの間違いではないだろうか。オシッコかけるのはムカデだったような‥‥血を塗ると痒くなくなる? いや、かきむしって血が出てくるということか?

「ここでは、血を塗るといいの? ごめんね。何も知らなくて」

「血を吸うの! 本当に生まれたばかりで、一切知らないのね! 主様のおぼんぼん!」

 なるほど。血というより、蚊が体内に出す毒液のようなものを吸い出すと、痒くなくなるなんていう話は、聴いたことがある。しかし、やや怒らせてしまったようで、次の話が切り出しにくくなった。


「で、キミぃー」

「9037でいいわよ」

「あ、9037さんは、仲間が多いんだよね」

「そうよ。ウイプリーは、同じ種類のものがまだかなり残ってるけど、それぞれ意見が違うのもいてさぁ。ウマの合うのはそうね ── 二十人と少しくらいかしら」

 意外に少ない。番号からして一万匹程いてもおかしくないが、身分や上下関係も厳しいようなので、意見の合うものは少数という裏でもあるのだろうか。

「そ、そうなんだ」

「あたいね、っていうかあたいたちって、つまり落ちこぼれなのよ。一番弱い三千の中で、もっともやる気のない一パーセントだからね。他のやつらには黙っててよ? 主様をいただいたら、即なにかやらかすつもりの上には、ちょっとついて行けないの。で、消えたくないから、協力し合ってる仲間なのよ」




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