三話 発光と発酵
光の粒子は、獣の角に触れると花になる。
香りがない花は淡く光り、触れたものに融け込んでいく。
花びらは、透明な光の粒子の層に紛れ込み、境界をなくし、溢れ出す。
芽の呼吸が速くなる。
内側で、光が揺れる。
外へ出ているのか、 内側でほどけているのか、分からない。
光の粒子が揺れる度、精霊の輪郭が深まる。
溢れ出した層と形をなくした花びらに包まれる。
発しているのか、受けているのか、分からない。
きのこたちのリズミカルな輪が広がり続ける。
ハミングと共に膨らみ続け、なおも透き通る。
光の粒子の透明な層と、曖昧になる。
光に覆われた湖面に、花びらが溶けていく。
発光が発酵していく。
苔は、巡らせる。
水を。
光の粒子を。
透明な層を。
花びらを。
融け合い、膨らみ、巡らせる。
妖精は、花びらが紛れ込んだ層を纏う。
纏うそばから融け込んでいく。
羽が少しだけ大きくなる。
発光の発酵を続ける湖面。
輪郭が深まる精霊。
透き通り膨らむきのこたち。
融け合い巡らせる苔。
羽を羽ばたかせる妖精。
淡く光る花に埋もれそうな獣。
ルウは見る。
湖面を。
精霊を。
きのこたちを。
苔を。
妖精を。
ルウは見る。
ルウを。
獣が歩く。
花が落ちる。
花びらが散る。
角が分からないくらいの花。
光の粒子が触れる。
花になる。
重さのない花は、獣の輪郭を光の気配へと透かしていく。
芽を巡る光は、浸していく。
光の粒子の透明な層、淡く光る花びらの層。
獣の角から、落ちる花。
落ちる花。
淡い光が融け込んで、浮かび上がる苔。
灯るきのこたち。
淡い光の花びらが重なる、融ける、沸き立つ。
息吹のなかで、精霊の輪郭が際立つ。
妖精の纏う層が溢れる。
膨らんだきのこたち。
巡らせる苔。
透明な粒子の層。
仄光する花びら。
蓄えられたもの。
すべてが、溢れ出す。
溢れ落ちた光が、新たに奔り出し、巡る。
すべてが、重なり合い、飽和する。
湖は、苔は、きのこたちは、精霊は、妖精は、光に融けていく。
光の粒子を溢れんばかりに湛えた芽がある。




