二話 ひかりの巡り
光の粒子が、夜陰の中で霧散している。
透明な層が、揺らぎながら、静かに広がっていく。
それはどこへ向かうでもなく、漂い、重なり合い、ゆっくりと呼吸を繰り返す。
柔らかに膨らんでいくそれは、苔の隙間やきのこのひだに触れて、静かに融けていく。
気配が集まっている。
森のものたちは知っている。
だから、集まる。
湖は、もうじき目を覚ますだろう。
いつもより、盛り上がった湖面。
何かを期待しているようにも見えるし、目を覚ます合図にも見える。
透明な茎の内側で、光がゆっくりとほどける。
流れるというより、滲み出るように。
外へ向かうでもなく、留まるでもなく、ただ境目を曖昧にしていく。
光の層が厚みを増し、周囲の緑が、緑より緑になっていく。
ルウは光の粒子を間近で見ようとした。
それは、ルウを通り抜けた。
苔はそれを、いつものように見ている。
何も言わず、水を相棒に、とりどりの緑を揺らめかせる。
光の粒子は水に吸い込まれている。
水と光の粒子が苔の隙間に染み込む。
その度に、苔は膨らみを増していく。
苔は、ゆっくり巡らせていく。
水と光の粒子は苔の中でいつの間にかあやふやになり、深く呼び合うように馴染んでいく。
きのこたちは、柔らかな傘を揺らす。
傘のハミングに合わせて、光の粒子もリズムをとり、賑やかさを増していく。
傘はそれをまるごと吸い込む。
その度に、リズミカルな輪が広がり、傘は弾むように膨らんでいく。
きのこたちはハミングをする度に透き通っていく。
そして、ぎゅっと蓄えていく。
光の粒子が湖面を覆い尽くすと、湖は目を覚ます。
湖がわずかに揺れる。風はなかった。
けれど湖面は震え、光の粒子が満ちわたり、月が差し込む。
芽は、揺らぐ。
内側から光があふれる。
細い茎の中を、光が流れる。
外へ向かうでもなく、留まるでもなく、ただそこに在る。
芽は、呼吸をする。
ルウは、傍らに立っている。
手を伸ばしかけて、やめた。
ルウの湖底資料室には、なかった。
湖面は光に覆われている。
湖は、またたいている。




