表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/85

第9話 彼らは腐れ縁

 護衛隊はクビ宣告を受けた後も、龍王(りゅうおう)への忠誠心を持ち続けていた。

 話を聞き入れてもらえず困っていると、龍王が短く指示を出した。

「刺客の拘束を解いてくれ……私はそれでも構わない。最後の命令だ」


 護衛隊が()()の元から離れる。地面に這いつくばったまま謝罪を続ける()に、翠雨(すいう)は顔を寄せ語りかけた。

「おれのことを覚えているか? 左遷ヶ島(させがしま)処刑場(しょけいじょう)で一度会っているはずだ」


 返事はないが、自分自身の体験を述べる。


「地下帝国にある溶怪会(ようかいかい)研究所(けんきゅうじょ)の前に、お前のハンカチと、おれの親友の抜け毛が落ちているのを見かけた。親友は、永伝寺(えいでんじ)の大穴に落ちて地下帝国へ辿り着いたらしい。だから、お前も処刑場のどこかで同じように穴に落ちて、その後、研究所へ連れて行かれたんじゃないか? お前が親友と同じルートを辿ってきたことくらい予想がつく。きっと転生寺(てんしょうじ)リンネの作戦に巻き込まれて、そのまま潜水艇に乗せられたはずだ」


 翠雨はこれ以上ないほど、声を潜めた。


「京都の海底で金の龍神像と城の影を見た後、ブラックホールに吸い込まれなかったか? お前は絶対に憂,永遠だっちゃ……自分のことを俺なんて言うなよ」


 諭すように話を繋いだ。翠雨の真っすぐな声が会場に響き渡る。


「お前の一人称は……『僕ちん』だっちゃ!!! 無理して普通になろうとしなくてもいい、僕ちんのままで良いんだよ」


 その瞬間、龍王を暗殺しようとした刺客……(ゆう)永遠(えいえん)の表情が劇的に変わった。


「ぼ……僕ちん」


 伏していた彼はすぐさま上体を起こし、翠雨と視線を合わせた。ボロ布のような着物を纏いながらも行儀よく正座している。


「き、君は、僕ちんの命の恩人……前髪ピラピラくん!」

「命の恩人にあだ名をつけるな……確かにおれはあの時、坊主頭に前髪だけ生えた髪型だったけど」

「ごめんね……前髪チロチロくん」

「人の話を聞けよ」

 翠雨はひどく呆れている。

「今度、僕ちんのブロマイドをあげるから許してね、口の部分を指で擦ると、そこから白い息みたいに煙が出てくるんだ、ニンニクの匂いがする、ちょっとだけ臭い煙」

「いらないって……お前、本当はメンタル強いだろ。なんでそんな物を作ることになったんだ」

「僕ちんの親友がプロデュースしてくれたんだ。本当に仲が良くて、彼だけが僕ちんをニックネームで呼んでくれる。【温室育ち】……ってね」

「それは多分友達じゃないっちゃ……その親友を今ここに連れてこい、おれがひっぱたいてやるから……おれはなんで、こんなヤツの味方になりかけているんだ」


 憂,永遠は涙を潤ませながら話を続けた。


「また君に会えるなんて夢にも思っていなかったよ。名前を聞き忘れたことをずっと後悔していたんだ……ピンク色の他に、好きなものはある? お礼がしたくてさ」

「馬鹿、これは衣装だっちゃ! ピンク色はおれの趣味じゃないよ……んぐっ」


 刀武(とうむ)が珍しく慌てた様子で、背後から翠雨の口を塞いだ。


「失礼いたしました」


 雲の隙間から太陽の光が差し込む。

 刀武は翠雨の耳元で冷たく囁いた。


「この御方は、皇帝家のご子息だ。面識があるからと言って、その馴れ馴れしい態度は不敬だぞ」


 観客たちも皆、頭を下げている。翠雨は身を乗り出して叫んだ。


「気絶させたお父さんに言われたくないっちゃ!!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ