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第77話:ゆるい部活の「普通」な一日

いつも応援ありがとうございます!武徳丸です。


今回は、今まであまり触れてこなかった「吹奏楽部」としての日常を描いてみました。

私自身がパーカッション担当だったこともあり、少しだけ熱が入っております(笑)。


楓たちの意外な「部活の顔」を楽しんでいただければ幸いです!


 全道大会やその上を狙う吹奏楽の練習は、控えめに言って過酷だ。


 青春の時間のすべてを部活に捧げ、血の滲むような特訓を重ねる。

 だが、その積み上げはコンクールでのたった数分の演奏で、残酷なまでに優劣を判断されてしまう。


 次のステップに進める者と、そこで終わる者。

 多くの学生は、三年間をかけた想いが一瞬で弾けて消えるのを何度も見てきた。



 だから……。

 だからこそ、我ら不動高校吹奏楽局は――



「ゆる〜く活動するのだ!」


挿絵(By みてみん)


 これが、俺たちのモットー。


 夏休みは毎日、九時から十六時まで。

「普通にハードじゃん」って思うかもしれない。

 だが、不動高は休んでもOKだし、軍隊的な厳しさも一切ない。

 人数が少ないから、熾烈な椅子取りゲームことオーディションとも無縁だ。



 練習スタイルも実にフリーダム。


 トランペットとトロンボーンは、よく外で吹いている。

 といっても、学校の隣にある霊園の丘の上まで遠征しての練習だ。

 そこまでの移動で体力作りをしつつ、息が切れたところでロングトーン。

 墓地を揺らすほどの爆音を響かせている。



 一方、木管楽器のクラリネットやサックスは、室内でゴリゴリやっている。


 ソロやアンサンブルで全道金賞を取るような実力者の先輩が後輩を集めて、

「はい、ここもう一回ね」と笑顔で命じる。

 ……吹奏楽あるある、終わらない「あと一回」のループである。



 そして我がパーカッションパート。

 やることは地味〜な、基礎打ちだ。

 メトロノームの無機質な音に合わせて、ひたすらスティックを振る。



 両手同時打ちで。

 タタタン、タタタン、タタタタタンタン。


 拍に合わせて足踏みをしながら、体全体にリズムを刻み込む。

 頭が揺れないように、体がぶれないように。



 これを朝から一時間は続ける。

 メトロノームの速度を少しずつ上げ、最終的にはMAX 208まで持っていく。

 一週間もあればできるようになるが、これが体力的にはかなりしんどい。



 パーカッションを目指す奴や、ドラムをやりたい奴にはぜひ教えたい。


 初心者で入った女の子でも、この練習を続ければハイスピードな曲も余裕で叩けるようになる。

 足も同時に動かしているので、ドラムの練習としても最適だ。


 リズム感や姿勢が良くなるのはもちろん、何より、めちゃくちゃ痩せる!



 基礎の後は楽器を使った練習。


 コンクールで使う楽器をそれぞれさらっていくのだが、俺は自分がこれまで培ってきた技術を後輩たちに伝えていく。


 シンバル一つとっても、どの位置で合わせるのか、音の大小、広がり、柔らかさで叩き方が全く違う。

 毎回同じ音が出せないと、それは音楽ではなくただの雑音だ。

 だから、確実に同じ音を出せるように、身体に覚え込ませていく。



 俺はコンクールの練習とは別に、ミツルには各楽器のメンテナンスについても教えていくことにした。

 これも大事なパーカスの仕事だ。



 午後からは合奏の時間。

 全体の合わせ練習だ。

 各パート、この場では絶対に迷惑をかけないよう仕上げてくる。


 これが一日の流れ。



 ……うーん。

 ゆる〜くって言ったはずなのに、書き出してみると結構ハードかもしれない。

 でも、怖い先輩もいないし、和気あいあいとした良い部活なんだよ、本当に。



「さてと。帰るか」



 片付けを終えて校舎を出ると、同じく部活終わりのムツと皆ちゃん、それに吉川がいた。

 吉川はまだ先日の海の件をグダグダと言っている。執念深い奴だ。



 その時、ポケットの携帯が震えた。



「もしもし?」

『楓くん? 愛美だよー』

「おう、珍しいな。どうした?」

『お母さんが車出すって言うんだけど、一緒に海行かない?』



 俺は思わず吉川の方を見た。

「マジか。今ちょうど、友達と海行きたいねって話してたところなんだよ」

『あ、そうなの? 何人くらい?』

「今ここにいるのは、俺含めて四人だな」

『うーん、四人かぁ……。ちょっと厳しいかな』



「女の子と海!?」



 地獄耳の吉川が、獲物を見つけた猛獣のような目つきで詰め寄ってきた。

「よし、りん! 車なら俺の方で一台なんとかしてみるわ!」



 吉川の鼻息の荒さに、俺の返事を聞く前に海行きが確定してしまったのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます!


「ゆるい」と言いつつ基礎に励む楓たちの姿は、不器用ながらも温かい青春そのものですね。吉川の執念で決まった海行き、楓の鼻の下が伸びないか心配です(笑)


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