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第76話:ホットサンドの魔術師

 楽しかったキャンプも、いよいよ終わりの時。

 朝食はホットサンドメーカーを駆使した「俺の祭り」です。

 

 賑やかな朝を終え、帰り道の車内に流れるのは、少しだけ切なくて温かい時間。

 三人の特別な夏の終わりを、どうぞ最後まで見届けてください。


 幻想的な景色が朝日に溶けていく頃、テントから続々と部員たちが這い出してきた。

 朝の湖を見て「綺麗!」と声を上げる仲間たちを見て、俺たちは顔を見合わせて笑う。


 俺たちは、もっとすごいものを見たんだよな。



「それじゃ、さっちゃん。他の子も良ければ遊びにおいで」

「うん、また後でね!」



 朝食は各グループで自由だ。

 俺はホットサンドメーカーを取り出し、一人「祭り」を開始した。


 まずは王道のハムチーズサンド。

 次に昨日の残りのカレーを挟んだチーズカレーサンド。


 だが、これはまだ序章に過ぎない。



「シュウマイを焼いちゃうぞ!」


 ホットサンドメーカーに入れて温めると、カリカリふわふわに仕上がるのだ!

 じゃんじゃんいけー!



「次は餃子だ!」


「ははっ、りん楽しそうだね」



 ハルちゃんとさっちゃんが女子部員を連れて合流してきた。

 ……正直、ちょっと恥ずかしい。


 炊事場が混んでいたので、食材を持ってきてここで何とかしたいと思っていたらしい。

 というか、むしろ俺に丸投げしようとしている。

 

「食材見せて。ふむふむ……」


 んーじゃー……OK、作るわ!

 食材を一口大に切っていく。


 俺は手際よくスキレットを火にかけ、たっぷりのオリーブオイルでニンニクを炒める。

 先ほど切ったウインナー、きのこ、じゃがいも、ミニトマトを投入。


 アヒージョの出来上がりだ。


挿絵(By みてみん)


 並行して、手鍋で茹でた卵を潰し、ツナとマヨネーズを和えてホットサンドにした。



「おいしー!」

「局長、実は優良物件かも……」

「アリだよね……」



 他の女子たちの呟きに、さっちゃんとハルちゃんが豹変した。


「シャーッ!」

「フーッ!」


 ……猫か。何を威嚇してるんだ。


挿絵(By みてみん)


 朝食を終え、撤収作業に入る。


「ゴミは全部持ち帰りだぞ! 生ゴミを置くと何が来るか想像つくよな?」


 ヒグマの恐怖をチラつかせると、みんな必死に片付け始めた。


 案の定、彦根先生のテントだけが畳んでも袋に入りきらず大苦戦しているが……あえて放置だ。



「明日からまたコンクールに向けて練習だ、頑張ろうな!」



 現地解散。

 さっちゃんのお母さんの車に、俺たち三人も乗せてもらうことになった。


 帰りの後部座席は、三人並んで座る。

 もちろん、俺が真ん中だ。


 最初はキャンプの思い出話で盛り上がっていたが、次第に声が消えていく。



「あらあら、三人ともよっぽど楽しかったのね」



 バックミラー越しに、さっちゃんのお母さんが微笑む。


 右にハルちゃん、左にさっちゃん。

 二人の天使が俺の肩に頭を預け、幸せそうに寝息を立てていた。


 ずっと三人で一緒にいられる夢を見ながら。


 第76話をお読みいただき、ありがとうございます。

 これにて、吹奏楽部キャンプ編は完結です。

 

 最後の一文、楓の「ずっと三人で……」という願い。

 

 青春はいつか終わるものだと分かっていても、今この瞬間の幸せが永遠に続いてほしいと願ってしまう。そんな楓の純粋な祈りが、読者の皆さんの心にも優しく届いていれば嬉しいです。

 

 彼らの「特別」は、まだ始まったばかり。

 もしこの三人を応援したいと思っていただけたら、評価やブクマをいただけると幸いです。


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