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「、ゲームへ」  作者: ヒト
第ニ章 骨の髄まで
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「光と別れ道」

少し雪がちらついて寒くなってきた。

「そんで俺が悩んでることやけど·····」

実際に色々ありすぎてまとまっていない。

ぐちゃぐちゃに絡み合って、心がいっぱいになっている。

「なんでもいいから喋りたまへ」

蒼汰は相変わらずだし、まとまってなくてもいいか。


「ユルハのことなんやけどな。多分、俺が原因であんなんになったかもしれんねん」

吐き出すように俺は喋り始めた。過去の言葉が今のあいつを作り出したこと。その原因こそが自分だと。

「それやのに俺はあの子を殺そうとしとって·····」


そんな気持ちもある。でもそれ以上に·····

「今までユルハがやってきたことは絶対許せん」

恨む気持ちがあること。この気持ちは、真弓を、皆んなを傷つけたことは·····殺したことは、理性を失うほどの怒りを覚えた。何があっても、差し違えてでも殺す。そんなつもりでいた。


「でもそうしたら俺は、親父みたいになると思ったんや」

自分から原因を作っておいて、脅威となったら排除しようとする。それが俺の前の親父だった。

そしてそのクソ野郎に言われた言葉が今でも頭に残ってる。

「お前は俺とおんなじでクソ野郎や!邪魔になったら手も差し伸べず、見捨てて踏みにじるような奴や」


まさにそうだな·····と思ってしまった。

自分から手を差し伸べて結果、脅威になれば説得という選択肢を振り払って排除しよう。無責任だ。それが複雑に絡み合ってぐちゃぐちゃになっていった。

「そしたらさ、だんだんどうでもよくなってきてん」


空には雲がかかって、青い空は少しか覗いていない。地面に落ちる雪を見る。

「考えるのが面倒くさくなったというか、思考を止めて殺すことしか頭にない。それが今や」

悩みが悩みじゃなくなって、殺すという選択肢を後押ししているような感覚だった。

疑問も嫌悪もしていない。当然のような、ロボットみたいな感じ。

このままなら、ユルハを殺しても何とも思わないだろう。どうせ殺すんだし、このままでいいだろう。


違う、駄目だ。


「その感覚がさ、母親をぶっ殺した時とおんなじやってん」

記憶と思いが俺を止めた。それが喉に小骨が刺さったみたいに引っかかった。

それが良かったのかが分からなくて、また気持ち悪くなった。

「整理がつかんくて、もうわからんくなってきたわ」


一通り話し終えた。蒼汰の顔を見ると、少し怒ったような顔をしていた。

「とりあえずは分かった。いろいろ言いたいことあるからちゃんと聞けよ?」

そう言って、立ち止まり真っ直ぐ俺の目を見た。

「お前は阿呆や」

「·····は?」

おいおい、真面目な顔して何言ってんだこいつ。

「お前、俺がどんな思いで·····」

「まずはユルハや!」

俺の言葉を遮って喋りだしやがった。


「ユルハに関してはお前は一切悪くない」

そう言い放ったのだ。反論する暇もなく蒼汰は言う。

「誰かから受け取ったもんは、自分でつけ足していって意味を成すんや」

誰かの言葉に共感したり、言ってもらったことを意識するのはいい。でもその通りに生きていたら、広い世界が狭くなっていってしまう。だからそうならないためにつけ足していくんだ。いろんな事を経験して、時にはその言葉を否定して、学んでいくんだ、と。


覚えがあった。芳弘さん·····父さんを見て気づいたことだ。自分という芯を持ちながら、いろんな解釈を用いるところ。

思考が止まった頭が少しずつ働き出す。

芯がここで言う「貰い物」で、様々な解釈が「つけ足し」なのだ。芯と言う自分のルールのようなものを持って、それに乗っ取ってつけ足していく。そしてルールには包容力が必須で、自分とは違うものを知っていって認めることが大切なのだ、と。

それに俺はやっと気づいた。


「経験は環境によって違う。ユルハは·····環境に恵まれなかったんや」

教えてもらうことがなかったのだろう。

世界を狭い視野で見たまま、包容力を捨ててどんどん深く潜っていった。だから、あんな愛情表現しかできなくなったんだ。         

「だからお前は悪くない」

面と向かってそう言ってくれた。


「そんでユルハを殺すことはクソ親父とは違うぞ」

生きていく上では、邪魔なものは対処しなきゃならない。今回はそれが殺す事になる。

じゃないと、翔が生きていけない。それにこれは翔が撒いた種じゃない。ただ向かってきた火の粉を払うだけだ。


「それに気づいてなかったから、お前は昔みたいに世界が狭くなってたんや」

「あぁ·····そうか!」

そこでようやく止まっていた思考が完全に復活した。

「やから俺はずっと、酷い顔してたんか」

憎悪で視界が狭まっていたんだ。

いつの間にか晴れていた空を見上げた。

蒼汰が背中を叩いた。

「ええ顔してるわ!」

「ありがとう」


なんだか胸が熱くなった。詰まっていたものが一気に消えて流れていた熱い血を感じ。気分が綺麗に晴れている。そんな今の俺が見た蒼汰の笑顔は、とても輝いていた。


     

       朝倉家 風呂場


今日は翔が帰ってくる日だ!久しぶりだしちゃんと身なりは整えたいところ·····

「まゆちゃ〜ん。翔が先に病院行くって〜」

シャワーを浴びていると洗面所から咲ねえの声が聞こえた。

「分かった〜」

よっぽど翔は雪ちゃんが恋しいみたいだ。

私も早く二人に会いたいし、さっさと用意しよう!


「まゆねえ、ちゃんと服着とかんと兄ちゃんおったら見られるで?」

そうだ·····翔が帰ってきているときは気をつけないと。

「大丈夫!絶対多分気をつけるから!」

「·····絶対あかんやつや」


そろそろ寒くなってきたので、自室にいって服を取る。とりあえず部屋着を着て、服を選ぶ。

「これがいいかなぁ?」

翔が好きそうな服·····い、いや!今日はどんな服を着たい気分かなぁ〜。

そんな事を考えていると、窓から白い世界が見えた。冷たくて凍えるような寒さをしているくせに、世界を彩る雪の白が綺麗に見えた。


白色は好き。どんな色にも染まる事ができるし、何よりふかふかしていて優しい感じがする。翔も白色のマーガレットが好きと言っていたし·····

「白にするか!」

そうして無事、私は服を決めることに成功した。


髪を整えて、服を着て、心の準備をして·····

「もう行けるよ〜」

これで全員、準備完了!

玄関を開けると寒い空気が漂っている。

私はそんな事を気にせずに、誰もいない家に「いってきます」と呟いて鍵を閉めた。


「すげぇ〜。晴れてんのに雪降ってる」

「ほんまや。綺麗やね」

咲ねえが雪に向かって手を出した。そして私を見て、「似合ってるよ」と言ってくれた。

早く翔に会いたいな。なんて言ってくれるだろうか?褒めてくれるだろうか?

嬉しさと期待で胸は膨らんでいった。


「ドンッ」

突然、体に衝撃が走った。そのせいで尻もちをついてしまった。何事かと前を見ると私は誰かとぶつかっていた。

「す、すみません!」

急いで謝った。私がちゃんと前を見ていなかったのが原因だ。早々と立ち上がって手を貸す。

「大丈夫です。私も前を見てませんでした」

相手は私の手を取ってゆっくりと立ち上がった。

「そちらも大丈夫ですか?」

「大丈夫!」


相互に無事を確認し合った。幸いどちらにも怪我はなく、一言交わして相手は歩いていった。私も振り返ることなく白く綺麗な道を歩いていった。

どうも、ヒトです。この作品を読んでいただきありがとうございます。良ければ感想やブックマークをしてくれると嬉しいです。誤字脱字もあったら報告していただけると助かります。

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