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「、ゲームへ」  作者: ヒト
第ニ章 骨の髄まで
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「ペチュニア」

何度目だろうか、ここに来たのは。

いつも通りにインターホンを鳴らそうとした。

ボタンに手が掛かった。後は押すだけなのに、中々力が入らない。心に靄がかかって、躊躇ってしまった。

「·····荷物だけ置いてくか」

俺はある場所に向かった。雪に会いに行くついで。寄り道のようで、それでいて目的地のような。とりあえず真弓たちには、先に雪のところに行ってくる、とメールを送り、別の連絡先にもメールを送った。スマホをポケットにしまい、歩き出す。


俺の心には前回のことが酷く残った。

あいつと会った頃は、本当にただ助けたいという気持ちだった。そして自分にあれだけの影響力があるなんて理解もしていなかった。

俺のせいじゃない、とも考えた。

でも分かっていなかったとはいえ、ユルハに俺は言葉という呪いをかけた。ユルハもそれを信じて生きてきた。狂った歯車の一つに俺も入っているんだ。

悪くないと振り切るのも無責任すぎる。それこそ罪だ。


まあそんなことをいっちょ前に思っているが、本心は違う。本心は、復讐に塗れている。家族を殺した罰、この町を滅茶苦茶にした罪。ゲームクリアのための石杖としか考えていなかった。だから狂わせた罪と復讐が重なって変な気分だ。恨み切れない、でも殺したいくらい恨んでいる。頭が可笑しくなりそうだ。


悩んでいるとスマホが鳴った。

メッセージ画面には、「もう着くわ」と出ている。メールを確認して、道の角でそいつが来るのを待った。そいつとは昔からの付き合いだ。ピンチになった時に助けてくれる頼れる奴だ。だから俺は待ち合わせ場所と一緒にこう送っていた。

「一緒に命かけてくれるか?」


後ろから俺を呼ぶ声がした。

「翔、ひっさしぶりぃ!」

こいつは俺の悩んでることを一緒に考えて、協力して解決してくれる。

そして「命かけたるわ!」って自分の命すらかけてくれる奴だ。

「ありがとな、蒼汰」

「いいってことよ!」


合流も出来たので、寄り道先へと足を運んだ。

「で、どこいくん?」

行き先を言ってなかったな、と今思い出した。

「今からユルハの家に行く」

「ユルハぁ?」

そりゃ分からんよなと言い、今の状況を説明した。蒼汰は現実離れした話を聞いて、上の空だった。


「·····というわけや」

「はぁ?」

そこからは何度も同じ話をした。どうやらこいつは理解を拒んでいるらしい。いつまでも信じ切っていなかった。

「俺はてっきり父親のことかと·····」

原因は別件との勘違いだった。まあ、何十回と説明してやっと信じてくれたから良しとする。


今の状況を理解した上で蒼汰が質問してきた。

「なんでユルハの家行くんや?」

中々、鋭い質問だ。でもこれには明確な答えはない。というかほぼ·····

「勘や」

そう、勘だ。

前回、ユルハと関わって感じたことがある。それは吹っ切れたように見えたことだ。全部どうでも良くなって、ただ自分の大切なものだけを求めているような。


自由で楽しそうだが、それでいて何というか·····縛られている気がした。

多分縛られていると感じたのは、あいつが俺だけを求めているからだろう。

まあこれは本人に自覚はないだろう。


自覚があるのは吹っ切れた理由である「縛り」だろう。多分だがユルハには最大の障壁である「縛り」がある。

それは過去だ。全てを否定され続けた過去の記憶だ。それが自我を縛り続けていた。俺の教えた言葉、「自分らしく生きる」に従うためにはそれが邪魔になる。だからこその最大の障壁。


それを壊せば全てが解放されたように自我が流れ出すだろう。そこでようやく吹っ切れるのだ。じゃあ解放の条件は何か考えた。

きっと縛り続けた正体はユルハの両親だ。

そう、両親が最大の障壁だ。そしてその障壁が破られた先にある解放·····

それは両親の殺害だろう。


それじゃあ親殺しを阻止して吹っ切れるのを防ぐのか?そうすれば俺たちの勝率は上がるだろう。

でも·····違う、俺は見届けるだけだ。

かわいそうだから、って同情なんかじゃない。これは復讐の権利だと思ったんだ。虐げられた者の権利だと。俺だってそうしたんだから。

そんな黒い部分は蒼汰には話さずに、ユルハの家についた。


「古いアパートやな」

二階立てで、部屋は十個ほどの古びたアパート。確かユルハの部屋は二階の左端·····

その部屋から何やら音がする。床を力強く鳴らした音、壁をぶつかる音、皿が割れる音。

どうやら中で暴れているようだ。

「翔、行くぞ」

蒼汰が慌てて行こうとしたが、俺はそれを止める。


「どうせ間に合わん」

「でも·····」

納得しない蒼汰をなんとか言い包めた。

そこから少し経った後、「ガチャ」と音を鳴らして扉が開いた。出てきたのは手を血で染めたユルハだった。

俺に気づくといつもとは違う、昔みたいに弱い声で俺を呼んだ。

「おはよう、ダーリン」


階段をコツコツと降りてくる。今はただ、一人の傍観者として声をかける。

「終わったんか?」

ユルハは首を縦に振った。その顔は少し遠くを見つめていて、疲れているように見えた。

「またあとでね」

作った笑顔でユルハは何もせず歩いていった。ただ見つめて、何もしなかった。

「行くか」

俺たちは病院に向かって歩いた。


歩いていれば色々な事を思い出した。

初めてこのゲームに参加した時のこと。皆んな死んで心の底から絶望した。そこから皆んなを頼って、血反吐を吐きながらここまで来た。

とうとう三周目に来た。

なんだか今は頭が働いていない気がする。本能のままに行動している感じだ。ちゃんと道理だって倫理だって働いているはずなのに。


この感覚、身に覚えがある。糸が切れたみたいにどうでもよくなって、理性を無視して全部ぶっ壊したあの時みたいに·····

「·····う?翔!」

「あっ、すまん。どした?」

考えすぎて声が聞こえていなかった。

「話せよ。何でもいい。今、心にあるもん全部ぶちまけろ」

いつもと話すみたいに、本当にいつも通りのように聞いてきた。


俺は誤魔化すこともなく答えようとした。その前に一つ質問を投げかける。

「なんでそんな事聞こうと思ってん」

蒼汰は笑いながら言った。

「お前わかりやすいねん!」

俺もフッと笑って「そうか」と答えた。

どうも、ヒトです。この作品を読んでいただきありがとうございます。良ければ感想やブックマークをしてくれると嬉しいです。誤字脱字もあったら報告していただけると助かります。

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