客人と刺客 ――ウェア・アー・フレンドー――
――あれからどれくらいの時が過ぎたのでしょうか?
シグレ・ウキ先生が暮らしているだろうアトリエに向かって歩いていますが、
「んわぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ~~ん! 疲れたもぉお~~!」
道中でヴェールさんが泣きわめいています……。
「アヤツの屋敷、遠すぎィ! ここまで遠いとは聞いてないぞ!」
確かにそうです。アトリエ近くまで交通馬車が使えたら最高でしたが、「えぇ……? あそこ、俺の馬が嫌がるんだよね~! よくお客様にあそこまでって言われるだけどごめんね!」って言われて断られてしまいました。
しかし、ここでキリエさんのためにもへたれるわけにはいきません!
気合い入れて頑張って歩くぞ!
と、かれこれ道が整備されていない山道を周囲を灰魔術で探知しながら歩き続けていました。
が、
「うへぇ……、疲れた……」
「ヴェールさんが歩いていただけないと、目的地に辿り着けません……」
「だってさぁ、超暑いし! 超汗酷いし!」
「私、アイスおごったんですよっ! しっかり歩いてくださいっ!」
「えぇ~~! 我、もう限界なんだけどぉ……! 足の筋肉痛酷いし」
――ヴェールさんが駄々をこねます。泣き。私の財布の中身は……無駄でした……!
「そういえば」
「なんじゃ?」
「ヴェールさんは最初、「セーレ・スプリンクの元へ行くぞ!」っていってましたよね? どうして、シグレウキ先生のところに行くんですか? 苗字的に関係ない人ですよね?」
「キリエンがコンビニ付近で消えた時にシグレウキの名は聞いたじゃろう?」
「はい、それがどうして?」
「“シグレ”の名前に身に覚えがあってな……!」
「“シグレ”――って明らかに向こうの世界の言葉ですよね……? あまり私は聞きなれた言葉じゃありませんが……」
確かにヴェールさんの言う通りです。この世界の名前とは違った名称を感じると言いますか……、この世界の名前じゃないと頭のどこかでそう訴えてくると言いますか……。
「ヘパイス・リアに着く前にセーレについていろいろ調べたんじゃが、よう分からなくてな……。ただ、“シグレ”という名。知っている人物はセーレしかおらん」
「えっ? それ、大丈夫なんですか? 相手は売れっ子魔具デザイナーですよ?」
うぐぐ……と苦虫を潰した顔で「そうじゃったぁぁぁあああ!」と言いたげなヴェールさん。
「まぁ、見とれ! アヤツは我の大切な後輩じゃ! 『ヴェール先輩のためだったらなんでも作りますよ! キラキラ!』って言ってたもん」
「ヴェールさんの後輩もキラキラなんて言うんですね!」
「否、我が可愛く見せるため誇張した! キラキラ!」
山道歩いて疲れているのか、ツッコミすぎて疲れているのか訳分からなくなってきます……。
そして、もう一つだけ気になることがありました。私の周囲に張り巡らされている灰がほんの少しだけ反応しているのです。
シグレ・ウキ先生がデザインする魔具の人気は分かりません。魔術師と認められてからヴェールさんに貰った魔具しか使ってないから他人が作るものに興味がないからです。
ですが、道を歩けば歩くほど、誰かに追われている感じが徐々に徐々に強くなってきています。
「この屋敷じゃない?」
「えっ? ここですか?」
ヴェールさんをツッコんで歩いていたらいつの間にか着いていました。
「ここにシグレ・ウキ先生がいらっしゃると……」
「ん~! 多分、そうじゃない~?」
白くて綺麗な屋敷。なのに、ツタが纏わりついていてどこかお化け屋敷みたいな印象を持ちます。
「よし! たのも~!」
ヴェールさんが屋敷の門を小気味よく叩きます。しばらくして、
「ご用件は何でございますでしょうか? 仕事の依頼ですか?」
お屋敷のメイド……? でも、この顔は雑誌で見たシグレ・ウキ先生に似ている?
「我、シグレ・ウキ先生の後輩というか――セーレ・スプリンク。セーレ・スプリンクに会いたいんじゃけど? ここにいるんじゃろう?」
――灰が強く反応しました。どこからか魔術が発動する?
「電子魔術――【可愛筐箱】」
突然、どこからか桃色の光線がヴェールさんを包み込みます。
「――ヴェールさん!?」
『おしゃれアイドル活動! ラブプリ! コインを入れてね!』
ゲーム機型の魔具……? 一瞬で吸い込まれてしまいました……。
「何がどうなって……! きゃあぁあーー!」
気が付いたうちに土煙に包み込まれ、吹っ飛ばされてしまいました。
あまりにも一瞬の出来事が続きすぎて理解が追いつきません。
私は体制を整え、土埃が晴れた時、――目の前には図鑑でしか見たことがない古代の化け物がシグレ・ウキ先生の頭を丸かじりしていたのです。




