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断罪中の侯爵令嬢だそうですが、私は無関係なので取り敢えず生産元さん全員集合――!!  作者: 桃緑茶


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脳筋令息とデイジーの濃すぎる経歴

「ダミアン令息。言い訳がましいが、何か理由があるのか?」

騎士団長は非難めいた渋い顔をしていますが、弁解を聞いて貰えると思った脳筋はまくし立てます。


「ルルー嬢を虐げるこの悪役令嬢が許せなかったんです!そんな悪役令嬢を庇う子爵風情も!!」

私を指さしていますので、未だに勘違いしていますねあの脳筋。


私はフロム侯爵にアイコンタクトして、クロヌスさんの合図でホワイトボードを二つ召喚!


そこには私デイジーとレイジー・フロム侯爵令嬢の顔写真…というか等身大の制服姿の写真がデデーンと貼ってあります。

令嬢の弟君が中等部に入学するからと、二人とも制服を着て写真を撮ったそうです。

それを令嬢の所だけ加工して、魔道具で拡大しております。



「――よく見ろ、ダミアン」


騎士団長の声には鉛のような重みがあった。息子が指差した先、ホワイトボードに掲げられた二枚の写真。

弁護役のバーンベルク侯爵が淡々と私と侯爵令嬢の違いを説明します。

それはもう、小学部の子供に言うように、嫌味を込めて分かりやすく。

――一枚はデイジー、もう一枚はレイジー・フロム侯爵令嬢の等身大写真。

二人とも金髪碧眼で共通点はあるものの、明確な違いが一目瞭然です。

弁護役としてバーンベルク侯爵が口を開きます。

「先ずはこのレイジー・フロム侯爵令嬢と間違われた者の身元保証をしよう。

ヴァイオレット商会長ヒース・バーン・ドラコ、ヴァイオレット商会編集部門・編集長のヘルマン、前に出よ」

そして、お二人が私の写真を指差し棒で示された私について説明します。


「このデイジー氏を雇用したきっかけは、彼女が不完全版の更に劣化した真なる魔王の禁書を独学で完成させ、独自考察したものを同人誌即売会(コミケ)で販売したことです。

結果、重罪人として投獄された事が始まりでした」

「あー、そこまで話しますか?」

「お前の経歴は濃すぎるんだよ、こんなもんジャブだ、ジャブ」


良いんですかね?私はご先祖の記憶を辿って行っただけですけど。


「全くもって驚きました。500年前に失われた文字を独学で復元までやってのけた。15歳の平民の娘が、です」

「…で、発禁扱いの代物とはいえ、才能が惜しいと先代バーンベルク侯爵にスカウト。

…される前に脱獄したんです」

「いや、せめて作った同人誌は隠しておこうかと」

それと、死刑囚さんに本を贈るとお約束もしましたし。


「それをどうにか捕まえて、商会の監視下及び編集部門の記者になった。勤続8年だから、現在23歳になる」


「レイジー・フロム侯爵令嬢は18歳でしたね。年齢に大きな差がある」


「15歳で重罪犯!?」「独自解読!?」「脱獄!?」


生徒たちのざわめきが会場に波紋のように広がる。

まさか、学園内の平和的な光景を写真に収めてくれた温厚そうな記者が、そんなぶっ飛んだ人物だったとは。


「はいはい皆さん静粛に!」

国語教師達の発声練習。それを他の教師に代行させた学園長の声がパンッと響き渡り、騒ぎが一瞬で収まる。


「彼女の経歴は少々特異ですが、その能力は本物です。

恐るべき努力の天才。彼女はそう呼ぶに相応しい。そして問題はその禁書の内容です」


学園長はため息混じりに続ける。

「実はその禁書、あの忌まわしき『先の大戦』において決定的な突破口となりました。500年前に失われた古代言語で記された暗号の解除法則……それを彼女が復元し、解析したことで世界終焉は免れた」

ちらりと私を見ましたので、ブルスケッタに伸ばした手を引っ込めました。



「いやー、殆どはご先祖の手柄ですけどね」


「本人がこれだよ。‥‥‥言っておくが自叙伝でも出せば売れる位、もっととんでもない事やらかしているからな、デイジー?」

ヘルマン編集長の嘆息が入り、学園長は苦笑いで続けます。


「その功績により、デイジー殿は先祖の名誉を回復した。つまり――」

剣呑な視線がダミアンへ向く。

「重罪人どころか英雄。それを悪役令嬢呼ばわりとは……どういう了見かね?」


会場全体が息を飲む音が聞こえたような錯覚。今度は本当に恐ろしい沈黙だ。



「まだ話は終わっていない。

デイジー殿の濃い逸話は置いておいて、侯爵令嬢との差だ。」


バーンベルク侯爵も指差し棒で示しながら続けます。

「次に身長。レイジー・フロム侯爵令嬢は163cm。一方聖女デイジー殿は173cm。10センチもの差がある。

令嬢はヒールの高い靴を履く傾向にあるが、デイジー殿は学園生活ではローヒールの靴だった。今こそヒールの高い靴を履いている故、聖女デイジーは180㎝弱あるが…身長差にも気付かないのか」

彼の声には呆れと皮肉が滲んでいた。次に指し示したのは胸部。


「胸のサイズは全く違うな。デイジー殿は経歴は濃いが胸は薄い」


…思わず咽そうになってしてしまいそうな発言でしたが事実です。

ブルスケッタにマスタードを塗って、思いっきり齧りつきました。

ベーコンが美味いっ、マスタード付け過ぎて涙出ますけどっ!


噛みしめながらちらりと横を見ると、ヘルマンさんがハンカチを差し出してくれていました。ありがたい。

あ、エビとアボカドのブルスケッタも美味しい、白ワインが欲しいっ。



「さらに」

クロヌスさんが魔法で拡大鏡を作り、レイジーの顔を指す。

「彼女には口元に小さな黒子がある。デイジーにはない」



「カーテシーの所作もご覧に入れよう」

バーンベルク侯爵が手を叩くと写真が切り替わり、レイジーが優雅に腰を落として頭を下げている姿が映し出された。その後ろ姿は凛とした美しさを持っている。

一方私(デイジー)は、動きそのものが高位貴族の方と比べて粗が目立つ。


「…頑張ったんですよーだ」

「ま、及第点だろうなぁ。本物の令嬢には敵わないが…、あの馬鹿王子が気付かないのはヤベーな」



「これら全てを踏まえてなお、デイジー殿とレイジー侯爵令嬢を同一人物だと思うとは……」

バーンベルク侯爵はため息混じりに肩をすくめた。

「いかがでしょうか?国王陛下」

「我が息子の目がこうも曇っているとは…情けない」


「そ、そんな馬鹿な!」

叫ぶ第二王子シャルル。だがその顔色には明らかな動揺が浮かんでいる。


「加えて言えば、ですが」


「レイジー・フロム侯爵令嬢本人は今現在領地にて療養中です。今回の騒ぎに関与できる立場ではありません」


「その通りですわ」


突如として声が響いた。

振り向くとそこにはレイジー侯爵令嬢の友人である、生徒会副会長ジュリアナ・ハーミット公爵令嬢が毅然と立っていた。


「私ども親しい仲間同士でお茶会など開催しておりました。

ですが、レイジー様はめっきり顔を見せてくれなくなって心配しておりましたところ、突然噂となりまして驚愕致しました!」


そして私へと目を向ける。

「その時からすでに不審に思い始めましたもの。噂になった時期はデイジー様が写真撮影に来た頃ですから。

確かに制服を着た後ろ姿は似ておりますが、所作も顔立ちも友人とは全く違います」

彼女は堂々と言い切ると続けて強調した。


「そもそも噂話なんて、信じるものじゃありませんことよ、皆さま」


この証言により場全体へ衝撃が走る。

今まで確信犯的に流布させてきた情報源への信頼感も薄れてしまう状況となるのである。

それどころかこれまで築き上げてきた権威すら、べりべりと剥がされてゆく結果となりつつあった。


「フロム侯爵家への侮辱は勿論のこと、諸外国への影響力低下につながってしまいますわ!」

ジュリアナ公爵令嬢はキッパリ言い放つ。



「じゃあ!領地でルルーを虐めていたんだ!!」

懲りないですねー、あの脳筋。

「無理だな」

フロム侯爵はキッパリ言い放つ。

「レイジーは己の身長の低さを卑下した第二…馬鹿王子殿下に、身長を伸ばすなと命じられた結果。――栄養失調で骨折している」


(((言い直して馬鹿王子って言ってる‥‥‥)))


会場にいる生徒たちの心の声が聞こえた気がした。まあ実際に口に出している者もいたかもしれない。


「うぅ……嘘だ!俺は……俺は……!」

シャルル第二王子は顔面蒼白になりながらも、なおも否定しようとする。

「何故嘘だと思う?」

フロム侯爵が冷たく問う。

「君が幼い頃から娘に『小さい女が好きだ』と言い放ち、成長する事を許さなかった事は周知の事実だ」


「ぐっ……!」

シャルルは言葉に詰まる。


「王命だとのたまったそうですが、何時から馬鹿が国王になったのやら。

とはいえ、普段からの元婚約者の言いがかりに心労も祟っており、娘は正常な判断が付かなかったようだ。何処の骨とも分からぬ義妹にも苦しめられた故。

――で、だ。ダミアン殿。

君は、あばら骨が折れた状態で、相手に痣が出来る程の打撃をかませるのか?

娘はコルセットを締めた瞬間、アバラを折ったぞ」


「実践させてみれば良い、その身で試せ」


騎士団長は冷徹な声音で宣告した。

ちなみに、禁書が不完全版の理由。

研究を継ぐ子孫は半人前故半分で良いと、先祖が処刑前に研究資料を半分飲み下し消化したから。


そのまた子孫は神の山脈の何処かに資料を隠す奇人ぞろい。

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