8 従者の仕事
王子の従者になって二ヶ月が経った。
王子は意外と早起きだ。
だから私は、ジイに起こしてもらい、少しでも王子より早く起きようと頑張った。
自分の身支度を終え、王子が寝ている間に、厨房へ走って行き、お湯をもらってくる。
ウオッシュスタンドに、水差しと洗面器を置きフカフカの布も忘れずに用意しておく。
ベッドの上に起き上がった王子に絞ったタオルを差し出す。
王子は早起きだけど寝起きが悪いのだ。
不機嫌そうな顔は、ちょっとだけ怖い。
熱いタオルで顔を覆いフーッと息を吐き出せば、いつもの穏やかな顔に戻っている。
ガウンを着せて椅子に座らせ髭を当てる。
初めは怖かったけど、ちょっと傷がついても王子は平気そうにしてくれたので、今は髭を当てるのは得意になった。
その後、着替えを済ませた王子に厨房から持ってきた朝食を出す。
朝食を済ませた王子は執務室へ向かう。
私はご不浄の処理と部屋の片付けを済ませ、王子のいる執務室へ向かうのだ。
領主もいる執務室では、男たちが大勢いて、カリカリと書き物をしていたり、小声で相談したりしている。
私はすることがないので、王子の後ろに控えているだけだ。
以前の従者の仕事よりは全然楽だけど、することがないのも辛いものだ。
ジイは、たまに王子の傍へ飛んでいき、書き物を覗いたりしている。
王子は気にしていないようだが、周りの男たちがしかめっ面をする。
私が慌ててジイを掴もうとすると王子は、
「気にせずともよい」
と、ぼそりと言うのだ。
周りにいる男たちはそれを見て、訳知り顔をする。
――何で?
私には意味が分からなかったが、王子は決まり悪そうにするのだ。
――あとで聞いて見るしかないか……。
王子の必要になった資料を取りに書庫へ入って行くと、書記官たちがコソコソ話をしていた。
「鼻いぼは、ずいぶん王子に気に入られている」
「具合がいいんだろうさ。鼻を見なけりゃ可愛い顔をしているしな」
「しかし、この分ではいつまで経っても奥方が来ないのでは?」
「蛮族から女を連れてくるより、余程増しではないか」
「それはそうだな」
そう言ってクスクスと笑っているのだ。
私はそこで、やっと察した。
――王子と私が……。
何と言うこと。話には聞いていた。高貴な身分の方々は、そういう処理を御小姓に求めることがあると。
男なら子供ができる心配がない。そして、そういう趣味の人もいるのだ。
私は一気に青ざめてしまった。
「王子様って、そういうご趣味の方だったの……」
それからの毎日はいつも気を張りっぱなしだった。
王子を起こす時も、髭を当てるときも異常に意識して距離を取るようになった。
――だって、もしそんな場面になったら、私が女性だとバレてしまう。
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心配することが、そっち?
まあまあ、まだおぼこい鼻いぼ姫ですねぇ。
でも王子が勘違いされて可哀想ですねぇ。
早く安心させて上げて欲しいです。ほんと、気を揉みます。うふっ!




