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鼻いぼ姫  作者: チャロ吉
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2 私の加護

私が十歳の時に、精霊のおばあさんからもらった加護は、可愛い妖精だった。

モモンガの妖精だ。

十センチくらいの黄土色の毛並みで、可愛い円らな目をしている。

小っさい身体はフニフニしてほんわかだ。

ほっぺたをつまむと、ビヨーンと伸びる。


《や、やめてってばぁ! のびちゃう、のびちゃう〜!》


短い手足をバタバタさせている。

ヘンテコな表情もまた愛らしくって、きゅんっとする。

二人だけになると、こうして姿を見せてくれるモンモ。

一人っ子の私にとっては、大切なお友達だ。


「モンモ。今日もよろしく!」

《任せてッ! ほれ、ほれ、ほれれっ!》


モンモは、魔法が使える。

私の髪や顔を綺麗にしてくれたり、着替えを手伝ってくれる。

すっごく便利!


「お嬢様、おはようございます」


ばあやが扉の外から声を掛けてくる。

モンモはその声を聞いてビクンと震え、私にぴょんと飛びつき小さく固まる。

すっごく臆病で、恥ずかしがり屋のモンモがいるため、私の部屋には誰も入らないようにしてもらっている。


「今行くわ」


支度は、お世話上手なモンモがしてくれる。

だから、私にはメイドも要らないのだ。


食堂へ降りていくと、父様と、母様が待っていた。

いつもの光景だ。

給仕も執事も、ばあやも周りに立って待っている。

厨房への入り口には、配膳係のメイドも立って待っていたが、

誰も私を見ないように目を反らしている。

父様は、わたしのななめ上を見ながら話し出す。


「シャルロット。今日も可愛いのう。さあ、席について朝餉としよう」

「はい、お父様」


誰も私を見ないようにしているのは、私の鼻のすぐ下に、三センチくらいの、いぼ()があるせいだ。

初めは、顔の真ん中を十センチくらいの黄土色の塊が、すっぽり覆っていた。

モンモが、ピトッとくっ付いていたから……。

大きすぎて、息も苦しいし、前も見えにくかった。

だから、モンモにお願いして、小さくなってもらった。

みんなは、気になるようだけど、私は気にならない。

だって、モンモはいつも私と一緒にいてくれる。

いぼからは、お日様のようなモンモの匂いもするしね。


「泉の精霊様、今日も暖かいお食事をありがとう。いただきます」


父様のお祈りで、食事が始まる。

朝のメニューは、キャベツのスープと、カリッと焼いたパリパリのパン。

パンにはチョットだけイチゴのジャムがついている。

我が家はあまり裕福ではないけれど、使用人たちも同じものを食べている。

父様の方針だった。


「シャルロット。今日は家庭教師のエリー先生がいらっしゃるの。だからお出かけしないで屋敷の中にいてね」

「……でも、泉へ行ってこなくっちゃ。加護をもらったお礼をしなければダメだってお父様が仰ったでしょう?」

「おお、そうだったな。関心だぞ、シャルロット。泉へは儂と一緒に行こうな」

「ううん、一人で行ってくる」

「……そうか……ではそうしなさい」


父様は、少し寂しそうにしてたけど、私は今日こそおばあさんにきちんと会ってお礼をしたいのだ。

精霊のおばあさんには滅多に会えない。

ゾロゾロ人が集まると出てこないかもしれないから。

モンモは、精霊のおばあさんから頂いた加護だ。

あの時、幼かった私は、おばあさんに対して失礼だったと思う。

でも、おばあさんは気にしないでモンモをくれたのだ。


「優しい精霊なんだなあ」


泉は、屋敷から歩いて四十分くらいかかる。

疎らに木々が生えた小さな森の中に泉が湧き出していた。

細い道を辿って泉の辺に立ち、精霊に祈りを捧げる。


「太古よりここに御座す清き泉の精霊。優しい水の精霊。いつも私達を見守ってくれてありがとうございます。お姿を御表わし下さい……」


しばらくお祈りの姿勢を崩さずじっと待っていたのに、今日も姿を見せてくれなかった。

一ヶ月間、こうしてお祈りに来たけど、


「やっぱり……私の事、嫌いになった? 生意気な子供だったから?」


私はしょんぼりとして、とぼとぼと屋敷への道を戻った。



*****


あらあら、可哀想ですね。鼻いぼ姫様。

せっかく、心を入れ替えたのに、意地悪な泉の精霊はお姿を見せたくないようですよ。

おや、泉の水が泡立ちましたよ。いまごろになって精霊が現れましたねぇ。


《まったく! 毎日毎日。こっちが決まり悪くなるじゃない。生意気な子どもにお仕置きしたつもり……だったのに……まあいいわ。そのうち諦めて来なくなるでしょう》 


なんとまあ! モモンガの妖精は、加護と言う名のお仕置きだったのですか。

意地が悪いですねぇ。

年は取りたくないものです。


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