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鼻いぼ姫  作者: チャロ吉
15/19

15 大奥様の涙」

「大奥様、ヘンリー王子の従者が使いとして参っております」

「あら、ヘンリー王子の……?」

扉の外でそのやりとりを聞いていた。

おかしいと思っているでしょうね、大奥様は。ここへ王子からの使いが来るなんて、普通ではないもの。

でも、「シャーロット」と言っても、会ってはくれないだろう。

王子には申し訳ないが、従者の立場を最後に使わせてもらおう。

家政婦が、その場からいなくなり私は手紙を握りしめて、大奥様の前に立っていた。

「あなたは、いつぞや音楽室にきた従者ね」

「はい、その節は、お邪魔してしまい申し訳ありませんでした」

「いいのよ、それで、王子からのしらせを持ってきたと言うけど、北で問題でも起きたのかしら」

ここで思い切って話した方が良さそうだ。いつまでも隠しては話が進まない。

「ごめんなさい。王子様からの伝言は無いのです。私が、奥様に直接お会いしたくて、嘘を言ってしまいました……」

私は手紙を差し出してこう打ち明けた。

「この手紙は、私の家庭教師、エリー先生からの最後のお願いがしたためられています。でも、ここに書かれていることは、もう私には必要ありません。ただ、大奥様とエリー先生はお友達だと聞きました。先生の最後に書かれた文字です。どうぞ」

大奥様は、立ち上がり、小刻みに震える手で、手紙を受取った。

その後椅子に腰を下ろし、手紙を読み始めた。

大奥様は、一時間ほど掛けて、何度も何度も手紙を読み返していた。

目には涙を浮かべ、黄ばんだ手紙を優しく撫でて……。

――本当に、親しく思っていたお友達だったのね。

その後私に座るように言って、家政婦を呼び、お茶を持ってこさせた。

「あなたが、シャルロット・レイクシャーなのね」

「はい、両親が相次いでなくなり親戚が領地を継ぐ事になりました。暫くはエリー先生と、マナーハウスに住んでいましたが、先生も亡くなってしまいました。私はこの見た目です。男の姿に変えて、この公爵領で働くことにしました」

「そう……」


「私は、王子を謀って今まで従者をしておりましたので、罰が下るのでしょうか」

「王子はその様なことはなさ雷肩です。安心なさい。でも、これからあなたはどうするの?」

「王都へ行ってメイドか何か、仕事を探そうと考えております」

少し考えて、大奥様は、今のレイクシャーが大変な事になっていると教えてくれた。

「作物が取れなくなって、領民が逃げ出しているそうですよ。今の男爵様は、方々にお金を借りて回っている。その内返せなくなるでしょうね」

私はピンと来た。

泉の精霊の呪いだと。お父様は欠かさず泉にお祈りをしていたのに。

変な叔父様はそんなことはしなかったはず。

だから、作物が育たなかったのだ。

王都へ行く前に、男爵領へ言って泉の精霊にお祈りをすれば、意地悪な精霊は機嫌を直してくれるだろうか?


「シャルロット、あなたは行方不明となっていますよ。今名乗り出れば男爵の借金を負わせられるかも知れませんね。今の男爵は、自分は領地を預かっているだけだと言っています。男爵の地位も返還したいと……」

これは、大変な事になった。


大奥様は私に年齢をお聞きになった。「十五歳になります」と答えると、

「そうなのね。だったら、何とかなるかも知れないわ。シャルロット、私と一緒に王都へ行きましょう」


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