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鼻いぼ姫  作者: チャロ吉
14/19

14 婿には慣れません

「分かった、こうなったらクランでの取り決めをする。ここにいなさい、レーリア」

「……? あの、お兄様」

「私に任せておけば悪いようにはせん」

この男はなにをしようとしているの? サッサと姫様を連れて帰ればいいのに。

訳が分からずぼんやりしていると、クランチーフのお爺さまと一緒に話合いが始まった。

お爺さまはニヤニヤして、私には目もくれない。

「では嫁として、こちらにもらっても良いのだな」

「ああ、こうなっては致し方ない。だが羊五十頭、もらい受けたい」

「よいぞ、だが、クランに入ってもいいのだな」

「……ああ、我がクランは其方の傘下に入る」

「ではすぐに婚姻と相成る」

ちょ、待って。もしかして、私がぁ!?

困った。どうしよう。

このままでは男として結婚させられてしまう。

あとで、女だとバレたらどうなる?

私はベッドから飛び降りて、お爺さまの前に出た。

「若様は逃げられました。私ですよ、姫様といたのは!」

「……、其方が……まあそれでも構わん。こうして和平がなったのでな。其方ずっとここにおれ」

「そ、そんなぁ」

私は考えた。仕方がない、姫様は清い身体だと証明するにはこれしかない。

「わ、私は女ですからぁ、結婚なんてできません!」

「「!!!!!」」

それからは、てんやわんやの大騒ぎとなった。

やれ羊は要らんだとか。クランには入って貰うだとか……。

私と姫様は、二人で顔を見てフーッと息を吐き出し、黙って聞いているしかなかった。

長い夜は明け、一番鶏が鳴き出した頃、ノッソリと王子が帰ってきた。


私はブンむくれた。人身御供に私を差し出して逃げた王子に。

無視してそっぽを向く。王子は素知らぬふうを装いお爺さまに聞いている。

「……何かあったのでしょうか」

しらばっくれる王子にむかつく。

「ああ、和平がなった。其方の側女のお陰でな」

「側女……?」

「その鼻にいぼがある女じゃ。加護持ちじゃというておったな」

「まさ……か。ロットか!」

王子はグルリと首を回して私を見た。私は眉間にしわを寄せてにらみ返す。

――そうよ。女よ。どうする? ざまあみろだわ。

「ロット、其方今まで私といて……」

「はい、平気でした。だって王子様はお優しい方ですもの。よくして下さいましたわ。ほ、ほ」

「まったく、むすっとしておるようで、流石クランの若じゃ」

お爺さまは、カッカッカと大声で笑う。

王子は顔を青ざめてその場にへたり込んでいる。

そうでしょうね。同じ空間に一年以上も一緒にいたんですもの。

……もう、これでさよなら……だけれども……。

和平のために王子を利用としたお爺さま。我が身を守るために私を利用した王子。似たもの同士だわね。


そこへおばあさまが、蔭から私に手招きをする。

魂が向けてしまった王子と、機嫌がよすぎるお爺さまは放って置いて、私は素早く部屋を抜け出した。


奥方様は、黙って私の話を聞いてくれた。私は今までの胸のつかえが洗い流されていった。

「そうだったの。大変だったのね。でもこれからどうするの? ここにいて暮らしていく?」

「エリー先生から預かった手紙、元公爵夫人に届けたいと思います。大事なお友達の最後を聞きたいと思ってらっしゃるから」

一年以上も渡せなかった手紙は、懐に入れっぱなしで黄ばんでいた。

「分かりました。女のあなたが、いつまでも従者をしていられませんもの。護衛を付けてあげますから、一足お先に帰りなさい」

「ありがとうございました」


王子には一言も告げずに、私は三人の護衛に守られながら、公爵領へ帰った。

領都へ着いて、まずは傭兵ギルドへ入った。

丁度サムがいたので別れの挨拶をする。

大奥様に手紙を届けた足で、すぐにここを去るつもりだ。

今のうちに別れをしておこうと思う。

「なんだ、ここからいなくなっちまうのか」

「うん、色々ありがとう。お金がたくさん貯まったから。王都へ行こうかなって考えている」

「そうだな、お前いつまでもチビだから、王都で商売でもした方が安全かもな」

「うん、色々世話になった。さようなら」

「……ああ、元気でな」


次はいよいよ大奥様だ。


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