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鼻いぼ姫  作者: チャロ吉
10/19

10 もみくちゃ

王子はその日から「真っ直ぐ練兵場へ行きなさい」と言って、私は執務室へは行かなくてよくなった。

あまりにも不甲斐ない私に呆れてしまったのかも知れない。

だから今日から頑張ることにした。

王子の端を引っ張らないように、自分の身は自分で守る。

「何としても、二刀剣の使い手になってみせるわ」

傷だらけになりながら王子の部屋に帰る日が続いた。


領兵たちは容赦なかった。

「鼻いぼ! もっと速く走れ」

「鼻いぼ、飛べ」

「打ち込みがなっていないぞ、鼻いぼ」

こういう日々が数ヶ月続いて、私は強くなった……気がする。

そして私の細い身体にも筋肉がついた。ちょっぴりだけど。

ある日、王子自ら訓練を見てくれることになった。

「どれくらいの成果が出ているか見ないと、遠征には連れていけない」

――遠征……。

このところ、王子の親戚である部族が窮地に立たされていると、周りが騒いでいた。

助けに行くのかも知れない。

北の部族連合は緩い取り決めで纏っているが、血の気の多い部族はいつも諍いが絶えないそうだ。

そのまとめ役だった王子のお爺さまが、助けて欲しいと言ってきたのだろう。

「北へ行けば、何があるか分からない。精霊の加護を持つ部族長も多くいるから」

王子はそう言って北の方をぼんやりと見ていた。


王子と私は練兵場の中央で対峙した。

「どこからでも打ち込んで構わない」

王子がそう言った。強い王子は、私の打ち込みなんて屁でもないだろう。

思い切って踏み込みサッと横に踏み込みの足をずらし、王子の横腹に「えいっ」と軽く当て、すぐに距離を取る。

所謂、ヒットアンドウェイだ。

領兵に何度も反復された動きだった。

王子はその動きを読んでいて、私の攻撃をことごとくはじき返す。

慣れた動作に身体が滑らかに動くのが心地いい。

王子も長い間の鍛錬で、考えるより先に身体が防御の行動を取っている。

私の攻撃を軽くいなして、最小の動きをしている。

「これは仕方がない。こうなることは織り込み済み。でも……これはどう?」

そして私が王子の隙を見て、とっておきの一撃を加える。

横に行くと見せかけて、下から突き上げるように打ち込んだ。

背の低い私の必殺技だ。

王子は予想とは違う私の動きに慌てて、つい力を込めて私を突き飛ばしたのだろう。

肩に強い衝撃を喰らった直後、大きく後ろに飛ばされて、地面にゴツンと強か頭を打った。目の前にチラチラとお星様が見えて、光が暗く萎んでいく――

――乱暴に頬を叩かれ気が付いた。

どれくらい伸びていたんだろう。あの後の記憶が途切れている。

「鼻いぼ、よくやった。王子を本気にさせたぞ、お前」

負けたのに、領兵に褒められた。

私は必殺の一撃も通らなかったことに落ち込む。でも王子はこう言った。

「一週間後遠征に出る。準備をしておきなさい」

その場に呆然と座り込んでいる私を、領兵たちが担ぎ上げ、高く高く胴上げをした。

「わっしょい、わっしょい。よかった、よかった」

「鼻いぼー。おめでとう!」

「ひぃーーっ!や、やめてぇーー!」

《こ、怖いよう……》

モンモも私にしがみつく。こんな乱暴な祝い方は勘弁して欲しかった。

落ちたら死ぬから――戦闘でなくても、普通に死んじゃうからぁ!


*****


ロットは思っていたより格段に強くなっていた。素質があったとしか思えない。

この私を慌てさせるくらいには……。

九官鳥の加護は、強力だ。口から氷の刃を出して、敵を切り刻めるそうだし。

ロットは、連れていっても大丈夫だろう。

しかし、遠征ともなれば、狭いテントに二人きりになる。

このところの私はおかしい……。

ロットが近くにいると身体が熱くなるのだ。

……私は、若しかすると、本当に――御小姓趣味なのだろうか……。


*****


あら、まあ。


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