第9話:着艦
私は先行する五機に案内される感じで、山間部を縫うように飛行していた。
お父様を探すこと、お城と港街の被害の確認。全て叶わなかった。
『スフィア大丈夫?顔が真っ青だよ』
ティテが心配して何度も聞いてくれるが、今はその心遣いが、苦しい。
「ティテ大丈夫よ。ありがとう」
『全然大丈夫そうじゃないよ!』
笑顔を作ろうとしたが、ぎこちなくなってしまった。
「…そうだ、ティテは地図って読める?
この場所に行けってお父様に言われたの」
ポケットから地図を出して広げる。
『どれどれ…ここが港街で、南南東に…山脈、ここには湖ね…』
「どう?」
『スフィア。前の五機はここに向かってるのかも』
「じゃあ、前の戦闘機はこの場所に案内してくれているのね…あと、どれくらいか分かる?」
『まもなく着くと思うわ』
「こんな、山の中に何があるのかしら」
先行する五機が高度を上げ始めた。
私も機首を上げる。
『あ、スフィア…あれ…あれ見て』
気づいていた、目の前…空に巨大な。それは見たこともないほど巨大な物が浮かんでいた。
その巨大な物の上に出る。
「な、何?何これ…?」
私が見たのは巨大な飛行場が空に浮かんでいる姿だった…
『こ、これ…翔鶴?空母だわ』
「空母?」
『そう、海で戦闘機の飛行場になる船』
「海?でも、あれ飛んでるわよ…」
『妖精がいっぱいいる気配がするわ』
「妖精の…」
旋回して、後方から前方に飛行してみる。
「大きいわ」
近くを飛ぶとその大きさが良く解る。
街で一番大きな大聖堂を2つ横にして並べた感じかしら?
「ティテ。あの人。何か、こっち見て旗を振っていない?何してるのかしら」
『あれは…手旗信号よ』
「手旗信号?」
『情報を伝達する手段よ…あそこに降りろって言ってるわ』
私は目を丸くする。
「え、え?あそこに降りるの?」
『…そう言ってる…』
先行してくれた、A6M5が順に降りていく姿が見えた。
私はその様子を、旋回して眺める。
「私とこの機体で出来るの?」
『あのね、このキ44-IIIには着艦装備はないの』
「…」
『しかも翼がちっちゃいせいで他の機体より着陸速度が速いから距離を必要とするし、エンジン部分が大きくて前も見えにくいわ』
「じゃあできないの?」
『出来る出来ないじゃなくて、やっちゃダメな飛行機なのよ…』
「それでも、自力で何とかするしかないわよね?」
『止めた方が良いと思うよ…』
「お願い、助けてティテ」
『もう!いいわ、やってみましょう』
私は機体を振って、着陸の意思を伝える。
手旗信号によると。
翔鶴側も着艦に備えて、全速で風上に進み始め、甲板から後方に向かって、妖精による風も発生させて、向かい風によって着陸距離を減らしてくれるらしい。
私は、見るには大きいが、着陸するには小さな目標の甲板に向かって、高度と向きを合わせスロットルを絞っていく。
『高度が高すぎるわ、もう少し下げて』
「うん」
主脚を下ろし、フラップも降ろす。左右にフラフラし始めるが。操縦桿とラダーで姿勢を維持しようと頑張る。
『もう少しスロットル上げても良いわ』
ティテに従う。
「前が…空しか見えないわ」
『私の指示に従って』
「うん」
『そのまま、そのまま、ちょっとだけ機首上げ』
「うん」
『良いわよ、タッチダウンするわよ衝撃に備えて』
「はい!」
ドンという音と衝撃を感じた。
私はスロットル、操縦桿、ブレーキの操作を急いで行う。
「うぉーすっげー!」
「本当に降りたよ!」
外からはなんか歓声が聞こえてくる。
「危ない!」
「あれ止まれるのか!」
と思ったら悲鳴が聞こえる。
「ティテ?」
『だ、大丈夫。―――あ、あ、ちょっとだけ右に向けて!』
「はい!」
飛行機が動かなくなった…止まった?…
大歓声が耳に届く。
私はキャノピーを開けると、顔を出した。左も前も甲板が無かった。
右手から、大勢の人が駆け寄ってくる姿が見えた。
「姫様ー!」
「お嬢様ー!」
私は翼を伝って降りると。
みんなに揉みくちゃにされた。
城で見知った人がいっぱいいる
泣いている人も跪く人も見て取れた。
「みんなここにいたのね」
「スフィア様」
「ミレニア、良かった無事だったのね」
彼女は、子供時代から仕えてくれたメイドで、一緒に育った姉妹のような仲だ。
「はい、有難うございます、奥様も無事ここにおいでです」
「そう、良かった」
本当に良かった、私は気がかりの一つが無くなり胸を撫で下ろす。
「お会いになられますか?」
「うん、おね…」
「スフィア様?」
あれ、ミレニアの声が遠い、地面が近づく気がする、あれ、私、立ってない…
「スフィア様!」
ミレニアの叫び声を聞きつつ、私は意識を手放していった。
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