第10話:王子たち
王都に隣国の最新妖精旅客船が寄港した。
その客船ではレセプションが行われることになり、王家や有力貴族が招待されていた。
それに、当時八歳の私は連れて行ってもらい、王子と出会った。
私は初めて見る、多くの大人に恐怖で人酔いしてしまっていた。
「どうしたの?気分が悪いの?」
「大丈夫ですか?医務員をお呼びしましょうか?」
デッキで風にあたっていると、右手と左手側から二人の男の子に声を掛けられた。
金髪で青い瞳の男の子と、黒髪にアンバーの瞳の男の子だ。
「大丈夫です、少し酔ったみたいで、ここで風に当たっていれば良くなります」
私は二人にそう言ってカーテシーで応えた。
「そうなのか?では、冷たい飲み物でも持ってきてあげよう」
黒髪の男の子はそう言うと船内に入っていった。
「ご令嬢。ここに座ると良いよ」
金髪の男の子は、ベンチに真っ白な上質なハンカチーフを敷いてくれた」
男性のしてくれたことを無下にしてはいけないと言われているので、感謝を述べてお言葉に従った。
黒髪の男の子が、グラスを3人分持ってくると、二人は私の横に腰掛けた。
「あの、お二人はお知り合いなのですか?」
「いや、初めてお会いする」
「そうですね、失礼しました。私は、ハインツ・シュトルベルクといいます。宜しく」
黒髪の男の子が、微笑む。
「シュトルベルク?君は隣国の王子じゃないのか?」
「そうです、貴方は?」
「フランツ・ディシス・ブライドル。この国の王子だ、宜しく頼む」
あう、私、王子様に挟まれているの?
恐縮してしまう。
「お嬢さんのお名前を、お教えいただけませんか?」
「…」やだ、緊張で声が出ない。
「お嫌ですか?」
ハインツ王子が寂しそうに尋ねてくれる。
「君が何か脅かしたんじゃないのか?
私には教えてくれるね?」
フランツ王子の言葉に、小声でハインツ王子は「私は脅かしたりしない」と不満を漏らしていた。
「フフフ」私は可笑しくなって、失礼にも笑ってしまった。
「ご、ごめんなさい。私の名前は、スフィアルィーゼ。スフィアルィーゼ・アルマリンと申します」
「スフィアルィーゼ嬢か、素敵な名前だね」
「あ、ありがとうございます。ハインツ殿下」
「君はアルマリン侯爵のご令嬢だったのか。どうりでお綺麗だと思った」
「そ、そんなこと…ありません」最後の方はモゴモゴとした感じになってしまった。
「私も、綺麗なお方だと思っているよ」
王族の方がたの社交辞令が、良く解らない。
綺麗というのは、私の母のことだと思うのに。
「少し顔色が良くなったようだ」
「本当だ、まるで大輪の花のようだ」
王家の方は、女性を褒める教育をお受けなのかしら、私は真っ赤になって俯いた。
「スフィアルィーゼ嬢、この船は如何ですか?我が国が誇る最新の100メートル級妖精旅客船です」
「とても美しいお船ですね」
「ありがとうございます」
「海上なら我が国のほうが上だ、我が国の旅客船は160メートル級だ」
フランツ王子が、ハインツ王子に食ってかかった。
「フランツ王子、これからは空ですよ」
「スフィアルィーゼ嬢はどう思う?」
「え?」
「そうですね、スフィアルィーゼ嬢。これからは、この大きな空を行き交う時代になりますよね」
私は二人に見つめられるが、どう返せば良いのかわからないわ…
『いやーーーーー!』
(な、なに!?)
頭の中に叫び声が響いた。
同時に、身体の中を風が渦巻く感覚がして胸が締め付けられる。
何?これは…
「どうされました?」
突然立ち上がった私に、ハインツ王子が反応する。
「風がおかしい気がします」
「風が?」
ハインツ王子とフランツ王子が顔を見合わせている。
「精霊!風の精霊が悲しんでいます」
「?」
「そんな馬鹿なことあるわ…」
ハインツ王子の言葉が途切れ、一瞬空に放り出される感覚を受けると。足がデッキを離れた。
「うわーーー!」
「きゃーーー!」
船内から悲鳴が聞こえてくる。
旅客船が大きく傾いているのが見て取れた。
「なんだ!」
フランツ王子がベンチにしがみつき、ハインツ王子が私の手を取って支えてくれていた。
「ハインツ殿下、私を精霊の場所まで、お願い、連れってってください」
二人は私の目を見る。
王子も怯えている、勿論私もそう。
だけど、真摯に二人を見つめ返す。
「分かった、こっちだついてきて」
「はい」
「私も行く」
三人は頷きあって、船内へと向かった。
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