第11話:婚約
船内は、色んな物が落ちたり滑ったりしていて、悲鳴がそこかしこで聞こえてくる。
斜めの船内を滑らないように、三人で協力して妖精のいる場所まで向かう。
「こっちだ」
ハインツ王子は、船内を良く知っていた。妖精船が好きなんだそうだ。
「この船は落ちるのか?」
フランツ王子は心配そうについてくる。
だけど、両王子とも私の手を握って、庇うように進んでくれる。とても心強く感じた。
熱気の強い場所まで降りると、大人たちが叫びながら色んな装置や、弁を操作していた。
「解放弁を開けろ」
「排熱を処理するんだ」
「しかし、エンジン出力が下がります」
何を言っているのか分からないが、その横を姿勢を低くして通り過ぎる。
「風の妖精はこの中だ」
分厚い扉を三人で開け、中に転がり込む。
「で、どうするんだい、スフィアルィーゼ嬢」フランツ王子が聞いてくる。
ここまで連れてきて貰ったものの、実は明確な何かが有るわけではなかった。
ただ、ここに来なければ行けないという焦燥感に駆られた行動だった。
「ごめんなさい、妖精と話をさせてください」
私は、妖精に心のなかで話しかける。
妖精の悲しんでいる感覚は伝わるがそれ以上のことが分からない。
私は、背後を振り向くと。周囲を見回す。
ふと、この部屋に似つかわしくないカバンに目が留まる。
それが、凄く気になった…
私は、それに近づく。
「どうされました?」
二人が覗き込んでくる。
「これ、何ですか?」
ハインツ王子に尋ねる。
「開けてみよう」ハインツ王子は首を振るとカバンに手をかけた。
二つあるロックを外し、カバンを開ける、鍵自体は掛かっていなかった。
「う…」
私は、口元を抑えた。
中には十六の妖精が入っていた。
既に呼吸はしていない…
「なんてことを!」
ハインツ王子が壁を叩く。
「風の妖精は…この子たちを悲しんで。それで」
ガコン
「どうした!」
ハインツ王子の壁を叩いた音で気づいたらしい大人が入って来た。
「王子…なんでここに」
ハインツ王子は、カバンを指さし大人に知らせた。
涙が滲んで止まらない私を、フランツ王子はそっと抱きしめてくれていた。
***
理由や動機、それどころか犯人もわからないが、原因は分かったため、妖精旅客船は無事地上に戻ることが出来た。
地上に降りた私は、お父様とお母様の間で、フランツ王子とハインツ王子に、感謝されつつ、お別れを交わした。
***
数日後
***
私は、お父様に呼び出されると、フランツ王子との婚約が決まったと言われた。
それ以来、私は王都中心の生活となり、王妃教育を受ける事になった。
王子が何故、私と婚約する気になったのか…
今でも良く解らない…
***
私は、ゆっくりと目を開ける。
「スフィア様…」
ミレニアの声がする。
「お医者様を、スフィア様がお目を覚ましになりました」
ミレニアが誰かに話しかけている。
「大丈夫ですか?スフィア様」
「私、どうしたの?」
「着艦した後、気を失われたのです」
「そう…」
「長時間の飛行で、生命力を使われすぎたそうです」
あれ、ミレニアが泣いてる?
「ごめんね」
「何故、スフィア様が謝られるのですか」
「ごめん」
あれ、私も泣いてる?
その後、お医者様がいらして、暫く安静と言われてしまった…
***
ミレニアが横で林檎を剥いてくれている。
「私、夢を見たわ」
「どんな、夢ですか?
「殿下と初めて会った時の夢」
ミレニアの手が止まる。
「なんで、殿下は私と婚約したんでしょうね」
「…」
「こんなことになるなら、婚約なんてしたくなかった」
「…スフィア様、どうかお休みください」
「そうね」
(全てはこれからだものね…)
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