第82話:内戦ですから…
「お待たせしました」
直ぐに会議とはいわれたけれど、流石に私もミレニアも、先に城についていたフェリシティすら汗と土などでドロドロで、肌が服に張り付いて気持ち悪い状態だったので、湯殿と着替えをいただいてからとなった。
「ああ、綺麗だ…そのドレスも良く似合っている」
「あ、ありがとうございます」
そんなに華美なものは選ばなかったのだけど…嬉しい。
「ステファン卿、会議を始めませんか?」
広い、広い会議室に、多くの軍人が集まっていた。
その一人がステファン様に催促する。
「なんで令嬢の着替えのためにこの危急の会議を待たされるのか…」
軍人の中には、私みたいな令嬢が出席するのは快く思わないようだった。
仕方ないと思い、案内された席につく。
この会議には、私とフェリシティが参加させて貰う事になった。
フェリシティは、今日同盟が組まれる予定だったサウザントの代表として、私は……あれ?なんで?
「先ず状況を報告いたします」
先ほどの軍人が、書類に目を落とし話し始める。
「昨夜領境守備隊より報告が上がりました。王国軍が領境付近に出現陣容を整えつつ集結しているとのことです」
「王国は攻める気まんまんだな…」
髭をたくわえた偉丈夫がそう漏らす。
「しかも偵察にでた者の報告に多数轟音を吐き、大地を揺らして進む鉄の塊を目撃しております」
私は、その報告にフェリシティを見ると顔が青ざめていた。
「それはなんだかわからないのか?」
偉丈夫が問う。
「これは先のリリスラー戦でサウザントが使用したものと、報告内容が似ております。フェリシティ嬢。情報協力いただけないでしょうか」
会議場の視線がフェリシティに向かう。
「同盟締結を前提としても宜しいですか?」
「フェリシティ嬢。この会議に出席していただいた時点で、こちらには隠すものはない。サウザント、ウィンザーは同盟相手だと思っている」
ステファン様がそういう、これは実質の
同盟締結の瞬間なのだろう。あれ、ウィンザーともいった?
私はウィンザーではないですよ。そんな権限ないですよ。
「では、サウザント公爵家が長女フェリシティ・ド・サウザントです」
フェリシティはそういって立ち上がりカーテシーを行う。
「…王国の鉄の塊とは戦車だと思いますわ」
「戦車?」
ランツァウの軍人が、口々に発する。
「履帯により、どんな場所も走行可能で、弓や銃による攻撃を受け付けず、大砲で敵を粉砕する。地上の最強兵器ですわ」
「なんだと!攻撃を受け付けず大砲で攻撃だと!」
偉丈夫が椅子にもたれかかる。
「王国にはないと思っていましたわ…」
「王国がそんなものを…」
「どうすればいいんだ…」
「歩兵や騎兵では役に立たないといいたいのか?」
「サウザントはそれでリリスラーの地上部隊を壊滅させたのだろう?」
(あ、あ、いけない。この流れは良くないわ…)
「は、発言宜しいでしょうか?」
私はそういって手を上げる。
「どうぞ、スフィア嬢」
「スフィア?」
「今ステファン卿はスフィアといったのか?」
「アルマリンの魔王か」
「あれが…精強な4万の軍隊を一瞬にして無血で捕虜にし、山を割り、洪水を起こし、一夜で都市を水中に没したという」
(え?何それ何処の魔王?)
「静粛に!
お願いします、スフィア嬢」
「は、はい。
戦車は強力ですが、対処方法がないわけではありません」
「対処方法?」
ランツァウの軍人が訝しむ。
「はい。
また、制空権があれば、戦車といえど進軍はままなりません。
戦車は上からの攻撃には対処できません」
「そうなのか…?」
ランツァウの軍人が顔を見合わせている。
「ランツァウの実働可能機体数と機体をお教え願うことは?」
「それは軍事機密だ!」
偉丈夫が机を叩く。
「構わない、お教えしてくれ!」
「ステファン卿!」
「この席に参加いただいた時点で、機密などない!そういう状況だ!」
「ぐぅ……」
「アルマリン侯。運用可能な機体は300機です」
報告をしてくれていた軍人が教えてくれる。
「?」
あれ?
キ84 疾風が1500可動可能なんじゃないの?
「パイロットが育っていないんだ」
私の表情に、ステファン様が補足してくれる。
「ああ」
なるほど。
「すみません、ミレニアを呼んで頂けますか?
それと通信の使用許可をお願いします」
私はそう願い出た。
「何をする気だ!」偉丈夫さんが怒鳴る。
「アルマリンの戦力を呼びます」
「他領の軍隊を入れられるか!」
偉丈夫の眉間に皺が寄る。
「ごめんなさい。もう、ゆっくりご説明する時間がないんです。手配が終わればご説明します」
「わかった。手配を。責任はすべて私が取る」
ステファン様が扉の兵士に目配せする。
「ステファン。私のところの武官も呼んでほしいわ。最悪今このときにも攻め込まれる可能性があるわ」
フェリシティの発言。
「まだ、敵は展開中だぞ数日は余裕があるはずだ」
「いえ、ありません。地上軍を待つ必要は航空戦力にはないんです」
私は偉丈夫の発言に否をいう。
「なんだと」
「数日遅れでも、制空権をとった後なら、陸上戦力は被害なく都市を占領できるんです」
「え、な、なんだと?」
「王国軍もそれを知っています」
ソニアリシルがいるから。
「アルマリンがそうでした。早朝に空襲され地上占領軍は遅れて送られました」
「宣戦布告すらないんだぞ…」
「内戦ですから…」
「ちっ…どうすればいい!」
「ミレニア様と、サウザント武官クネル様をお連れしました」
会議室の扉が開かれ、ミレニアが入ってくる。
私は手招きで呼ぶと小走りに来てくれた。
クネルと呼ばれた武官はフェリシティの下に立つ。
「アルマリンの戦力を至急ランツァウに呼んでください。特に嫌がらせ部隊を直ちに送るようにいって。それと、ウィンザー公に同盟はなった。ランツァウ危機により航空戦力の救援求むと連絡を」
「はい、ウィンザー公にはビンセントから回していただいても?」
「そうねその方が通りやすいでしょう。至急お願い」
私はここにいる人たちに聞こえるように大きな声でいった。
「わかりました
通信室をお借りします!」
ミレニアが兵士に連れられ部屋を出て行く」
「同盟が成りました。私が調印いたします。ランツァウが王国に狙われました。可能な兵力を特に工兵を多く送るように、連絡してください」
「直ちに!」
フェリシティの命令も飛ぶ。武官が出て行った。
「アルマリン侯、何故貴公がウィンザー公のように同盟の話をされる!」
将軍と思える綺羅びやかな軍服の人が声を上げた。
「申し訳ありません。ですが受け入れて下さるはずです。ステファン様。直ぐにウィンザーの領事を呼んで調印をお願いします」
「わかった、手配しよう」
「現在王国とウィンザーは王国と接している領域が小さくなっています。余剰とはいえませんが航空戦力に余裕ができています。それを回してもらいます」
とにかく、制空権を取られないようにしなければいけない。
「サウザントから戦車を移動させるには時間は無いですわ。ですので歩兵と工兵を多く呼びました」
「何故工兵を?」
ランツァウの軍人に問われる。
「戦力が整うまでの遅滞作戦を行うためと、野戦飛行場を作るためですわ。
ステファン。物資の用意はお願いしますわ」
「わかった、ランツァウの兵士動員を急げ。サウザント、アルマリンとの協力体制を急いで構築するんだ」
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