第81話:それは言うは易しですわ
「それじゃあ、スフィア嬢は向こうの王国兵を無力化していたのか?」
ステファン様が驚いて見せる。
「スフィア…貴方らしいけど…」
フェリシティまで?
グランド・ステアケース(大階段)から、応接室へ移動した。
ステファン様に抱きかかえられ
腕の中で泣きやまない私をみんなは待ってくれた後のことだった。
「すん…
王国兵は、私たちを捜索するため10名程度の分隊編成でした」
私は城から見てサウザントの領事館のある川向こうでの行動について話始める。
「そうだね、もっとも効率的に運用できる単位だったんだろうね」
「T字路で挟み撃ちしてきた人数もそうでしたわ」
フェリシティが緩く握った手を顎に添える。
「ならば、彼らなら各個撃破も容易と考えました」
私は傭兵の方を向く。
「気になっていたけど…彼らは?」
「傭兵さんたちです」
「傭兵?」
「初めましてランツァウ卿。傭兵団「蒼騎士」の団長ヴァンガードという。お見知りおきを
…できれば衛兵の銃口を下げていただきたいんだが」
「蒼騎士?王国についた傭兵団という情報があったと思うが…」
ステファン様が傭兵団に向き直る。
「そのお嬢様のせいで王国に戻れなくなったんでね、この国から逃げようと思ってたところだったんだ」
「ステファン様、傭兵さんが助けてくれたんです」
「スフィア嬢を彼らが?」
「借りを返すためにね」
ヴァンガードが頬をかきつつそういう。
「借り?」
ステファン様はそれを訝しんだ。
「傭兵さんは味方です、私は傭兵さんを雇いました」
「雇った?スフィア嬢のせいで王国に戻れなくなったという傭兵を?」
「スフィア。貴方は何を考えてるんですの?」
「お止めはしたんですが…」
あれ、あれ?フェリシティとミレニアが呆れてる?
「…スフィア嬢が信用したなら、私も信用しよう…裏切らないでくれ。スフィア嬢が傷つく」
「善処しよう」
「それで各個撃破とは具体的に?」
ステファン様が傭兵から視線を私に戻す。
「街の地図を見て、私たちが通りそうなところに陣取って、やってくる王国兵の足を撃って貰いました。襲撃したら場所を変えて来なくなるまで」
ステファンの問いに答える。
「夜に銃で武装した兵士の足を撃てとか、このお嬢さんは無茶苦茶です」
ヴァンガード傭兵団長さんが嘆いた。
「そんなに難しくないですよね?一部隊5人程度動けなくすれば無力化が可能でしたし」
私の言葉にヴァンガード傭兵団長が項垂れる。
「……スフィア。それは言うは易しですわ」
「え?そうなの?」
なんだろう、私以外が肩を竦めて掌を上に向けている…
「橋の狙撃兵はどうしたんだい?」
「傭兵団にも狙撃兵の方がいたので明るくなり始めたところで牽制してもらいました」
「なるほどね…」
「なので、兵士を向かわせて王国兵の治療をお願いします」
なんだろう、私以外が驚いた顔で、肩を竦めて掌を上に向けている…
「…わかったよ、兵長聞いた通りだ手配を頼む」
ステファン様の命令に兵士の一人が敬礼して部屋から出て行った。
よかった。
「そういえば、ステファン様たちはどうやってお城に?」
「ノース公の領事に助けられた…」
ステファン様が答える。
「ノースに?」
「ノースの領事館にも私たちがランツァウを訪れていることは伝わっていましたわ」
そう…でしょうね…
「ノースの武官に逃げているところで会い。案内されて領事館に、そこからノースの車に隠れて城まで送って貰ったんですわ」
「サウザントとノースは同盟というより敵対状態だからね…信用できなかったんだけど…」
「ノースの武官にこういわれましたの。『ノース公よりスフィアルィーゼ・アルマリンは王国に無くてはならない存在だ。何か有れば全力で支援せよと各出先機関に通達が出ている』と…」
「ノース公は随分スフィア嬢を買っているみたいだよ」
「そうですか。ノース公…お会いすることがあればお礼をしなければ…」
私は、ピューリッツでお会いしたノース公の顔を思い浮かべる。
「スフィア嬢…戻って直ぐで申し訳ないが、君にも参加して欲しい会議があるんだ…」
ステファン様が申し訳なさそうにそう言ってくる。
「会議ですか?」
「王国軍がランツァウ領境に集結しつつあるんだ…」
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