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【10000PV突破】令嬢戦記~断罪された侯爵令嬢、妖精とWW2戦闘機で逆転する~  作者: 奏楽雅


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第80話:良かった。良かった。

「まったく…」


私に突きつけた騎士の向ける銃口は微動だにしない。


「貴方が王妃になってくだされば良かったのに。

私たちは貴方がなることをずっと望んでいたのですよ」


私に対する憐憫ではない、望みが叶わなかったことへの悲しみの言葉。

騎士の目は悲しみの色だった。


(私だって…私だって)


「お別れです。私たちはランツァウ卿を追わなければならない」


「お嬢様…」


「ミレニア…」


「「ごめんなさい」」








パアァァァ……ァァァアアアン




閉じた目。


耳に届く銃声がゆっくりに聞こえる。



助かってね、ステファン様、フェリシティ…


ガィィイイン


パァァン

  パン

 パアァァン パパァン

     パン


…そんなに撃たないで…お願い……



 

「何だ貴様らは!」


ドグッ


「グェッ」


…?


「何をしてる、立て!」


「え?…何?」


「お嬢様!」


ミレニアの声に、薄っすらと目を開ける。


「逃げるぞ!」


「え?っと誰?」


平民の服を着た見知らぬ男たちが私を見ていた。

周りを見渡すと先ほどまで銃口を向けていた騎士と兵士たちが倒れて呻いている。


「どういう…」

状況が飲み込めない…


「早く来い!」


「???」


私はミレニアと男たちについて走り始めた。


「失礼ですが貴方たちは?」

男たちを警戒するミレニアに手を引かれて走る私は、横を走る男の人に話しかける。


「覚えてないかい?」


「え?」


「ふっ、わかんねえか。じゃあこういおう。

借りを返しに来たぜ」


「…え?え?もしかして…

傭兵さん?」


「そうだ」


そうか、この人たちはピューリッツ子爵領都を襲った、王国の傭兵部隊の人たち。


「どうして?」


「ん?そのどうしては何に係ってるのか知らないが、借りは返すものだろう」


「でも、貴方たちは王国の…」


「あの状況で戻れるわけないだろ…4万の捕虜の負け戦の責任とかとれんよ。

しかたなく国外に逃れようとしたが上手くいかず、中立のランツァウに身を隠していたんだ。

そうしたら、泥だらけのあんたがバイクに乗ってこの街に現れたってわけさ」


「はあ…」


「そして見張りを出していたらこの状況だ。借りを返すチャンスってやつに巡り合ったのさ

…ん、どうした?」


「いえ、無事にピューリッツから脱出することが出来たみたいで良かったなって」

私は心から安堵した表情を浮かべる。


「…相変わらず不思議なねーちゃんだな」


「貴方、お嬢様に対して話し方が失礼です」

ミレニアが傭兵に注意する。


「ミレニア。いいの、この人たちは命の恩人なんだから」


「そう…ですが…」


「すまんな、別に敬意がないわけじゃないんだが…」


「いいんです」


「お嬢様…」


「ミレニアもありがとう、残らずに逃げて欲しかったけど嬉しかった」


「いえ、私がするべき行動をお嬢様にさせてしまいました…申し訳ありません」

私の手を引くミレニアの手に空いた手を添える。

「謝らないで…」


「…感動的な話のところ悪いが、これからどうするんだ?」


「ランツァウの城に行きたいのですが…」


「簡単に言ってくれる……だが、わかった」


***


「地図を見せていただけますか?」


ランツァウ領都の地図が広げられる。


傭兵の数は40名弱。周囲を固めてもらいプチ作戦会議を行う。


「王国の部隊は10人程度を1部隊にして行動しているようだった。総数はわからん」


「そうですか…たぶん、それ以外に狙撃兵が要所に陣取っていると思われます。

何人くらいいると思いますか?」


「狙撃兵は、そんなに多くないだろう。仮に100人の中隊規模なら。いても5人程度だろうな」


「狙撃兵が使ったのは九九式狙撃銃だと思います。有効射程1500メートル。対岸からの狙撃でした」

傭兵隊長とミレニアが教えてくれる。


「…そうするとこの辺の橋に一人ずつ配置している可能性が高いですね」


「だが、目撃の情報があれば、その前後の二つの橋を押さえるように移動する可能性が高いな」


「そうですね

対岸に渡るには、大きくしかも早く遠回りをするか。橋以外を渡るしかないですね」


「…作戦を変更します」


「ランツァウの城に向かうのをやめるのか?」


「最終的には行きますが…その前に王国兵を無力化しましょう」


***


鳥が鳴き始め、空が白み始めたころ。

私は傭兵たちの手によってランツァウの城に辿り着くことができた。


城門には兵士が多数配備され、障害物が置かれていた。


「止まれ!」城門に近づくと兵士に銃口を向けられ。制止を求められる。


「スフィアルィーゼ・アルマリン侯爵代理です。ランツァウ公にお目通り願えませんか…」


私とミレニア。護衛に傭兵隊長とその部下一人についてきてもらい。銃口を向けられつつ兵士に事情を説明すると、何故か直ぐにエントランスへと通してもらえた。


「スフィア嬢!」


「スフィア!」


グランド・ステアケース(大階段)に、ステファン様とフェリシティが姿を現す。


「あ、あ、あ…」

視界が歪む。声が上手くでない…


それでも脚が階段へと駆け出していた。

ステファン様も大階段を駆け下りる。


(良かった。

良かった。

良かった。

無事だった。

ステファン様もフェリシティもいる)


「ステファン様!」


「スフィア嬢!」


(あ!)


階段で

一晩中駆けまくった足がもつれる

嫌!転ぶ!


後ろに倒れそうになる、天井が見える。


「スフィア嬢!」


ステファン様の声と同時に腰に手が回され身体を支えられる。


引き上げられ顔がステファン様の胸に押し付けられた。


「良かった。

良かった。

よく無事でいてくれた」

まわされた腕に抱きしめられる。


「ステファン様…」


それ以上は涙で言葉にならなかった。



お読みいただき有難う御座います。

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