第63話:がんばれスフィア
「スフィア候。何か決まりましたか?」
応接室で机に広げた地図を眺めていると、みんなが集まってきた。
私は、みんなに微笑みながら首を振る。
なのに、みんな笑みを浮かべて、机を囲んできた。
「要は飛んでこれないように、飛行場を使えなくすれば良いと思ったんだけど」
私はポツリという。
「良い手だけど…飛行場って思った以上に復旧が早いよ」
ジュリアンの言葉に頷く。
(たぶん、どんなにボコボコにしても半日もあれば元に戻ってしまう)
「湖にでもしてしまえば使えなくなると思ったけど…」
「湖?」
視線が集まる、私は王国の飛行場を指さしてそのまま近くの山の上へと動かす。
「カルデラ湖っぽいけど?」
「飛行場に穴を開けた後で、湖の外輪を崩して水を流し込もうと思ったの」
「「ええっ?」」フェリシティとミレニアが驚く。
「大胆なことを…」ルーシャンが嘆息してしまう。
「可能なのか?」エリオット様が検証する。
「いくら何でも地形を崩せないだろ」ジュリアンが怪訝顔だ。
「うん、そう思う。
…それに、出来ても周辺への被害が大きすぎると思って…」
なので、断念したわ。
「君のことだ、当然人死には出ないように考えているんだろ」
「出来れば…」
「「「「「ふぅ」」」」」
(みんなで嘆息して首を振らないで)
もし人的被害を考えずに、本気で飛行場を無くすつもりなら、重巡利根の艦砲射撃を行えばできると思う。
ビンセントから聞いた話しだと、利根の主砲塔4基8発の砲弾は一斉射で野戦飛行場なら更地にできると言っていた。
しかもそんな攻撃を毎分3発以上で1,000発撃てるらしい…
(そんなの怖くて使えない)
「いっそ制圧してしまってはどうなの?」
フェリシティが飛行場に自領の駒を置く。
「それは、飛び地になって防衛が困難だわ」
領境から離れすぎている。
「前線を押し上げないと厳しいか」
ジュリアンが腕を組んだ。
「押し上げれば宜しいんじゃなくて?」
フェリシティがそう言って、私の前に子爵領とサウザントの領境にあったサウザントの地上部隊の駒を寄せてくる。
「面白い話をしているね」
リッツ子爵の声が聞こえると…
ジャラジャラと、私の前にブランシェの駒が置かれた。
「子爵…」
私は、二人の顔を見る。
フェリシティは照れたように笑い、
子爵は頷いていた。
(うん)
「ミレニア。翔鶴、瑞鶴は今どこかしら?」
「あ、はい、北西400キロにて哨戒待機中です」
「そう…」
「利根はどうなってます?」
「演習中です、もう実践でもいける頃だと思います」
「…利根を呼べますか?」
「お使いになるのですか?ここまで2日ほどかかりますが可能です」
私とミレニア以外は何をいっているのかわからず顔を見合わせている。
「うん、翔鶴と瑞鶴も呼んでください、一気に戦線を押し上げます」
(それと…)
「何か欲しいものでも」
子爵が聞いてくる。
「子爵とフェリシティにお願いがあります」
私は、応接間に飾られた飛行機の写真を見ながらそういった。
***
利根と地上部隊を待つこととなり、その間の哨戒は私と、フェリシティ、ミレニアでJ2M3雷電隊を指揮して行っている。
進攻作戦は、ウィンザー公、サウザント公には報告済みだ。
ウィンザー公は、「そうか任せる良いようにやってくれ」といい。
サウザント公は、「面白いガンガン行け」と後押ししてくれた。
こんな小娘を信じていいの?と思わないでもない。
「今戻ったわ」と飛行帽を片手にフェリシティが朝の哨戒から戻ってきた。
フェリシティも正式に私たちと一緒に飛ぶことが認められた。
サウザント公は、不束な娘だが末永く良くしてやってくれといっていた。
(嫁入りですか?)
「地上部隊の展開が遅れそうね」
「地形も影響するので…そのようです」
「サウザントで発掘された新兵器も投入予定だから」
フェリシティがそんなことをいう。
(なんだろう?)
できれば、作戦立案者には教えてほしいけど。私も利根を秘匿しているからなんともいえない…その辺は合同軍だししかたがない…のかな?
***
作戦前に一回利根に行きたいと思った…
性能把握をしたかったんだけど。
一回飛んだ利根には、翔鶴のように戦闘機で乗り込むことができないことに気付いた…
「無理です」
ミレニアに聞いてみた。クレーンで引っ張り上げられるそうだが、止まらないといけないし高度も下げないといけないので、作戦行動中はどうにもならないとのことだった。
「そうだわ、一回翔鶴に戻って、翔鶴の上を利根に飛んで貰えば、クレーンで移動できるじゃない」
「えええ!」
ミレニアにビックリされた。
「え、え、そうなの?できるの?」
困惑もさせた。
「そんな危険なこと、作戦前の今すべきではないです」
でも、却下された。
(残念)
でも、確認事項があるので、翔鶴には行くことにした。
B6N天山に迎えに来てもらい、ミレニアの操縦で私とフェリシティを連れて行って貰う。
「ななな、何ですのこれ、こんな物が飛ぶんですの?」
結構驚いてくれた。
(ちょっと嬉しい)
フェリシティへの艦内の案内をミレニアにお願いして、
私は、ビンセントと作戦の最終確認を行う。ミスティも居てくれたので丁度良かった。
「次は格納庫」そう独り言て格納庫へと走って向かう。
***
「間に合いそうですか?」
私は整備員に声をかける。
「スフィアお嬢様。ご指示の件はほぼ終了しました問題ありません」
「今回は艦爆、艦攻も必要な作戦です、どうか万全に宜しくお願いします」
***
「ティテごめんね…今回は一緒に飛べなくて…」
『スフィア。頑張ってるんでしょ…だからいいの…』
整備員の足音や、工具や機材のけたたましい音が響く中、ティテの声を聞きつつ…
『あれ?スフィア?』
「……」
『…寝ちゃったの?』
「…」
『がんばれスフィア』
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