第59話:言うと現実になってしまいそうで
ノース公とは不戦の約定。
サウザント公とは同盟が締結された。
ウィンザー公の反体制軍が、接する交戦領は王国のみとなった。
全力で東進が可能となり、サウザント公との共闘も可能になったのが大きい。
「今後どうなるのかしらね」
王国全土が戦火に蹂躙されるのは本意ではない。
「どこかで和解が出来れば良いのだけど」
「そう上手くはいかないと思います」
ミレニアが私の呟きに返してきた。
ここは子爵に用意していただいた、アルマリン兵用の館。
操縦員だけで60人近くいるから。どうぞって言われたわ。
今は食堂に集まって夕食中。
「今後どう攻めるか、明日の会議で決まるわ」
明日はウィンザー公派とサウザント公派の貴族が集まり今後を話し合う事になっている。
私も朝には、ここを発ってそれに出席する予定。
「今もって、王国軍の方が兵力が上だからね…」
「イス公爵も同盟に加わってくれれば良いんだけどね」
ジュリアンのぼやきに、ルーシャンが別方向のぼやきを言う。
「イス公爵とは、現在サウザント公が交渉しているらしい」
とエリオット様。
「他にも中立のランツァウ公爵家にも働きかけてますわ」
何故か帰らずにそのまま残っていらっしゃるフェリシティ。
「スフィア、貴方ならこの状況、王国側になったとしたらどう動きます?」
フェリシティが私を見るとそんなことを言ってきた。
「王国側で考える戦略ですか?」
つられたのかみんなの視線も私に集まる。
「そうですね…私なら」
◇◇◇
「陛下、今ならまだ講和もし易いはずです」
新王に仕える文官が、ウィンザー、サウザントの同盟を懸念して進言した。
「お前は俺に、王位を父上に戻せと言っているのか?」
玉座で頬杖をついた新王フランツが、不機嫌そうな小声で言う。
「決してそのようなことは」
「奴らの要求の一つはそれだろうが」
フランツは声を荒げ立ち上がった。
肩で息をする。
まだ15歳だと言うのに、眼窩が落ちくぼみその年齢には見えない。
「くそ!上手くいかん」
――全てが噛み合わない。
何故だ、力を与えてくれたソニアリシルの言うことに従い、王位までは手に入れた。
タイムスケジュール的には20年は前倒したはずだ。
「アルマリン。スフィアァァァ…」
「ちょと可愛いからって…
結構可愛いからって…
綺麗だからって…
横に置いてやったのに。
反旗を翻すとは恩知らずめ」
――容姿に隠れた変人のくせに!
そう心の中で吐き捨てる。
「ソニアはどうしている!」
「街へ買い物に行かれました」
「くそ!」
これなら、スフィアやフェリシティのほうがまだマシだったとフランツは思った。
「何か公爵どもを静まらせるアイデアは無いのか!」
本当なら近隣国の二つ三つ征服している予定だった。
「持久戦に持ち込み、弱小貴族の離反を狙っては如何でしょう」
文官の一人が発言する。
「工業力はともかく、耕作地の少ない中央だぞ先に干上がるのはこちらだ」
フランツは冷ややかな目でその文官をみると、文官は押し黙った。
「中立などと言っているランツァウ公爵領を接収しては如何ですか」
「ランツァウ公爵は、俺の友ステファンの家門だぞふざけるな!」
「こ、これはソニア王妃の提案です」
「なんだと」
「ランツァウを滅ぼし、それをウィンザー、アルマリンの手によるものとし、王国はそれを救おうとしたが間に合わなかった。そして打倒ウィンザー、アルマリンの気勢を上げろと…」
「あいつの考えそうなことだが…しかし」
◇◇◇
背筋に冷たいものが走った。
まさか、そんなこと
いくら王子でも
ステファン様…
「どうしたのスフィア?」
「いえ、自分の考えが怖くなっただけです…」
「「「「「?」」」」」
***
翌朝。私は、ミレニアとフェリシティを連れだって同盟締結ごの合同会議が開かれる会議場に向かって飛び立った。
「結局昨日は、何を考えたのか教えてくれませんでしたわね」
「申し訳ありません」
「無理には聞きませんが…」
「言うと現実になってしまいそうで怖いのです」
「そ、そうね、そういうことも有るかもしれませんわね…」
フェリシティはそう言うと押し黙ってしまった。
子爵領とサウザント侯爵領の領境に程近い、山間の飛行場に降りる。
飛行場は雑多な飛行機でいっぱいになっていた。
「どれくらいの貴族が集まるのかしら」
「一応子爵以上に絞られていると聞かされています」
ミレニアが耳元で教えてくれる。
その時、向かっている館のメイドの中に見知った人がいるのに気が付いた。
「――まさか」
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