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令嬢戦記~断罪された侯爵令嬢、妖精戦闘機で天翔けて逆転する~  作者: 奏楽雅


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第58話:スッキリしましたわ

「第6回目。開始してください」


「ちょ、ちょっと待って!」


「…なんでしょう、フェリシティ様」

ミレニアの開始にフェリシティ嬢は待ったをかけた。


「何よあの機動!」


「え、私?」


「ありえないでしょ、どんなインチキよ!」


(まあ、シルヴィだからできる、機動だとは思うけど…)


「別にインチキではないですよ。空でインチキとかできませんから」


『うんうん』


「キィーーーーー!」


「フェリシティ様」

(ミレニア?)


「プロペラは横向きでは空気を掴めず推進できません」


「当然ね」


「スフィア様は横に滑らせて推進力を意図的に喪失させたのだと思います」


「え?」


「これは、エンテ型+プッシャー(推進式)プロペラという非常に稀有な機体構造の弱点を逆手にとった機動だと思われます」


「弱点?」


「恐らくスフィア様の機体は、姿勢によってプロペラが空回りしやすい機体なのだと思います」


「そんな…」


「キ64やA6M5などトラクター(牽引式)の機体ではフォワードスリップで横に移動するだけで横向きになんてなれません」


「…」


「ですが、そうであっても、普通は考えないし、考えてもやらないと思いますけど…」


(あれ?褒められてない?)


「ふ」


(ふ?)


「ふふふふふ

怒ってるのがバカらしいわ、そんなバカな人に。

良いわ、私の負けよ、負けでいいわ」


「え?勝ったの?勝ちでいいの?」


「やったねスフィア」

「スフィア殿さすがです」

「ハラハラしましたよ、スフィア候」


「あ、ありがとう、ジュリアン、ルーシャン、エリオット様」

私は称えてくれた三人に感謝すると…


「上空アルマリン機、サウザント機へ、決闘は中断願います」

突然ヘッドセットに地上からの通信が入った。


「北方より敵機。

迎撃願います。

当飛行場が標的と推定」


緊張が走る。


「機数は30機、編成は不明です」


「ふふふふふ

勝負よスフィアルィーゼ!」

フェリシティ嬢が何か言い出した。


「え?勝負はつきましたよね?」

(何をいっているんだろう?)


「二回戦よ!どっちが多く落とすかよ!」


「えーなんですかそれ!?」


***


迎撃は撃退に成功。


途中で後詰のアルマリン局地戦闘機J2M3雷電30機が来てくれたのが大きかった。


J2M3は、空母に積めない局地戦闘機で、重戦闘機らしく、昨日脅威に思えたキ61でも容易に手出しできる相手ではなかったようだった。


これで、だいぶ戦力は揃ったはずよね。


(サウザント公爵との同盟が成せれば良いのだけれど)


私は横を飛んでいる、フェリシティ嬢を見る。真っ白な機体から長く伸びる水蒸気を吐き出していた。

その煙は、フェリシティ嬢の頭から昇る怒りの湯気のように思えてしまう…


『スフィア。少し失礼なこと考えてるでしょ』


「…」


***


今朝と同じ執務室に同じメンバーが同じ場所に集まった。


「引き分けで良いですわ」


撃墜は、私もフェリシティ嬢も3機だった。


(あれ?1回戦目の私勝ち分は?)


「何か?」


「いえ、それよりこの場合、同盟はどうなるのですか?」

一番の心配事を聞いてみる。


その時、扉が開かれ通信兵が入ってきた。

「司令官、伝信です」


「応接中だぞ」


「ウィンザー公爵からの、最重要電文です」

子爵は、メモを受け取ると目を落とし、怪訝な顔をすると、私にも渡してくれた。


メモにはこうあった。


『ウィンザー、サウザントで同盟締結』

私はフェリシティ嬢を見る。


「同盟は締結されましたでしょ」

フェリシティ嬢はしれっとティーカップを抓んで口元に運んでいた。


「どういうことですか?」


「王子、今は新王みたいですけど、フランツ様と私は生まれたときから婚約が決まってましたの」

(そうなの?)

ミレニアを見ても首を振っていた。


「私はそれに従い、想いを募らせ、勉強も必死にしてまいりましたわ」


「……」


「それなのに、突然婚約を破棄されて…

自分の何が悪かったのか考え悩んでいたら、貴方との婚約のためだと聞かされましたの」


「そ、それは…」


「許せると思いまして?」


「申し訳ありません」


「だから、私の決闘。要は私の気持ちの整理を約定の条件に入れさせて貰いました」

(随分と私的な…)


フェリシティ嬢の手が震え、カップとソーサーが音を鳴らしている。


「でも、貴方と戦ってスッキリしましたわ」


「……」


「令嬢のくせに、信じられないおバカなことを考え、後先考えず行動して」


なんか後ろでミレニアが頷いている気がするのは気のせい?


「向こう見ずで…ふふふ。面白いですわ」


「あ、う、どうも」

なんと返したら良いのかわからない。

でも、フェリシティ嬢の怒りは無くなっているように思えた。


「これからふられた者同士、王子をぶっ叩きに参りましょう」


(ぶっ叩く…ですか?)


フェリシティ嬢は右手を差し出してきた。

私はその手を取って固く握手を交わした。


「はい、ぶっ叩きに行きましょう」


なんか友だちになれそうな予感がした。


お読みいただき有難う御座います。

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