第57話:相手から突然消えたように見えるわよ
「ふふふ、気分が良いわ。降参するなら認めてあげても宜しくてよ」
フェリシティ嬢の勝ち誇る声が耳に届く。
「いえ、続けさせて下さい」
流石にこのままで負けては、戦姫を名乗っている手前、士気に関わってしまう。
「だ、第3回目初めてください」
ミレニアも動揺している?
私は第二回目を踏襲した機動をとる。
後ろについたまでは間違いでは無かったはず…
気を良くしている、フェリシティ嬢も同じ戦法みたいだ。
***
『また後ろにつけたけど、どうするの?』
「うーん」
『普通はハイ・ヨーヨーで待つのがセオリーよ』
斜め上に一旦上昇し速度を落とすことをシルヴィは提案してきた。
「うーん」
『どうしたのよスフィア。おトイレなの?』
「ち、違うわよ!」
(なんてこと言うの!)
「ちょっとやってみたいことがあって」
『やってみたい?』
「さっきのバレルロールで…」
『さっき失敗したじゃない!』
(聞いてよ。もう)
とか思っていると
フェリシティ嬢が、また同じバレルロールを開始した。
私は、気にせずにシルヴィをオーバーシュートさせる。
『な、何してるの!?』
当然、直ぐにフェリシティ嬢に後ろにつかれてしまう。
『早く引き離さないとまたポイント取られちゃう!』
「良いの」
『良いわけないじゃないのー』
私は左右に機体を振るが、フェリシティ嬢は振り切れない。
だけど…
「ここよ!」
『何、何する気!』
◇◇◇
「うふふふ、何回も同じ負け方をするなんて」
フェリシティは前に飛び出た、スフィア機をバレルロールから直ぐに追掛けた。
縦列に積んだ二つのエンジンのトルクが、二重反転プロペラ使って空気を強引に切り裂いていく。
猛烈な加速力が、バレルロールで減速しても直ぐに追いつくことが出来る。
「あんな、後ろ前のわからないヘンテコ飛行機に負けるはずないわ」
スフィアを三回目のガンサイトに納める。フェリシティは笑いが止まらなかった。
――え?
と、フェリシティは自分の声が漏れたときにはスフィアを、オーバーシュートしていた。
一瞬、スフィアの機体が横を向いた気がしていた。
「スフィアルイーゼ様、1ポイントです」
ヘッドセットにスフィアの付き人の声が響いた。
「え?負けたの?なんで!」
フェリシティには理解が出来なかった。
◇◇◇
『か、か、勝ったわ、1ポイントだけど取り戻したわ!』
シルヴィの喜ぶ声が操縦席に響き渡る。
「うん、やったわ!」
『凄いわ、凄いわ』
私はシルヴィと喜んだ。
「…第4回目開始してください」
ミレニアも理解できなかったみたいね。
私はフェリシティはまた大きく8の字を描いて、第4回目に入る。
私は先ほどの上昇をするが、フェリシティは遠回りをして上昇するようだった。
(同じ高度まで上がるつもりね)
そうすると、高度10000で再度のヘッドオンになった。
「く、空気が薄い」
翼が空気を捉えず、推力でだけで飛ぶ状態だ。舵も効きづらく、直ぐに翼端失速する。
『でも、この高度ならこちらが設計上では上よ!』
高高度同士だと、設計性能が物を言うみたい。フェリシティ嬢が慎重な操縦になったところを私は突くことが出来た。
「スフィアルイーゼ様、1ポイントです!」
「そんなバカな!」
ミレニアの言葉に、フェリシティの驚愕する声が入ってくる。
「第5回目、開始してください」
第5回目は、2回目、3回目と同じ機動となった。フェリシティ嬢が第4回目の戦い方を嫌ったのだと思う。
***
そして、背後についた私に、フェリシティ嬢はバレルロールを行い、私はオーバーシュートさせる。
「スフィアルィーゼ、今度は逃さないわ!」
フェリシティ嬢の声が届く。
『またやるの?』
「うん」
『好きにして』
私は左右に機体を振ると、思いっきりラダーを右に蹴っ飛ばして、操縦桿を右に倒す。
そうすると、お尻が左に振られてしまい、シルヴィの後方についたプロペラは空気を掴めなくなる。進行方向に対して横向きの横滑り状態となって急停止のような減速状態に入った。
目の前をフェリシティ機が通り過ぎると、操舵を全く逆に操作して前を向かせる。
あら不思議、フェリシティ機が目の前にいるじゃないですか。
『これやられると、たぶん相手からは突然消えたように見えるわよ』
「スフィアルイーゼ様、1ポイントです!」
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