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令嬢戦記~断罪された侯爵令嬢、妖精戦闘機で天翔けて逆転する~  作者: 奏楽雅


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第54話:そんなバカな話あるわけない…

シルヴィが言った

――キ64


その機影が朝日を背に飛来する。


バリバリバリバリバリバリ

という破裂音が近づいてくる

空気をかき乱し、空自体が悲鳴を上げているような重低音が響き渡る。


「何、この凄まじい音…」


『――二重反転プロペラ』


轟音が極低空を高速で飛行場を通過する。


ズヴウウゥゥゥウヴヴウウゥゥウン


通過後も凄まじい音が尾を引いて伝わる。


単機だ、それも戦闘機サイズ。それがこれだけの音を響かせている。


「この形、キ61じゃないの?」

私は叫ぶように、シルヴィに聞く。


『似ているけど違う機体よ…まあゴニョゴニョな機体だけど…』


「ゴニョゴニョって何?」


純白の機体に描かれた紋章はサウザント

(迎撃禁止の理由ね)


私はシルヴィの上に立って見送る。


スモークでも炊いたような白い煙を吹き出しながら飛んでいる。


「被弾か故障でもしてるの?」


『そういう機体なのよ』

(そんなバカな話あるわけない…)


上昇反転すると、アプローチに入ってきた…


私は、タラップを降りてミレニアの下に駆け寄る。


「着陸しますね」


「何しに来たのかしら…」

まだ、同盟は成されていないから、一触即発、戦闘になってもおかしくない。

しかも単機、レーダーに映らないように極低空の侵入。

「普通なら大問題だわ」

「スフィア様にも、ご理解いただけてるようで何よりです」

「…だから、やらないってばー」


遠くで綺麗なタッチダウンを決め、そのままこちらに向かってくる。


スロットルを落としているでしょうけど、それでも凄い音が聞こえてくる。

(どれだけ大きなエンジンだというの?)


子爵も出てきたわ。

「行ってみましょう」


私は子爵にお辞儀をすると、横についた。

「こんなお約束でも?」

「前もってわかってればサイレンなど鳴らしませんよ」

(そうですよね)


キ64が、誘導員に従いエンジンを止めた。


キャノピーがスライドする。

「どなたでしょう…」


「スフィアルィーゼ・アルマリン!」


(へ?)


操縦席からの声は、私を呼ぶ声だった。


操縦者は立ち上がると、私の方を向く。

シルエットは若い女性だった。


整備員にタラップを掛けられると、勢い良く駆け下りる。飛行帽とゴーグルを外しながら歩いてくる。

フワッとした豊かな金髪と青い目が印象的な、同世代の女性だった。


私は一歩下がると、逃げ出したくなっていた。

「お知り合いですか?」

子爵の言葉に首を振る。見たことのない方だ、だけど私に怒りを向けているのはわかる。

(なんでなの?)


腰に手を置いて、私の前に立つ。


「初めまして。

スフィアルィーゼ・アルマリン嬢」

怒りながらのカーテシーを披露される。


私もカーテシーでそれに応えるが…

「初めまして。あの失礼ですが…」


「フェリシティ。フェリシティ・ド・サウザントよ」


「サウザント公のご令嬢?」


「そうよ。元王妃候補さん」

髪を掻き上げつつそう言ってくる。


(私この人に何か悪いことでもしたのかしら?)


「フェリシティ公爵令嬢。初めましてリッツ・ブランシェです。この地の領主を努めております」


「初めまして、リッツ子爵。本日は非礼な振る舞い。申し訳ありません。怨敵を前にしてまして…」


(怨敵?)


「あの、フェリシティ様。誰かとお間違えではありませんか?お会いしたのは本日が初めてだと思うのですが…」


「んま!んま!

そのような認識。許せませんわ!」


(えーーー)


甲高い大声に人が集まり始めた。

「何事だ?」

「サウザントの紋章だよな」

「アルマリンの姫君と揉めているようだぞ」

「戦姫とか?」

「あの言い寄られているのが今をときめく悪魔か?」

「どちらも可愛いお嬢さんじゃないか」



「フェリシティ嬢、ここでは人目が多い中に入られませんか?」

子爵が堪りかねて提案した。

(なんかもう顔色が可哀想)


「そうですわね」

子爵の勧めに、司令室に向かう。


(私はここで失礼しても)

そう思ったが、子爵に手首を掴まれてしまった。


「あ、あ、あ…」


(ミ、ミレニア?

――何で敬礼してんのよ!)


「あ、あ、あー」


お読みいただき有難う御座います。

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