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令嬢戦記~断罪された侯爵令嬢、妖精戦闘機で天翔けて逆転する~  作者: 奏楽雅


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第50話:ステファン様

抜けるような晴天。本来ならピクニックの誘いを待つような穏やかな昼下がりに、私は場違いなドレスを纏い、ピューリッツ子爵領主館で座っていた。


私の左横にはウィンザー公爵が座り、公爵を挟んでピューリッツ子爵が座っている。


「それでは、クルルシェル平原で行われた戦による、賠償と捕虜の扱いに対する協議を開始させて頂きます。

尚、公正を期すために、見届け人はランツァウ公爵代理となります。ステファン・ド・ランツァウが執り行わせて頂きます」


今、声を上げられたのは、中立の姿勢をとっているランツァウ公爵家の嫡子ステファン様だ…

私が王都を追放されてから、まだ、二ヶ月も経っていないのにもう何年も会っていないような気がしてしまう。

悲しそうな目で私を見てくるのが気になるが…生徒会でご一緒していた頃が懐かしい。


そして、私の正面側には、体躯の良い短髪のノース公爵と財政顧問。王国の全権特使 兼 王室法務官、そして王国武官として、生徒会で一緒に過ごした侯爵家のユージン・ド・クルクアス様が座っていた。

彼は、私を見たときから睨んでいる。

(ユージン様は、ソニアリシル嬢が現れてから特に変わられたような気がする…)


「では、此度の戦いで捕虜となった、ノース公の兵士三万八千名。そして……」

ステファン様が、手元の書類に目を落としながら、わずかに声を震わせる。

「……わずか二千名の王国兵。これら四万の身柄に関し、勝者であるウィンザー公爵側より、要求を。」

王国兵の少なさが、今の王家の狡猾さを物語っていた。ノース公を矢面に立たせ、自分たちの被害を最小限に抑えようとした結果だ。 私は、正面でこちらを睨みつけるユージン様を見返した。彼の瞳にあるのは、嫌悪か、それとも理解を超えた破壊を目の当たりにした者の怯えか。

ウィンザー公は、目を落としていた書類から顔を上げた。

「ノース公、此度は不幸な出来事であったと思う」

ノース公は、ウィンザー公を凝視して押し黙っている。


「慎重な貴公が、国王に何を言われこのような行動に出たのか…不思議でならない」


「ウィンザー公、国王に失礼ではないか?」

王国全権特使が口を開く。


「失礼、余りにも軍構成を不審に思ったもので…」


「く…」

「それは、王国軍は他の前線で展開しているからで、そのなかで二千を派遣したことに誠意があると思っていただきたい」

ユージン様が、黙った王国全権特使に変わり弁明する。

だが、ユージン様の言葉に納得はしないだろう…


「ウィンザー連合軍としては、ノース公と先ずは休戦を締結したい、これはノース公も望むところではないか?」

私は心の中で頷く。


「む、むぅ」


「そ、それは王国として認められない!」


「私は今、公爵と話をしている、認める認めないは、ノース公と貴公間の話だ」


「全権特使は、国王の代理ですよ、国王の言葉…」


「貴公も一々口を出すな、貴公こそ何の権利があってこの場にいる!」

ウィンザー公に一喝され、ユージン様は鼻白んだ。


「わ、私は国王より…国王より…」

ユージン様は、言い淀むと、私を強く睨んだ。


「ウ、ウィンザー公。そちらにも、場違いな者がいるではないですか」


「場違い?」


「その女です。女子供が何故この場にいるのですか!」

ユージン様は私を指さしそう言った。

(私?)


ステファン様が天を仰ぐ姿が目に入る。


「貴公は正気か?」

ウィンザー公が声をおとした。


「な、何がですか!」

ユージン様は立ち上がり、怒気を強めている。

ノース公は、静かに首を振り。全権特使は青い顔をしてユージン様をただただ見ている。


「失礼。ユージン・ド・クルクアス殿」

ステファン様が見かねた風情で口を開いた。


「な、なんですか。ステファン様?」

「この会議の主役は誰だかわかっておいでかな?」


「主役?」

ユージン様の聞き返しの言葉に、ステファン様は頷く。


「勿論」

会議の場が静まり返る。


「ウィンザー公爵とノース公爵のお二方です。しかし、全権特使は国王の代理です。当然交渉に強い権限をお持ちの筈です」


「王国武官のユージン殿だったか?」

ノース公が静かに、そして呆れたように問う。


「はい、ノース公」


「この場の主役は間違いなく、彼女だ。

四万名の兵士を一瞬で無力化し、無傷で捕虜とした

アルマリンの悪魔。スフィアルィーゼ候だ」


(えーーーっ!ちょっとまって。アルマリンの悪魔って何!)

私は仰天する。

なんでウィンザー公もピューリッツ子爵も頷いてるの!


「え?…だって、スフィアはソニアを虐めて、王子に追い出されて…」


ユージン様は、思考が追いつかないのかブツブツ言い出してしまった。


「おい、全権特使!」

ノース公が全権特使に目で合図する。


「王国武官のユージン殿を下がらせなさい」

全権特使がそう言うと、控えていた護衛の騎士が、ブツブツ言うユージンを部屋から連れ出した。


「失礼した。特にスフィアルィーゼ候には不快な思いをさせた。許してくれ」

ノース公が、私に謝ってきた。私は首を横に振り

「大丈夫です」

と伝えた。


会議は大枠の方向性が話し合われ、ノース公とは休戦の運びとなり。

捕虜は、領地割譲により返還される方向になった。


ただ…王国とは休戦にはならないため、北部の戦いは無くなるが、王国と接する領境は変わらない戦地となる。

(前進は前進よね?)


尚、詰めの協議などは長ければ半年ほど掛かるそうで。皆の見ている前だったがゲンナリとした表情をして笑われてしまった。




「スフィア様」


「ステファン様」

会議が終わり、領主館の中庭に建っていたガゼボで休んでいると、声を掛けられた。


「今日はお疲れ様でした」

私は立ち上がり、スカートを摘む。


「すまなかった」

「え?」

私はステファン様に抱きとめられていた。

「えっえっ?」


「新年の舞踏会、私は自領に戻っていて君を守れなかった」

狂おしく今にも泣きそうな声でステファン様が絞り出すように言葉を紡いだ。


「ステファン様」

私はステファン様の袖をそっと摘む。


「まさか、フランツがユージンが、シャルルがそんな行動に出るとは思っていなかった…」


顔がステファン様の胸に押し付けられてしまい表情がわからないが、悔やんでくれているのが伝わってきた…


(あれ…)

なんだろう、涙がでてしまう…止められない…


お読みいただき有難う御座います。

少しでも面白いと思っていただけたら、どうか★をお願いいたします。

作者が折れないため是非ご協力ください。


あとがき

次の戦地に赴くか50話は悩みましたが 戦後交渉をやる小説ってあまり見ないので入れました。 ステファン、ユージンはいつものように即興で参加です、アルマリンの悪魔も…

本当は水着回やりたかったけど、悲しいことに冬なのよね!

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