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令嬢戦記~断罪された侯爵令嬢、妖精戦闘機で天翔けて逆転する~  作者: 奏楽雅


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第47話:一つ借りだと思っておく

「敵も焦っているでしょうけど、私たちも同じです時間がありません」

普通に歩くエリオットに、私は駈けるような早足でついて行きつつ声をかける。


「朝までの勝負だな」

エリオットも十分にそれを理解してくれている。


「はい」


領主館には直接外部に抜ける隠し通路はないらしい。

だけど、下水溝には、カモフラージュされた隠し通路があるとのことだったので、私たちは犬走りを伝ってそこを目指していた。


隠し通路は、一階の食堂の、暖炉裏に続いているという。上手くいけば見つからずに邸内に入れるかもしれない。


「敵の配置図が欲しいところだがな…」


「無いものねだりですよ、エリオット様」

同じ気持ちなので、自分への戒めを込める。

お互い緊張の中、少し笑みが漏れる。


ここだ、私たちはレンガ風の扉を開け…


「スフィア!」


私は、エリオットに手を引かれ抱きとめられた。

「な、何!」


「敵だ!」


扉が内側から開かれた。


「総員…」

エリオットが叫ぼうとすると


パァン!

という鋭い音がすると

ガガァンッ!

ヴォンッ!

という重低音を伴った轟音に膨れ上がる。


「きゃーーーーーーッ」

キーンという耳鳴りがすると治まらない。


扉から黒ずくめの人たちが即座に短刀を握り飛び出してくると、至近距離での睨み合いになった。


双方、銃と短刀を握り手の届くような距離だ…


私はガチガチと歯を鳴らし震えてしまっていた。


「まさか、こんなところまで攻め込まれるとは…思っていなかったよ」


黒ずくめの一人が、ピューリッツ子爵に短剣を押し付けて出てきた。

ピューリッツ子爵は血を流し痛々しい姿だ。

一瞬私と目が合うと、驚きと悲しみの混じった目をしていた…


「人を人と思わない作戦だが、それだけに良い作戦だとも思えたんだが…

こうなると穴だらけの作戦だったのか…」


「隊長後ろからも迫られています」


「す、すみません。子爵を返して頂けませんか…」

私は、なけなしの勇気で声を上げる。


「誰だ?」


エリオット様が私を隠すように前に出る。

「スフィアルィーゼと申します」


「…ふふふふ、はははは。貴族のお嬢様がこんなところに」


「子爵一家をお返しいただければ、このまま逃げて頂いて構いません」


「スフィア!」

エリオット様が驚いて叫ぶ。


「既にあなた方に勝ち筋は有りません」


「小娘が!」


「きゃーーーーー」


「待て!」

別の黒ずくめが私に襲い掛かろうとするが、子爵に短剣を押し付けた男が静止する。


「直ぐに悲鳴を上げる、場にそぐわない娘だが…お前だな」


「?」

私にはこの人が何を言っているのかわからない…


「お前が、俺たちの作戦を潰したんだな…」


私は、キョロキョロと周りを見る。


「だが、子爵を返したとて、こんな状況で俺たちにはもう帰る場所が無い…」


「あなた方は…たぶん傭兵さんですよね?」

口ぶり、こんな作戦を実行した手腕。特別な人だろうと思った。


「……」


「作戦の成否を見て、生き残るのが大事な方々ではないんですか?」


「いや、契約を守ることも大事だ」


「でも、今から守れるんですか?」


「何だとコノヤロー」

先ほどの黒ずくめが私を威嚇する。


「きゃーーーーーー」


「やめろ!」

「お前は約束を守れるのか?俺たちを見逃せるのか?」


「エリオット様」

私はエリオット様を見る。

エリオット様は私の目を見続けると、黙り込んで目を閉じた。


「わかった」

しばし考え込んでそう言ってくれた。


「約束しましょう」

(これ以上の血は望みません)


「信じるぞ」


私はコクリと頷く。


黒ずくめの男は子爵を解放した。私とエリオット様が解き放たれた子爵を支える、そして子爵の家族も。


「約束だ」


私は頷くと、兵士に手を出さないように言って、黒ずくめたちを見送る。

目の前を通ったのは30名に満たない人数だった。


「アルマリンのお嬢様。一つ借りだと思っておく…じゃあな」


黒ずくめの一団は、闇に紛れて見えなくなっていった。


私とエリオット様は黙ってそれを見送った…


***


「ピューリッツ子爵申し訳ありませんでした」

衛生兵に治療されてベッドに寝ている子爵に、黒ずくめを逃がしたことに対し私は謝った。


「何を言われるんですか…貴方は私や家族の命の恩人だ、いや…ピューリッツに住む人々の恩人だと思う…」


「そんなことは…」


「ありがとう、本当にありがとう。

そして会議では済まなかった…」


子爵は涙を流し私を見上げていた。


「子爵、申し訳ありません。まだ戦いは終わっていません」

そう、夜明けはもう直ぐ、そして王国・ノース連合軍は領境に迫っていた。


お読みいただき有難う御座います。

少しでも面白いと思っていただけたら、どうか★をお願いいたします。

作者が折れないため是非ご協力ください。

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