第44話:一人だけズルイ!
(えー虜囚に意見求めるの、良いんだけど)
一回ミレニアの顔を見ると、頷いてくれた。
(うん、まあ、正解でも間違いでも良いよね)
「そうですね…このスモークヘリング(燻製ニシン)には何人の人を輸送できると思いますか?」
「スモークヘリングって。なるほどそういう発想?」
(……)
「…形状が歪で、人が乗れる部分は少なそうですね、30~40人位でしょうか?」
ミレニアが話を先に進めてくれる。
「私もそれくらいを予想している…」
「二機で80人ですね」
指揮官が頷く。
「既に、ピューリッツ領都は敵の手に落ちていると思います」
「スフィア様?」ミレニアが驚いた顔をする。
「それで…」
指揮官は先を促した。
「昨日領都など移動可能な陸上部隊は領境に向かったんですよね?そっちに撤収命令は?」
「出ていないな」
指揮官は一瞬考えるが直ぐに答えてくれた。
「なら、昨夜防衛力の下がった領都へ、80人の兵士からの奇襲を受けたらどうなりますか?」
「減ったとは言え領都の防衛だから近衛騎士や兵士はいるから、80人程度の部隊では領都にすら入れないぞ」
そうは私も思うが…私は続けた
「領都それも領主館に突然80人が現れたとすれば?」
「何を言っている?」
「そんな、魔法みたいなこと…」
指揮官もミレニアも私の突拍子もない発言に驚く。
「領都上空から、落下傘で兵士を降下させます」
「飛行機はうるさい、夜中でも気づかれないわけがない。気付けば対応できる」
「滑空で領都上空を通過させるんです」
「滑空?」
「この写真の飛行機、カモフラージュでわかり辛いですが、プロペラなど動力が見当たりません…気づかれないように無音で接近したんです」
「はあ?」
指揮官は写真を食い入るように見る。
私と写真を交互に見る。
「動力もなしにどうやってここまで飛んでくるって言うだ?」
「途中まで牽引され、切り離されたんだと思います」
「そんなこと可能なのか?」
「この写真の翼長さだと高度3000メートルで、滑空を開始すれば30キロくら飛んで来そうですね…」
ミレニアがそんなことを呟いた。
「おい!」司令官が扉に向かって叫ぶ。
当番兵が扉を開けると「一式陸攻の航法士を直ぐ連れてこい!」と命令した。
ミレニアの呟きを検証させるのね。
司令官が目で先を促したので私は続ける。
「目標は、領主館のピューリッツ子爵とそのご家族だったと思います。一瞬で領主館のみを占拠したのだと思います」
「…」
「貴族家族が捕囚になったっ場合、領都では全ての権限が敵に奪われていると言えます」
(今の私も似た感じだけど…)
「だから、陸上部隊は戻さず、貴方たちはこちらに回された?」
「たぶんですが…」
部屋が重苦しい静寂に包まれてしまった。
「その可能性は…いや、たぶんそれが正解な気がする」
指揮官は、机に肘をついて額に手をあてると考え込んでしまった。
「どうすれば…良いと思う?」
指揮官に視線を向けられ私は首を傾げる。
ちょっとむち打ちの後遺症で痛い。
(そこまで、素人の私に考えさせるの?)
「スフィア様」
ミレニアが期待のこもった目で私を見ている。なんかうちの娘は凄いのよ見たいな雰囲気を出してる気がする。
「陸上兵力はありますか?」
「この飛行場に駐屯、教育していた部隊もいたが、昨日の命令で領境に向かった、今は一部の守備兵だけだ…出せて50名だろう」
「アルマリンは、陸上兵力は連れて来ていません…」
司令官の捻りだした声に、私も同じように声にした。
「スフィア様」
ミレニアが手を上げた。
「?」
「翔鶴、瑞鶴には陸戦隊という制度があります。腕自慢の者たちなのですが100~200名規模の臨時陸戦隊を編成することは可能です」
(そんな制度があるのね)
「じゃあ、ここの50人と、翔鶴の200人で250人は確保できるのね」
「あ、ああ」
「え、ええ」
私の勢いに二人がたじろぐ。
「だからって、どうする気だ?」
***
「ティテただいま」
『ス、スフィア無事だったー良かったーよー
痛いことや酷いことされなかった?』
「大丈夫よ、ティテは?酷いことされなかった」
『なんか、いやらしい目でしげしげ見られたけど大丈夫だった』
(いやらしい目って…)
「だけど、ごめんティテ。ちょっと行くところが出来たの。ここで待ってて」
『えええ!どこに?』
「領都ピューリッツへ」
私は領都にある南東方向を見た。
『スフィア、一人だけズルイ!』
(ズルイって言われても…)
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