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令嬢戦記~断罪された侯爵令嬢、妖精戦闘機で天翔けて逆転する~  作者: 奏楽雅


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40/41

第40話:なんのことでしょう?

「勝手に決めてしまってごめんなさい…」


私は、ビンセントとミレニアに謝った。


先程までは、ウィンザー公とヴァディス伯にも「何故勝手に」と怒られ何度も頭を下げて、許して貰ったところで、「貴族がそんなに頭を下げてはいかん」と怒られてきたばかり。

(最初の段階で言ってくれれば、一回の怒られで済んだのかしら…?)


「私共は、お嬢様のお考えに賛同し、ついて行くだけですよ」


そう言って、ビンセントとミレニアは頷いてくれた。

(優しい…)

「ありがとう」


ここからは、時間の勝負。

G4M2でアルマリンまで戻らないことにして、B6Nを待って、演習中だった翔鶴と瑞鶴に直接合流することになった。


「スフィア様」

今はまだかと蒼い空に目を凝らしていると、ミレニアの呼ぶ声に振り返る。


「アルマリン候スフィアルィーゼ殿」

(アルマリン候?)


私を呼んだのは、ブロンズの髪を横に流した長身の男性だった。年齢的には同年代に見える。


「はい」


「失礼、ウィンザー公が次男、ルーシャンと申します。今回は父より、アルマリン候のお手伝いをするように申しつかりました」

そう言うとルーシャンは私の手の甲に口をつけた。

(え?聞いてないけど)


「何かのお間違いでは?」


「こちらが父からの書状になります。

お美しい方の下で働けること嬉しく思います」

朗らかにそう言うルーシャンに微笑み返すと、書状に目を落とす。


確かにその様に書かれていた。

なんか、息子自慢と、お買い得みたいな書かれ方をしていたのが気になるが…

(…はて?)


「わかりました、ですが、私はこれから直接翔鶴に乗艦し現地に向かうつもりですが…」


「わかっております、私も自分の機体で随伴させていただきます」


彼の背後、格納庫の鈍い照明の下に、一機の巨大な影が横たわっていた。

それは見慣れたA6M5の流麗なラインを持ちながら、そのサイズは艦上攻撃機のB6Nを思わせるほどに分厚く、力強い。

まるで、A6M5とB6Nを足して二で割ったような……そんな、初めて見る機体だった。

「……あれは、何という名前なの?」

「A7M2です、アルマリン候」

「強そうですね。あ、ルーシャン様。私のことはスフィアとお呼び下さい」


ルーシャンは頷いて私の名を呼んだ。

「では、スフィア殿。幾久しく宜しくお願いいたします」

「え、あ、はあ、宜しくお願いします」

(ん?なんかミレニアが複雑な顔をしているような…なんで?)

背筋に冷たいものが走り、また怒られる予感がした。


***


「お帰り、スフィア。行き成り出撃になるとは驚いたよ」


「ただいま、ジュリアンごめんなさい」

翔鶴に着艦すると、ジュリアンが出迎えてくれた。


私は足早に、ビンセントとミレニアを連れだってアイランドに入る。


「何か情報は入ってる?」


「ノース公爵が王と組んだという事と、北から軍勢が迫ってるということだけだ……それよりスフィア。彼は誰だい?」


ルーシャンが、バッグを片手に背負いながら後ろからついてきていた。私が見ると片手を上げた。


「ジュリアン様のライバルです」

ミレニアがぼそりとジュリアンになにか耳打ちをしている?


「あの方はウィンザー公の次男、ルーシャン様です。お手伝いに来られました」


「そ、そうなのか…へー」


ジュリアンは、ルーシャンに向き直ると。

「初めまして、ルーシャン・ウィンザー殿、私はスフィアと“幼馴染”の、ジュリアン・ヴァディスと申します。ジュリアンとお呼びください」

(なんで幼馴染を強調?)


「こちらこそ、宜しくルーシャンと呼んでくれていい」

(なんか、二人とも顔が引きつってない?なんで)


「ジュリアン、瑞鶴の方はどう?」


「翔鶴のスタッフの半分が向こうに行ったからね、翔鶴も瑞鶴も半分が新兵になるから、多少ぎごちないけど何度か演習を行えたんで良い感じだと思うよ」


「司令官、艦長入ります」

艦橋への当直士官が扉を開けてくれる。


ビンセントは艦長席に、私は司令官席に身を埋める。


私の周りにはミレニア、ジュリアン、ルーシャンが並んで立つ。


「凄いねここは…」

ルーシャンが声に出す。


「飛鷹も変わらないと思いますけど…」

「僕はまだ乗ってないんだ」

「そうなんですか…」


「見た目もこっちの方が私は好きだな、飛鷹は遠目に見たけど艦橋と煙突が一体だし、なんか無骨な感じがするよ。此方の方が君に似てエレガントだ」


「あ、ありがとうございます」

(なんかジュリアンが憮然として、ミレニアが笑いを堪えている気がするんだけど…)


そんなことを思いながら私はマイクを取る。

通信士が目で私を確認する。


「スフィアルィーゼです。翔鶴、瑞鶴の乗組員の皆さん、日々の訓練お疲れ様です」

艦内に私の声が木霊する。

「私たちアルマリンは。領地を取り戻して頂いた御恩を返す時が来ました」

作業している者たちが手を止めて聞き入ってくれる。

「目的地は、クルルシェル平原を南下する、ノース公の軍勢です。

現在、陸上戦力だけが確認されています」

この声は僚艦の瑞鶴内にも流れている。


「私たちは、ウィンザー公の反体制連合の同志、ピューリッツ子爵領を支援し、ウィンザー公の支援部隊が到着するまで戦線を維持することを旨と致します」

私は、一回息をつく。

「皆さん、アルマリンは受けた恩は忘れない民だと知ってもらいましょう!」

静かになっていた艦内が、私のこの言葉がみんなに届くと、一斉に動き出した。


「みんな行くぞー」

「アルマリンの心意気見せてやれ!」

「受けた恩は、三倍返しだ!」


私はマイクを置くと席に沈み込んだ。

「なるほど…」

「ルーシャン様?どうしました?」

「君が戦姫であること、父の君を見る目。納得したよ」

(なんのことでしょう?)


お読みいただき有難う御座います。

少しでも面白いと思っていただけたら、どうか★をお願いいたします。

作者が折れないため是非ご協力ください。

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