第39話:アルマリンが参ります
別に五公爵家は連携を取っているわけではない。個々の矜持や利害から王国と敵対。若しくは中立の立場をとっているだけ…
でも、公爵同士では、お互い争わないような暗黙の了解があると思っていた…
「ノース公…
諸君、静まってくれ。
状況は逐次変わるものだ」
ウィンザー公は、騒然となりつつあった場を鎮めようとする。
まだ、横にいるものと相談している者、不安を表に出す者も…
この流れはいけない…勝ち馬に乗るに長けた貴族たちだ、損得勘定で動かれたら…
「逆に、他の公爵家と同調できる芽が出たとも考えられます」
「スフィアルィーゼ嬢!」
「どういうことだ?」
「調子に乗った発言をするな!」
私の発した言葉に喰い付いてきた。
「他の三公爵家にとっても、良くないお話だと思いましたので…」
「それが?」
「そうなると、王につくか、他の公爵と共闘するかになると思ったもので…」
「な…」
「だが、そんなに簡単な問題では…」
「いえ、逆にそうならないと不味いと思います」
「何を言っているんだ?次期王妃の教育を受けたとはいえ、スフィアルイーゼ嬢は学生だったと聞いたぞ」
「何れかの公爵が、もしも他国と共闘した場合には、終わりが見えなくなります」
「……」
「…そんな」
「まさか、国を売るような真似…を」
会議場が静まり返り、物音一つしない重苦しい空気に包まれてしまった…
「すみません、そう思っただけです…」
小娘の思い付きで話してしまった。雰囲気を察して、私は直ぐにお詫びしようとした…
腕を組んで私の話を聞いていた、ウィンザー公が私を見ているのがわかる。
「そうだな、軍の増強と共に、他の公との交渉も重要になってくるという事だな」
静寂を破るようにウィンザー公は静かに口を開いた。
「王都への進軍は一旦見合わせ、現状の前線を防衛線とし、北からの攻撃にも備えることにし。その間に他の公への交渉も行いたいと思う。意見があれば発言してくれ」
参加貴族はお互いの顔を見合ったり、黙り込んだり。静かだが雰囲気は良くない。
「閣下」
手が上がる、先ほど私の援護をしてくれた貴族だ。
ロマンスグレーの髪の、年齢はお父様と変わらないくらい?
「その戦略は、戦線の膠着という事になります…その場合戦費が嵩むこととなります」
「……」
「体力のない貴族には酷なことになるかと…」
この人…自分では言えないだろう人のことまで考えて言ってくれている?
目が合う、私は微かに頭を下げると、同じように微かに頭を下げてくれた。心が暖かくなった。
「そうだな、戦費については私が出来るだけ援助することにしよう。皆で結束して困難も喜びも共有していきたいと思う」
ウィンザー公は席を立つテーブルに手を突いてそう会議場の全員をみるように語り掛けた。
「も、勿論です」
「頑張りましょう」
「この国を救いましょう」
「王をとっちめた後で、請求してやりましょう」
会議場が明るい方向に向かった…良かった。
議題は、配置の話しに流れていった、どの貴族がどこに部隊を展開するかのざっくりした話し合いをする。詳細は各部隊長、騎士団長などの手によって今後決められる予定だ。
私は、この辺には口出しできるほどの知識がないので、席に座って微笑んでいるだけしかできなくなった。
とても喉が渇いたわ…
そんなことを考えていたら。
家令がドアを開けてまた入って来た。
「何が起こった?その場で良い報告せよ」
ウィンザー公の言葉に、家令はお辞儀をすると報告した。
「北方より、クルルシェル平原を南下する、ノース公の軍勢の情報が入りました」
「なんだと!」
先ほど私のことを攻めた子爵が青い顔をして立ち上がった。
「私の、私の領地は、北方の貴族連合と境界を接している。クルルシェル平原の一部は我が領だぞ!」
会議場に子爵の声が響くと、静まり返る。
「公爵閣下!直ぐに、直ぐに支援をお願いします!」
「…わ、わかった、直ぐに準備させよう、だが…直ぐには展開できない…」
ウィンザー公は直ぐに決断したものの、前線に送っている軍を即座に北に向かわせることは難しい。
みんな、凍ったように動きを止めた…
子爵に対して腫れ物を見るような視線が注がれるている…
「子爵!」
私は、居ても立ってもいられず立ち上がった。
視線が集まる。
「私が、アルマリンが参ります!」
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