第29話:ウィンザー公爵
五大公家の一つウィンザー公爵家。
王家の系譜と違う、諸侯から始まるブライドル王国の構成国といったほうが良い大公爵。
ブライドル王国の西部の貴族を取り纏め反体制勢力を指揮していらっしゃる。
「もう直ぐいらっしゃいます」
飛行場で出迎えに待つ私たちに、伝令が走って来てそう伝えた。
それから間もなく、東の山々の上、空に黒点が浮かび上がって来た。
一つ二つ…五つ六機が見えたときその大きさに驚いた。
「大きい…」
「公爵の乗られるG5N、深山だ、大きいぞ全長30メートル、全幅は40メートルもある」
伯爵が教えてくれる。
さらにその上空を今では見慣れた、A6M2が10機ほど飛んでいた。
四発のエンジンを積んだ、巨大な鷹が舞い降りてきた。
私たちの前に横付けされた、深山のハッチにタラップが掛けられ、そこから赤い絨毯が敷かれた。
伯爵と私はタラップに近い場所まで進むと。
ハッチが内側から開けられた。
儀典官がまず現れ、その後ろから綺羅びやかな貴族の衣装を身に纏った、髪をオールバックにした、神経質そうな長身痩躯な男性が現れた。
タラップを降りた瞬間に伯爵は頭を下げお互い握手を交わした。
一言二言伯爵と話すと、視線が私に向いた。
「公爵。お目にかかれて光栄です。
スフィアルィーゼ・アルマリンと申します」
正式なカーテシーを披露する。
「聞いているよ、此方こそ貴方に会えて嬉しいよ、ミス.スフィアルィーゼ。
この度は参陣心強く思う」
「私こそアルマリンのために、心より感謝いたします」
「アルマリンは、君の領地だし、あそこは西側の棘になってしまう、見過ごすことの出来ない地だ」
私は頷いた。
「公爵、お時間がないとのことで、ここに会議室を用意しております。どうぞこちらへ」
(え、つまり公爵は私に会うためだけに来てくれたの?)
私は並んで歩く二人の後ろに付いて歩いた。
左にはシルヴィが駐機されているのが見えた。
『今日も乗っていただけるの!』
(今日は駄目!大事な人と話があるから)
私の心の声が伝わったのか分からないけれど、シルヴィは『わかりました…』と寂しそうに応えてくれた。
飛行場内の建物に入ると、ジュリアン、ジョシュア、家令、軍服を着用した二人の将校が待っていた。
翔鶴で整備士がしてくれた、額に手を当てる挨拶のまま止まっていた。
「楽にしてくれ」
公爵のその言葉で直る。
「ヴァディス卿、作戦を頼む」
伯爵は家令に合図すると、アルマリン近郊の地図を広げた。
***
「では…ウィンザー連合軍の飛行隊が、制空権を確保次第、連合の陸軍を進軍させ各都市を解放させる…ということで問題ありませんね」
全員が頷いた。
「どうか領民への危害は無いようにお願いいたします」
私は頭を下げてお願いした。
「私はこれから参戦する貴族を周り、周知するつもりだ。併せて言明しておくことを約束しよう」
「ありがとうございます」
「今後、ミス.スフィアルィーゼには、事あるごとに矢面に立っていただくことになると思う。覚悟はいいかな?」
「はい、覚悟しております」
「良い顔だ」
「ヴァディス卿後は良いな?」
「はい、問題ありません」
「ミス.スフィアルィーゼ。会えてよかった。私はこれで失礼する」
「ウィンザー公爵。会いに来てくださりましたこと忘れません。ありがとうございました」
公爵の顔が少しほころんだ。
「ご武運を」
「ご武運を」
お互いに頷くと、早々にウィンザー公爵は部屋を出て行った。
「スフィア嬢」
伯爵に呼びばれる。
「はい、伯爵」
「ジュリアンとあの機体を君に預ける、拾って行ってくれ」
「父上」
「お前も経験を積んで来い。今後、スフィア嬢の周りが台風の目になる。支えてやれ」
「…わかりました」
(勝手に預けられても…)
とも思うけど…
「ありがとうございます」
部屋のドアを開けると、脇にはビンセントとミレニアが立っていた。
「決まりました。行きましょう」
私は二人に頷くと、ジュリアンを伴って部屋を出る。
その後を、ビンセントとミレニアが続いた。
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